1983年初版 1990年 第5刷 安藤紀子/訳 阿部公洋/装丁・表紙・カット
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
アメリカにおける黒人差別を少女の目線で描いた小説
こうした偏見、嫌がらせ、犯罪は今もあるのだろうか?
少しずつ、少しずつ、若い世代から考え方が変わっていく予兆も感じられるのが唯一救いになる
【内容抜粋メモ】
登場人物
シルズ一家
ベン 父
クローディ 再婚相手
リーナ
ロイ、アーミラ、ブラザー
老犬ブリット
ヘイニー家
ヘンリー 父
テイター、サミー兄弟
ケルシー
ウインズロー・スターンズ 衣料品店の息子
チズム夫人
●1 コンテストの夜
シルズ一家は、南部の黒人だけの町スキャタークリークから
西部の黒人が1人もいない町に引っ越してきた
今夜は長女リーナが白人の子どもにまじって聖書暗唱コンテストに出場する
リーナは魔法のような記憶力を持つ
父は若い頃、牧師になるのが夢だったが
祖父が亡くなり、畑仕事をしなければならなくなった
リーナは優勝して、父に褒めてもらいたかった
リーナが3歳の時に産みの母が死に
5歳の時はクローディが母になっていた
会場の小学校に向かう途中でヘイニー家の兄弟テイターとサミーが立っていた
彼らは弁当にカブひとつ持ってくるので笑いものになっている
ケルシー:優勝者には賞品が用意してあります
想像通り、ライバル、ウインズローとの2人だけが残り
牧師は引き分けにしようとするが、リーナは続行を望む
●2 さされたパン
リーナは大好きな『雅歌』の詩歌集から次々と暗唱し
ついにウインズローは先を続けることができなくなった
ケルシーが渡したのは青い蝶ネクタイで
男子への賞品だったのでリーナは断った
父:おまえが自分に恥じない生き方をしていれば、人に認めてもらう必要はないんだ
家に戻ると、テーブルの上のパンに包丁が刺さっている
父:どこかの子が、友だちにそそのかされて忍びこんだだけだ
クローディ:ここから出ていけって言ってるんじゃないの
父はクローディにうながされてリーナに黒人差別について話す
父:
南部には黒人を受け入れない町がいくつもあった
それで黒人はスキャタークリークのような黒人だけの町をつくった
だが、わしらはどの町に住む権利があるんだ
母さんは何度も怖い思いをして怯えている
だがびくびくすることはない
●3 おまえたちはでていけ!
翌朝は日曜日だが教会へ行くのをやめようと提案する父
父は綿花をつみ、綿繰り機にかけたり
チズム夫人の牝牛の世話をして、牛乳を届けたりする仕事をしている
母は夫人に頼まれた服やシーツなどをアイロンがけしている
リーナは父から渡された新聞紙に目を輝かせる
父:
奥様が種をくれて、ここに包んであったんだ
明日、おまえに手伝いに来てもらいたいそうだ
父と新聞に載っている戦争の話をする
父:
人を殺すのは悪いことだ 神は“殺してはならない”といっておられる
カンザスの人たちは奴隷制度に反対して戦った
白人は黒人が多くなりすぎたから、母国のリベリアへ帰ったらどうだといいだした
祖父は土地をとられ、わしらは南部へ戻ったんだ
戦争が終わり、黒人は読み書きを習い、土地を持ち、法律をつくる時に意見を述べはじめた
だが、また奴隷時代に戻ってしまった
黒人の男たちは木から吊り下げられて殺されている
だが、わしは白人の中で堂々と暮らしたかった
あれはわしらへの警告だったんだ
老犬ブリットが殺されているのを見つけた父は
ポプラの木の下に埋めたと話す
父:人を裁くのはおまえの仕事じゃない 神さまがなさることだ
家に帰ると、野良猫が4匹の子猫を産んでいた
その無邪気な様子に慰められるリーナたち
●4 かばんにすべりこませた本
リーナはチズム夫人の家に行き、夫人と一緒にトマトの瓶詰めや
屋根裏部屋の掃除を手伝う
屋根裏部屋にたくさんの本の山を見つけて、リーナはうっとりする
リーナ:私に読ませていただけませんか?
