
今から160年余り前、文政年間から受け継がれてきた「土湯系こけし」は、比較的
頭が小さくて、円柱形の細めの胴は上部と下部が少し絞られたエンタシス型が多い。
頭の模様は、墨で黒く蛇の目を描き前髪をたらし、その両側に赤い髪飾りを描くの
が特徴だ。胴模様はロクロ線の組み合わせが基本でその色の組み合わせが美しい。

ロクロで描く線模様には、返しロクロと言う技法が有り、単調になりやすい線模様
にアクセントを付けている。
昔のロクロは足踏み式であるから、急に回転速度を変え、停止させ或は反転させ
ることで線模様が乱れ、水紋のような独特の線を描くことが出来た。
今は殆どがモーター式のロクロで、一方向への回転だからこの線を描くには、特
殊な技法がいるそうだ。

温泉街に有る民芸品店「会津山根屋」は、こけし工人・渡辺忠雄さんのお店だ。
民芸品・おみやげ品に混じって土湯系のこけしが並べられている。
店先にはガラス張りの工房も有るので、運が良ければロクロ引きの作業風景が見
学できるかもしれない。
荒川大橋の袂にある公衆浴場・中の湯の前にある「まつや物産店」は、こけし工
人・阿部家五代目・阿部敏通さんのお店だ。



今は主に六代目の国敏さんがお店を切り盛りしているようだ。
訪れた日はその六代目が在宅で、店先で気さくにロクロ回しの実演を見せてくれ、
お茶を供しながら、こけしの話を熱く聞かせてくれた。
こうした若手の工人が健在なのは、本当に喜ばしいことである。(続)




