メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

心の児童文学館シリーズ 4第9巻 幽霊があらわれた ジリアン・クロス/作 ぬぷん児童図書出版

2024-07-26 17:24:51 | 
1995年初版 安藤紀子/訳 八木賢治/表紙・カット

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


スウィーニー・トッドの話がまず信じられないくらいブキミ
生徒たちが狂気にかられていく様子は、スティーブン・キングのホラー並み

数人が牢の番人役になり、他の大勢を囚人役にして数日過ごすと
リアルに上下関係が出来上がり、憎しみあうようになるって実験を思い出した/汗

加えて、昔のヨーロッパで抑圧されてきた子どもたちの暮らしが
私たちの想像をはるかに越える恐ろしいものだったのが悲しい

最後にマーシャルは謝り、ジャッカスは許したのか?
それともあとがきにあるようにマーシャルの支配下から脱して自立したのか


【内容抜粋メモ】

登場人物
マーシャル・コリン:スウィーニー・トッド役 母ローズ
ジャッカス・コリン:ジャービス・ウィリアムズ役 母メアリー
アン・リドリー:ミセス・ラベット役
ベニー:トゥバイアス・ラッグ役
マンディ:殺された船乗りの夫の婚約者役
スティーブン

ランピター先生(ランプポスト)
ガーナーじいさん 校長




●1 ふたりのコリン





クラスで演劇を演ることになる
出し物は『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の床屋』

マーシャルが演じるスウィーニー・トッドは床屋で
客をカミソリで斬り殺し、隣りの女性ミセス・ラベットに料理させて人肉パイにして売っている!

代役で加わったジャッカスはクラスで疎まれていて
初日からベニーと取っ組み合いのケンカになる

ガーナー校長が来て、ジャッカスに必要なのは協調性だと説く
以前、ジャッカスがテープレコーダーを盗んだ疑いがあり
今回、演劇で上手くやらないと警察に届けると約束している

マーシャルとジャッカスは同じコリンという名前
母親同士が学生時代の親友で、小さい頃から仲が良かった

アン・リドリーの日記が章の終わりにあり
マーシャルへの憧れを書いている



●2 はだかの腕はだれの腕?
劇の舞台は19世紀のスラム街
子どもたちは薄給で働かされて、いつも空腹で貧しく、大人の食いものにされている

担当のランピター先生はこの劇を成功させようと熱心に演技を教える
電気を消してロウソクをつけ、みんなを子どもの泥棒になりきらせる

アンには子どもたちの恐怖がリアルに伝わり
ジャッカスはひどい悪臭がする

アンはジャッカスが押したと文句を言うが指1本触れなかった



●3 かじられたサンドイッチ
ジャッカスはアンとランチを一緒に食べようとするが
サンドイッチ、リンゴ、チョコバーがひと口ずつかじられ
つばでねちゃねちゃになっている

アンはまたジャッカスの悪戯だと責める
ジャッカス:たぶん幽霊だろ









アンの日記
暗闇で座っていた時、腐った汗の臭いがした
サンドイッチをかじったのもジャッカス
マーシャルがジャッカスをやりこめる方法を編み出した



●4 飛んできたシャープペンシル
翌日の劇の練習中、ジャッカスは仲間から幽霊に関する冗談を言われて注意散漫になり
ランピター先生にまた怒られる

その後、ランピター先生は父からもらったシャープペンシルがなくなったから探してと頼み
どこからともなく飛んできたのを見て、またジャッカスの仕業と思って叱る
ジャッカス:きっとまた幽霊がやったんですよ

ジャッカスは図書室で1人セリフを覚えさせられる



●5 書棚の本が舞いおちた
ようやく演劇の面白さに気づき、自分のセリフは覚えてしまったから
マーシャルのセリフを言っていると、図書室に囁き声が広がり
本が落ちて、1ページずつめくられていくのを見る

重い書棚が倒れてきて、本が散乱した時、ガーナー校長が入って来て
本をめちゃめちゃにしたのはジャッカスだと思い、全部元に戻すよう命令する







『幽霊ハンターの手引き』という本に興味を持ち、借りていく
ジャッカス:先生は幽霊を信じますか?
ガーナー校長:私は根拠のあるものは信じる



●6 奇妙な足あと
みんなで劇に使う背景などを作る
マーシャルだけはスウィーニー・トッドの役作りのために指示する側につく
マーシャル:わしの言うことを聞かないと、鉄格子の部屋に閉じこめるぞ!