チズム夫人:
うぬぼれるんじゃないよ おまえはかえって足手まといだったんだ
ひさしの下に本を置くんだ イヤなら家から出てっておくれ
リーナは本が傷まないように防水シートをかぶせて
チズム夫人が見ていない時に1冊かばんに入れた
チズム夫人:
子どもたちはちんちんをしながら、私が死ぬのを待っている
私が死ねば貧乏とはおさらばだからね
でも私はお金を全部使ってしまうつもりだ
欲しいものを買い、食べたいものを食べてね
お前の父親にホーク・ヒルにある牧場に行ってほしい
ヘイニーに柵を直すよう言ったがぐずぐずしている
赤ん坊が産まれそうだから、土地から追い出すことができない
●5 かがやくあこがれの山
リーナが持ってきたのは『図解世界地図』
家族にはチズム夫人が貸してくれたとウソをついてしまう
父:いちばん近い山は500kmのところにある 行ってみたいな
リーナ:素晴らしいものはみんな自分の目で見ればいいのよ
チズム夫人の家に行くと、亡くなった夫が可愛がっていたカナリアが病気で困っている
ケルシーさんなら知っているかもしれないと教えるリーナ
リーナはウインズローとぶつかって『図解世界地図』が飛び出す
ウインズロー:
こんなすごい本見たの初めてだ 誕生日祝いにもらったのか?
おまえが読んじゃったら貸してくれよ
リーナ:いやよ!
チズム夫人に言われてケルシーさんにカナリアを見てもらうと
手のほどこしようがないと言って引き取る
リーナは『図解世界地図』を返して、『アメリカ詩人珠玉選集』を持ち出す
ヘンリー・ヘイニーがやって来て仕事をくれと言う
チズム夫人:
お前がする仕事を全部してくれる男を雇った
ベンは引き受けた仕事をちゃんとしてくれる
大々的に開く昼食会にはリーナに給仕をしてくれと頼む
●6 牛乳をかぶった本
チズム夫人は父にヘイニー家に預けた針金と杭を取ってくるよう言う
父はウォルト・ホイットマンという詩人をリーナにすすめる
リーナは『アメリカ詩人珠玉選集』から覚えたい詩を便せんに写していると
牛乳をこぼして、本が浸かってしまう
リーナが勝手に本を持ってきたことを知りガッカリする父
父:おまえは人のものを盗んだんだぞ
*
ヘンリー:
おれは3年間、ホーク・ヒルの柵を直してきたし
これからもそうするつもりだ
ヘンリーが行ってしまうと、父は納屋を調べて
彼が生活の足しに針金と杭を売ってしまったと知る
父は怒る代わりに、ヘイニー家の身になって考えることをリーナに教える
●7 父の約束
テイター:やい、黒んぼ おまえはおやじに虫けらみたいにひねり殺されるぞ
リーナはかっとして、厚い本の入ったカバンでテイターを殴り、本がバラバラにほどけてしまう
父:
小作人は、かごの中で輪を回しているリスみたいに休むわけにいかないんだ
今年、家族を養うために借金をすれば、来年、働いても借金返済にあてて
家族を養うためにまた借金をしなければならない
誰かを捕まえてその恨みを晴らしたくなる
そうでもしないとガマンできないから
チズム夫人の家から自動演奏ピアノでジャズが流れ
黒人野外伝道集会の人々が陽気に踊る
父はリーナが本を黙って持ってきたことを話す
チズム夫人:これは一番高い本なんだ 保安官に引き渡してやる
チズム夫人はリーナの代わりにクローディに昼食会のしたくを手伝わせることに決める
父:
ホーク・ヒルに行く約束の代わりに
たくさんの本を読ませてもらえる約束をした
リーナ:本なんかいらない 私は怖いの
父:
わしは、向学心に燃えるおまえになにひとつできずに見ているほうが怖いんだ
おまえはなににでもなれるはずだ
チズム奥さまはヘイニー家を追い出そうとしていらっしゃる
●8 サツマイモとクッキー
サミーはまたクラスの子どもたちに弁当のカブを取られていじめられている
リーナは止めたくても止められない
木の上で弁当を食べていると、ウインズローが隣りに座り
リーナのサツマイモと自分のクッキーを交換する
ウインズロー:ぼくは詩集を1冊持ってる 君は絶対読むといいよ
●9 母の不安
母はブラザーに乳をあげるために家に帰ってくる
チズム夫人の家では、昼食会のためにバスルームの石鹸まで洗うことにビックリする
リーナはバケツに水をそそいで、まずは小さい子どもをお風呂に入れる
●10 チズム夫人の昼食会
リーナは歴史の勉強をする
人間は地球に現れて以来、集団をつくり
自分たちと違う外見や考え方の別の集団と対抗してきたと知る
父:黒人だからといって卑屈な生き方をしてもらいたくない
クローディ:
奥さまの子どもたちは1人も来なかった
あんなにお料理を作ったのに、昼食会に来たのはケルシーさんだけだった
リーナは慰めに行くが逆に怒られる
チズム夫人:
騒々しい昼食会なんてまっぴらだよ
主人が生きていたら、私はまるでゴミみたいに無視されることもなかったでしょうに
リーナは夫人が自分と同じように必死に誰かに認めてもらいたがっているのが分かる
●11 でてこい、シルズ!
