★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

亀の甲羅干し

2023-04-20 23:49:23 | 文学


兎と亀と、どっちが早いかということは、長い間、動物仲間のうちで問題になっていました。
 あるものは、もちろん兎の方が早いさと言います。兎はあんなに長い耳を持っている。あの耳で風を切って走ったら、ずいぶん早く走れるに違いないと。
 しかしまた、あるものは言うのです。いいや、亀の方が早いさ。なぜって、亀の甲良はおそろしくしっかりしているじゃアないか。あの甲良のようにしっかりと、どこまでも走って行くことが出来るよと。
 そう言って、議論しているばかりで、この問題はいつまでたっても、けりがつきそうもありませんでした。
 そして、とうとう動物たちの間には、その議論から一戦争はじまりそうなさわぎになったので、いよいよふたりは決勝戦をすることになりました。


――ロオド・ダンセイニ「兎と亀」(菊池寛訳)


この話は最初から最後まで狂っているが、まさに我々の世界といへよう。


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