★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

秀子様とピニロピ様

2014-09-30 19:26:48 | 思想


高峰秀子様の『私のインタヴュー』は、いろんな職業の人たちと秀子様がおしゃべりする本であるが、最後に「日本を碧い眼で見る」という座談会がある。そこで、秀子様に負けず毒舌な人が一人混じっているので誰だと思ったら、武谷ピニロピさんであった。武谷三男のパートナーだった人である。たしかまだご存命のはずである。

 高峰 […]昔は日本人だったら終生自分を養ってくれればいいという気持ちが強いですから。どうしても子どもに甘いんですね。
 ピニロピ そうです、甘いです。馬鹿可愛がりで、当人のためにならないですね。それがとくに田舎に行くとひどいですね。年寄りは子供の言うなりです。
 […]
 ピニロピ「[…]でも、現在は学校教育である程度親たちのそういうヘマを直してもらえるから、子どもたちもたすかるような気がしますね。

こんな調子である。この座談会の結論は、日本人の男が家事をやらんのは単に体面の問題であるということ。それに子供を甘やかすのは、親や親戚が得をしようとしているだけであるということ。要するに、日本人は別に「助け合って」いるのではなく、世間や自分につくす誰かに対して寄りかかっているのであり、今風に言えば、都合のいい相手に対するハラスメントであるということであろう。高峰秀子は、それを思想ではなく日本の貧しさに求めていたが、さすがである。最近の絆主義がファシズムなのは、当然である。貧困を誰かに対するハラスメントで暴力的に当てこすって解決しようとしてるんで……。ヒューマニスティックなフェミニズムでは太刀打ちできなかったわけだ。おそらくヘイトスピーチやらなにやらも根本的にプロテストではなく当てこすりなのである。問題の本丸や憎い相手と対面してないからどの程度の暴力がいいかという感覚が働かない。だから過剰に暴力的になる。ある大学教授をやめさせないとその大学の学生をやってしまうぞ、という脅迫が複数の大学であったらしい。テロじみているのに、なんと回りくどい……。

と思っていたら、もう一人の大学教授が辞めちゃったそうである。辞表を受理した大学当局は恥を知れ。

……それにしても、ピニロピさんの論法で行くと、学校教育が機能していなかった時代、つまり上の「田舎」状態であった日本人はとにかく甘ったれでどうしようもない感じだったということになりそうであるが、確かにそうだったのかも知れないのである。学校教育批判が反近代主義にスライドしがちな現在、注意すべき点かもしれない。

スコットランドや沖縄や吉里吉里国や四国が独立するのは結構であるが、依然として問題なのは、上のような諸々の問題である。

今日の雑感

2014-09-30 03:42:31 | 文学


あちこちに考えが飛ぶのが普通であって、考え続けるのはどういうことか考えさせる事態である。そのとき、物語といった概念を用いて、思考の自由も、自己さえも説明しようとするのはあり得る話であるが、その場合、どんな複雑な物語を使っても、自由や自己が導かれないといけないと思うのである。

という話はどうでもいいとして……

・戦後の「文学者の戦争責任」論で、例えば、戸坂潤などが生き延びていて「ファシスト名簿」みたいなものを戦時中からこつこつ作っていたらどうなったか。そこには、学会や大学で巧妙に立ち回った者から、隣組で弱い者いじめしていた連中に至るまで、詳細に記されていたら?十年ぐらい前、そんな想定についてある媒体に書こうとして迷った。

・和久井健に「セキセイインコ」という作品があったなあ

・さっき、木股文昭氏の『御嶽山 静かなる活火山』をざっと通読したんだが、マスコミは、これくらい、しゃしゃっと勉強して取材すべしだな……。これは2010年の本だけど、問題点はいろいろと指摘されていたわけだ。

・だいたい、金儲けのための研究ばっかりに金つぎ込んでると……、いつまでも火山学者がいるとおもうなよ……、であるな。

・古代文学の研究者が育たなくなったら、日本の古典も消滅だ。

・わりとお上の動向と密接な歴史をたどってきた木曽である。源氏やら、宿場やらダムやら檜やら……。で、ついに過疎化やなにやらで、なんとか自分たちでやってこうと覚悟を決めているんだか、ないんだか曖昧なところに、この爆発である。その辺の影響は心配である。「夜明け後」、漆器を失い、美林を失い、若者を失い、島崎藤村も岐阜出身者になっちゃったし、気がついてみりゃ静かな霊山だった御嶽山まで失い、これ以上何を失うものがあろう。……というわたくしも木曽から出てきちゃったし……。

・だいたい、テレビは、御嶽山の麓の役場や小学校とか軽く言ってくれちゃってるが、木曽町や王滝村がどれだけ人口が減ってるのか知っておるのであろうか。かく言うわたくしも、王滝の人口が800人ぐらいになっていたのを最近知ったのだ。木曽町でもわたくしの××式なぞが老舗旅館で行われた時にゃ、「だれか××するやつがのこっとったらしいぞ」ということで、たちまち噂になる始末だからな、残念でした、既に県外者です。

・香川のうどんもいずれはそうなるのであろうが、外にうってでりゃいいというものではない。競争には必ず負けるからである。

・小×島のオリーブが湘南に負けそうという噂があったぞ。

・オリーブ・ガイナーズは必死にJ2最下位にならないようにがんばっておる。