ランピター先生はみんながマーシャルを憎みだしたのを
狙い通りだと満足する

マーシャルはアンを“デブ”だとけなして泣かせる
みんなが罵り合いをしている中、絵の具が勝手に床に垂れ
子どものような小さい足あとが残っているのを見たジャッカスとアン








ジャッカスは後でこっそり紙に足あとを写す

アンの日記
マーシャルが言ったことは本当にひどかった
でも私はマーシャルを憎まない 当然だ
床に裸足の足あとがついていた



●7 金の十字架がない
マーシャルはスウィーニー・トッドの役作りのためだと言って
刃の鋭い西洋カミソリを持ち歩く

ランピター先生は危ないから劇の練習以外は小道具入れに入れておくよう注意する









スウィーニー・トッドがミセス・ラベットを殺すシーンでは
アンの髪の毛を引っ張って引きずり、また注意を受ける

稽古後、マンディが母からもらった金の十字架がなくなったと騒ぎ
みんなで探すが見つからない

帰り際、マーシャルはジャッカスに「改心したと思ってたのに」とあてこする



●8 幽霊を呼びだそう
ジャッカスは本にあったポルターガイスト現象について考えていると
アンに見つかり指摘される
アン:起こったことはみんな劇と関係がある

ジャッカスは幽霊を呼び出そうとして、アンも協力すると約束する

アンの日記
ジャッカスは本当はいい人かもしれない
マーシャルと友だちと聞いて変な気がした
じゃあなぜ彼は幽霊の冗談を思いついたのか







●9 盗んだものを返して!
マンディだけじゃなく、1ポンド札、ハンカチなど
みんななにかしら盗まれていることが分かり
ランピター先生はみんなを連れてガーナー校長に相談しに行く

ガーナー校長:なにも盗まれなかったのは誰だ?

ジャッカス、マーシャル、アンの3人が手をあげるが
ランピター先生はジャッカスが犯人だと言わんばかりに睨む

盗んだものを今すぐ返せば忘れると言われても出す生徒はなく
次の水曜の最終リハーサルまでに品物が返らない場合、劇は中止すると決める









ジャッカスは残って自分は盗っていないと宣言する

マーシャル:
お前は怪しい やりたくもない劇をやってるのはお前だけだ
劇が中止になったら、すごく不愉快なことが起きるぞ

友だちが自分を泥棒だと本気で信じていることにショックで呆然とするジャッカス



●10 あらわれた! 子どもたちだ!
ジャッカスは親がいない日に車庫で実験をする
新聞紙の上にコイン、ハンカチなどを置いて、小麦粉をまいて
アンは腕時計を外して置く

電気を消して、ロウソクをつけ、劇のセリフを言い始めると
ロウソクが消え、物音がして、アンが恐怖に囚われる

アン:私たちを怖がらなくていいのよ

電気をつけると、床のモノはめちゃめちゃで
小さな足あとがたくさんついている

アンは飢餓に苦しむ子どもたちの恐怖をもろに感じて泣き出す
アン:あの男からあの子たちを救う方法がきっとあるわ
ジャッカス:マーシャルはマーシャルだ あの劇はただの劇だ

アンの日記
私には全部がすごくリアルだった
マーシャルにはスウィーニー・トッドが乗り移っている
でもジャッカスには絶対に分からない



●11 マーシャルはねらわれている
ジャッカスは夜、マーシャルを訪ねて、これまで起きたことを全部話して
これからどうしたらいいか聞く

紙に写した足あとは子どものものだと認めるが
自分に危険が迫ってるから劇をやめさせるべきだと言われると否定する

マーシャル:お前の話は信じた 考えておくよ








●12 いやがらせ
マーシャルはジャッカスにホールでトランプをしようと誘い
カバンを忘れて来たと言って外に出る

ジャッカスはマーシャルのセリフを言うと
白い柱のようなモノが揺れるのを見て、叫び声を上げる

みんなが稽古で入って来て、何が起きたか聞く
ジャッカス:幽霊を見たんだと思います

みんなで確かめようと行きかけて、ガーナー校長が止め
校長とジャッカスだけで見に行くと、ガイ・フォークスの面などが隠されているのを見つける
マーシャルのイタズラと分かり、ジャッカスが劇をやめると言うと

ガーナー校長:
君が劇からいなくなるのを見たら、とても喜ぶだろう
なにも取り合わないのが一番だ

アンの日記
マーシャルに話してしまったなんて!
これからあの子たちはもっと大変になるだろう 可哀想に
幽霊の冗談を思いついたのもマーシャルだと話したらカンカンに怒っていた
人を可哀想に思うだけじゃダメだ それだけじゃ、どうにもならない