父は水曜の夜までには必ず戻るといって出かける
リーナは授業で「白人の責務」という言葉に疑問を持って先生に質問する
先生:優れた人種は、劣った人種を支配する責任を担ってきた
リーナ:アングロサクソン人て何ですか?
先生:コーカサス人種だ 白人のことだ
ウインズローはリーナに加勢して、黒人にも素晴らしい人物がたくさんいると発言する
火曜日
ウインズロー:
本を君に貸せなくなった
お父さんに君と話しちゃいけないと言われたんだ
先生がお父さんに話したんだと思う
帰宅すると、母は牝牛が柵から出たため見つけに行く
夜中に酔っぱらったヘイニーさんが来て戸を叩く
ヘイニー:
おやじはどこにいるんだ?
奥さんは、おれの馬を取り上げると言いやがった
テイターは父を連れて行く
母:
あなたが知っているのは、世の中の陽が当たっているところだけ
私が子どもの頃、白帽団員は家に火をつけて、家族で川原まで逃げた
コンテストの晩、父さんはあなたをどれほど愛しているか知らないんじゃないかと言っていた
●12 ひとすじの煙
水曜になっても父は帰ってこない
ヘイニー家を見に行くとテイターと馬がいない
リーナは一昼夜たっても戻らない場合はチズム夫人に頼んで探しに来てくださいと書き置きをして
馬車に乗って父を探しに山へ向かう
途中で馬の足跡を見つける
ホーク・ヒルに着き、ほそい煙を見つけて近づくと、父が撃たれて倒れている
●13 わかれ
父:
きっと誰かが助けに来てくれると思っていた
でも、それがおまえだとは なんて素晴らしいんだ
テイターはたぶん足が折れている
銃を撃ち、馬に引きずられて頭を打ったんだ
私は助からない だがテイターは治る
おまえにテイターを家族のところへ連れて行ってもらいたい
お互いに最後に言いたいことを言えるなんて素晴らしいじゃないか
わしはいつもおまえと一緒だ
リーナが馬車を引いてくると、父は血を吐いて死んでいた
テイター:おねがいだ、助けてくれ
リーナは葛藤の末、馬車にテイターを乗せる
●14 悲しみのむこうに
ヘイニー家に着くと、ヘンリーと妻が連れて行く
夫人はまた妊娠していた
クローディ:誰がやったの いいなさい
リーナ:
私は覚えていないわ
そういうことは神さまにお任せしなければならないと思うの
クローディ:
あなたはとうとう大人になったわね
父さんとソックリになるわ
チズム夫人、ケルシー、牧師が来て世話を焼く
ウインズローも反対した父を押し切って、子どもたちの面倒をみる
リーナ:母さんが戻りたいならスキャタークリークに帰りましょう
クローディ:
父さんは、この町でなら子どもたちが白人と同じように生きていけるかもしれないと思っていた
だから、私たちはここにとどまらなきゃいけないわ
2人の男の子が大きくなったら、ベンと同じように白人にとって脅威になるでしょう
みなさんは、その時の準備をしておいてください
私は2人はみなさんと肩を並べられるような人間に育てるつもりですから
リーナは畑で残りの綿花を摘むヘイニーさんの姿を見つける
■訳者あとがき
ウィーダ・セベスティアン
1924年 テキサス州生まれ
本書の原題は『Words by Heart』
白人作家によって書かれたことも好評を得た原因のひとつ
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
アメリカにおける黒人差別を少女の目線で描いた小説
こうした偏見、嫌がらせ、犯罪は今もあるのだろうか?
