「まえがきに代えて――女子会観戦記」は、あまり面白くなかったというか、古市氏の*抜きっぷりがいつもの調子であった。「家庭なんてルンバとセコムにでも守ってもらえばいい」とか、「女子会とは万人に開かれたアゴラである」とか、言いたいことは分かるのであるが、中学生じゃあるまいし、なんというぼんやりとした思考であろう。
しかし、古市氏の本領は、まさに女子会の中で可愛いことを言うことにあり、女子を喜ばす点において、おそろしく頭脳の鋭さを見せる。以下、古市氏名言集。
西森 古市さんは、そんな階層の違う人と結婚する気は全くないでしょう?古市さんと結婚する人は、古市さんと同じぐらいの年収がないとやっていけないだろうなと思っているのですが……。
古市 いや、逆に僕より上がいいです。
水無田 サラッと言っちゃいましたね(笑)。
古市 結婚によって階層上昇を図りたい!
……階層上昇!!
水無田 私の友達は、類は友を呼ばずに優秀な女性ばかりなんですが、四〇歳を過ぎて結婚したのは、みんな相手は外国人というパターンでした。どういうことよ、と思いましたが(笑)。
古市 僕も外国人と結婚したいですね。
水無田 だんだん固まってきましたね、古市さんのお相手のプロファイリングが……。
…………
水無田 そういえば古市さんは、永久脱毛しているとうかがいました。
古市 ひげだけですけどね。
……何っ!!
千田 おごってもらったほうがラクですよね。
古市 僕もおごられたい!(笑)
……おいッ
古市 いや、結婚はしたいですけどね。どういう女子と結婚したらいいのでしょうか?
水無田 そんなこと聞かれても……(笑)。
…………
以前、古市氏が上野千鶴子と『週刊読書人』で対談してて、上野氏に説教されていたのを読んだ。若い世代と先行世代と同世代を激しく憎んでいるわたくしは、とりあえず、上野氏のいっていることに殆ど賛成であった。上野氏は個人で何かに立ち向かおうとしているからであった。しかし、この本の対談で、個人で語っているのは古市氏の方であったように思われる。わたくしの中にも古市氏みたいなものを発見して少し共感した。ただ、わたくしが、上の世代の人たちに向かって上のような可愛い態度をとる場合、本当は、別に主張したことがあるわけでじゃなく、頭が全く働かない場合に、なんとか知恵を授けて欲しい時である。ヒヨコの口パクと同じなのだ。私は、所謂「草食系」みたいな男子が、マッチョな男より傲岸なのをたくさん目撃してきている。上の古市氏の発言にしたところで、髭はなくとも、皮肉はあるのである。皮肉は常に権力の萌芽を含んでいる。
私は、一見平和なこのような本を楽しく読む以上のことはしない。