●13盗難品がもどってきた
水曜の最終リハーサル
今日、盗難品が戻らなければ、劇は中止にされてしまう

だが、マーシャルのカバンから全部の盗難品が出て来る

マーシャル:
盗んだのがボクなら、カバンに入れて歩いたり、みんなの前で開けたりしません
わざと入れられたんです
もちろん、ジャッカスさ
今学期の中間休みに、ジャッカスがテープレコーダーを盗んでる最中に
ガーナー校長が捕まえたのを知らなかったのか?

アン:私が時計をなくしたのは学校じゃないからマーシャルではない

ガーナー校長:
あれはジャッカスと関係ないことは分かっている
劇は中止しないが、私は調査を続ける









●14 とんでもないリハーサル
リハーサルはハプニングだらけ
電球の球が切れたり、時を告げる鐘が余計に鳴って失笑が起きたり
効果を盛り上げるピアノの弦が切れて
驚いたマーシャルはカミソリでトムの指を切ってしまう

スウィーニー・トッドが狂気にかられる最後のシーンでは
マーシャルの後ろの戸棚が倒れて、押しつぶされそうになる

ランピター先生:
なんて恐ろしいことをしたの!
君はずっと厄介者だった!
物を盗ったり、ぶち壊して、この劇に入れるべきじゃなかった!

ジャッカスは否定してその場に失神してしまう

アンの日記
まずいことはみんなマーシャルが舞台にいる時に起きた
あの子たちは自分たちだけでは出来ないんだ



●15 幕の後ろに幽霊が・・・
ジャッカスはガーナー校長に呼ばれてワケを話す

ジャッカス:
ビクトリア朝には、残忍な人がたくさんいました
子どもたちは悲惨な状況で死んだことすら分かっていないかもしれない

ガーナー校長:
誰かが高い大きな声で歌うと、ワイングラスが共鳴して震える
時には粉々に砕けることがある

ジャッカス:劇をやめさせるべきです

証人として呼んだアンは、ジャッカスに不利な発言をする
アン:私は劇を止めさせたくないの 絶対に

ジャッカスは半ば諦めて稽古に戻ると、悪臭がして
幕の下からひどく汚れた裸足の片足が見える









アンの日記
何をすべきかは分かっている



●16 足どりも軽やかに
本番になると、ハプニングは起こらず、観客は夢中で劇にのめりこんでいる
猛烈な拍手が起きて、ランピター先生は生徒の出来を褒め
ジャッカスにはいろいろ誤解していたことを謝る

マーシャルだけは休憩中も奥で一人役になりきっている
最後のシーンで、スウィーニー・トッドは
ミセス・ラベットの死体の前で狂気のセリフを吐く

舞台にあるはずのカミソリがないことに気づくジャッカス
カミソリはアンが隠し持っていて、マーシャルの首に振り上げられるのを見て慌てて止める

アン:止めないで! あの子たちはずっと待ってたのよ!

ジャッカス:
この年寄りを憎しみ続けるほど、こいつは永久に生き続けるぞ!
マーシャルは関係ないんだ
お前たちは自由だ お前たちは死んでいるんだ!

何百という足音がして、喜びの感情が広がる
アン:聞こえたでしょ?

マーシャルはジャッカスに命を救ってくれたお礼を言う
マーシャル:テープレコーダーを盗ませたのは自分だとガーナーじいさんに言ってもらいたくないか?
ジャッカス:どうでもいいよ お前がオレにできることは何もない もうなにも

生まれて初めて引きずっているものが何もなくなったかのように体中が軽くなる








訳者あとがき





ジリアン・クロス
1945年ロンドン生まれ
現代イギリスの代表的な児童文学作家のひとり

憎悪、いじめ、裏切り、犯罪、差別など
人間の暗い一面や現代社会が抱える諸問題を取り上げている

本書はイギリスのロウワー・スクールの生徒たちの物語

ジャッカスが真正面から自分と向き合い、行動することで
マーシャルから解き放たれ、自己の確立に向けて踏み出す

スウィーニー・トッドはイギリスの通俗小説や廉価本に登場する伝説上の人物
舞台で演じられたり、映像化され、なぜか成功するものの1つに考えられている


『家出』
『桜草をのせた汽車』
『オオカミのようにやさしく』
『グレイト・エレファント・チェイス』






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