少しずつ、少しずつ、若い世代から考え方が変わっていく予兆も感じられるのが唯一救いになる
【内容抜粋メモ】
登場人物
シルズ一家
ベン 父
クローディ 再婚相手
リーナ
ロイ、アーミラ、ブラザー
老犬ブリット
ヘイニー家
ヘンリー 父
テイター、サミー兄弟
ケルシー
ウインズロー・スターンズ 衣料品店の息子
チズム夫人
●1 コンテストの夜
シルズ一家は、南部の黒人だけの町スキャタークリークから
西部の黒人が1人もいない町に引っ越してきた
今夜は長女リーナが白人の子どもにまじって聖書暗唱コンテストに出場する
リーナは魔法のような記憶力を持つ
父は若い頃、牧師になるのが夢だったが
祖父が亡くなり、畑仕事をしなければならなくなった
リーナは優勝して、父に褒めてもらいたかった
リーナが3歳の時に産みの母が死に
5歳の時はクローディが母になっていた
会場の小学校に向かう途中でヘイニー家の兄弟テイターとサミーが立っていた
彼らは弁当にカブひとつ持ってくるので笑いものになっている
ケルシー:優勝者には賞品が用意してあります
想像通り、ライバル、ウインズローとの2人だけが残り
牧師は引き分けにしようとするが、リーナは続行を望む
●2 さされたパン
リーナは大好きな『雅歌』の詩歌集から次々と暗唱し
ついにウインズローは先を続けることができなくなった
ケルシーが渡したのは青い蝶ネクタイで
男子への賞品だったのでリーナは断った
父:おまえが自分に恥じない生き方をしていれば、人に認めてもらう必要はないんだ
家に戻ると、テーブルの上のパンに包丁が刺さっている
父:どこかの子が、友だちにそそのかされて忍びこんだだけだ
クローディ:ここから出ていけって言ってるんじゃないの
父はクローディにうながされてリーナに黒人差別について話す
父:
南部には黒人を受け入れない町がいくつもあった
それで黒人はスキャタークリークのような黒人だけの町をつくった
だが、わしらはどの町に住む権利があるんだ
母さんは何度も怖い思いをして怯えている
だがびくびくすることはない
●3 おまえたちはでていけ!
翌朝は日曜日だが教会へ行くのをやめようと提案する父
父は綿花をつみ、綿繰り機にかけたり
チズム夫人の牝牛の世話をして、牛乳を届けたりする仕事をしている
母は夫人に頼まれた服やシーツなどをアイロンがけしている
リーナは父から渡された新聞紙に目を輝かせる
父:
奥様が種をくれて、ここに包んであったんだ
明日、おまえに手伝いに来てもらいたいそうだ
父と新聞に載っている戦争の話をする
父:
人を殺すのは悪いことだ 神は“殺してはならない”といっておられる
カンザスの人たちは奴隷制度に反対して戦った
白人は黒人が多くなりすぎたから、母国のリベリアへ帰ったらどうだといいだした
祖父は土地をとられ、わしらは南部へ戻ったんだ
戦争が終わり、黒人は読み書きを習い、土地を持ち、法律をつくる時に意見を述べはじめた
だが、また奴隷時代に戻ってしまった
黒人の男たちは木から吊り下げられて殺されている
だが、わしは白人の中で堂々と暮らしたかった
あれはわしらへの警告だったんだ
老犬ブリットが殺されているのを見つけた父は
ポプラの木の下に埋めたと話す
父:人を裁くのはおまえの仕事じゃない 神さまがなさることだ
家に帰ると、野良猫が4匹の子猫を産んでいた
その無邪気な様子に慰められるリーナたち
●4 かばんにすべりこませた本
リーナはチズム夫人の家に行き、夫人と一緒にトマトの瓶詰めや
屋根裏部屋の掃除を手伝う
屋根裏部屋にたくさんの本の山を見つけて、リーナはうっとりする
リーナ:私に読ませていただけませんか?
チズム夫人:
うぬぼれるんじゃないよ おまえはかえって足手まといだったんだ
ひさしの下に本を置くんだ イヤなら家から出てっておくれ
リーナは本が傷まないように防水シートをかぶせて
チズム夫人が見ていない時に1冊かばんに入れた
チズム夫人:
子どもたちはちんちんをしながら、私が死ぬのを待っている
私が死ねば貧乏とはおさらばだからね
でも私はお金を全部使ってしまうつもりだ
欲しいものを買い、食べたいものを食べてね
お前の父親にホーク・ヒルにある牧場に行ってほしい
ヘイニーに柵を直すよう言ったがぐずぐずしている
赤ん坊が産まれそうだから、土地から追い出すことができない
●5 かがやくあこがれの山
リーナが持ってきたのは『図解世界地図』
家族にはチズム夫人が貸してくれたとウソをついてしまう
父:いちばん近い山は500kmのところにある 行ってみたいな
リーナ:素晴らしいものはみんな自分の目で見ればいいのよ
チズム夫人の家に行くと、亡くなった夫が可愛がっていたカナリアが病気で困っている
ケルシーさんなら知っているかもしれないと教えるリーナ
リーナはウインズローとぶつかって『図解世界地図』が飛び出す
ウインズロー:
こんなすごい本見たの初めてだ 誕生日祝いにもらったのか?
おまえが読んじゃったら貸してくれよ
リーナ:いやよ!
チズム夫人に言われてケルシーさんにカナリアを見てもらうと
手のほどこしようがないと言って引き取る
リーナは『図解世界地図』を返して、『アメリカ詩人珠玉選集』を持ち出す
ヘンリー・ヘイニーがやって来て仕事をくれと言う
チズム夫人:
お前がする仕事を全部してくれる男を雇った
ベンは引き受けた仕事をちゃんとしてくれる
大々的に開く昼食会にはリーナに給仕をしてくれと頼む
●6 牛乳をかぶった本
チズム夫人は父にヘイニー家に預けた針金と杭を取ってくるよう言う
父はウォルト・ホイットマンという詩人をリーナにすすめる
リーナは『アメリカ詩人珠玉選集』から覚えたい詩を便せんに写していると
牛乳をこぼして、本が浸かってしまう
リーナが勝手に本を持ってきたことを知りガッカリする父
父:おまえは人のものを盗んだんだぞ
*
ヘンリー:
おれは3年間、ホーク・ヒルの柵を直してきたし
これからもそうするつもりだ
ヘンリーが行ってしまうと、父は納屋を調べて
彼が生活の足しに針金と杭を売ってしまったと知る
父は怒る代わりに、ヘイニー家の身になって考えることをリーナに教える
●7 父の約束
テイター:やい、黒んぼ おまえはおやじに虫けらみたいにひねり殺されるぞ
リーナはかっとして、厚い本の入ったカバンでテイターを殴り、本がバラバラにほどけてしまう
父:
小作人は、かごの中で輪を回しているリスみたいに休むわけにいかないんだ
今年、家族を養うために借金をすれば、来年、働いても借金返済にあてて
家族を養うためにまた借金をしなければならない
誰かを捕まえてその恨みを晴らしたくなる
そうでもしないとガマンできないから
チズム夫人の家から自動演奏ピアノでジャズが流れ
黒人野外伝道集会の人々が陽気に踊る
父はリーナが本を黙って持ってきたことを話す
チズム夫人:これは一番高い本なんだ 保安官に引き渡してやる
チズム夫人はリーナの代わりにクローディに昼食会のしたくを手伝わせることに決める
父:
ホーク・ヒルに行く約束の代わりに
たくさんの本を読ませてもらえる約束をした
リーナ:本なんかいらない 私は怖いの
父:
わしは、向学心に燃えるおまえになにひとつできずに見ているほうが怖いんだ
おまえはなににでもなれるはずだ
チズム奥さまはヘイニー家を追い出そうとしていらっしゃる
●8 サツマイモとクッキー
サミーはまたクラスの子どもたちに弁当のカブを取られていじめられている
リーナは止めたくても止められない
木の上で弁当を食べていると、ウインズローが隣りに座り
リーナのサツマイモと自分のクッキーを交換する
ウインズロー:ぼくは詩集を1冊持ってる 君は絶対読むといいよ
●9 母の不安
母はブラザーに乳をあげるために家に帰ってくる
チズム夫人の家では、昼食会のためにバスルームの石鹸まで洗うことにビックリする
リーナはバケツに水をそそいで、まずは小さい子どもをお風呂に入れる
●10 チズム夫人の昼食会
リーナは歴史の勉強をする
人間は地球に現れて以来、集団をつくり
自分たちと違う外見や考え方の別の集団と対抗してきたと知る
父:黒人だからといって卑屈な生き方をしてもらいたくない
クローディ:
奥さまの子どもたちは1人も来なかった
あんなにお料理を作ったのに、昼食会に来たのはケルシーさんだけだった
リーナは慰めに行くが逆に怒られる
チズム夫人:
騒々しい昼食会なんてまっぴらだよ
主人が生きていたら、私はまるでゴミみたいに無視されることもなかったでしょうに
リーナは夫人が自分と同じように必死に誰かに認めてもらいたがっているのが分かる
●11 でてこい、シルズ!
父は水曜の夜までには必ず戻るといって出かける
リーナは授業で「白人の責務」という言葉に疑問を持って先生に質問する
先生:優れた人種は、劣った人種を支配する責任を担ってきた
リーナ:アングロサクソン人て何ですか?
先生:コーカサス人種だ 白人のことだ
ウインズローはリーナに加勢して、黒人にも素晴らしい人物がたくさんいると発言する
火曜日
ウインズロー:
本を君に貸せなくなった
お父さんに君と話しちゃいけないと言われたんだ
先生がお父さんに話したんだと思う
帰宅すると、母は牝牛が柵から出たため見つけに行く
夜中に酔っぱらったヘイニーさんが来て戸を叩く
ヘイニー:
おやじはどこにいるんだ?
奥さんは、おれの馬を取り上げると言いやがった
テイターは父を連れて行く
母:
あなたが知っているのは、世の中の陽が当たっているところだけ
私が子どもの頃、白帽団員は家に火をつけて、家族で川原まで逃げた
コンテストの晩、父さんはあなたをどれほど愛しているか知らないんじゃないかと言っていた
●12 ひとすじの煙
水曜になっても父は帰ってこない
ヘイニー家を見に行くとテイターと馬がいない
リーナは一昼夜たっても戻らない場合はチズム夫人に頼んで探しに来てくださいと書き置きをして
馬車に乗って父を探しに山へ向かう
途中で馬の足跡を見つける
ホーク・ヒルに着き、ほそい煙を見つけて近づくと、父が撃たれて倒れている
●13 わかれ
父:
きっと誰かが助けに来てくれると思っていた
でも、それがおまえだとは なんて素晴らしいんだ
テイターはたぶん足が折れている
銃を撃ち、馬に引きずられて頭を打ったんだ
私は助からない だがテイターは治る
おまえにテイターを家族のところへ連れて行ってもらいたい
お互いに最後に言いたいことを言えるなんて素晴らしいじゃないか
わしはいつもおまえと一緒だ
リーナが馬車を引いてくると、父は血を吐いて死んでいた
テイター:おねがいだ、助けてくれ
リーナは葛藤の末、馬車にテイターを乗せる
●14 悲しみのむこうに
ヘイニー家に着くと、ヘンリーと妻が連れて行く
夫人はまた妊娠していた
クローディ:誰がやったの いいなさい
リーナ:
私は覚えていないわ
そういうことは神さまにお任せしなければならないと思うの
クローディ:
あなたはとうとう大人になったわね
父さんとソックリになるわ
チズム夫人、ケルシー、牧師が来て世話を焼く
ウインズローも反対した父を押し切って、子どもたちの面倒をみる
リーナ:母さんが戻りたいならスキャタークリークに帰りましょう
クローディ:
父さんは、この町でなら子どもたちが白人と同じように生きていけるかもしれないと思っていた
だから、私たちはここにとどまらなきゃいけないわ
2人の男の子が大きくなったら、ベンと同じように白人にとって脅威になるでしょう
みなさんは、その時の準備をしておいてください
私は2人はみなさんと肩を並べられるような人間に育てるつもりですから
リーナは畑で残りの綿花を摘むヘイニーさんの姿を見つける
■訳者あとがき
ウィーダ・セベスティアン
1924年 テキサス州生まれ
本書の原題は『Words by Heart』
白人作家によって書かれたことも好評を得た原因のひとつ