その昔、鉄道旅行の途中駅での、長い停車時間の楽しみと言えば、ホームの
“立ち食いそば(うどん)”を食べることであった。
しかし残念なことに、最近では地方駅のホームの、そのような店はめっきり減って
しまったように感じる。

これらの店では列車を下りて飛び込めば、間髪を入れず作ってくれるので、一時
に大勢の客が殺到しても、弾かれて食べそびれると言う事はまずなかった。
それは、当時はメニューも単純で、基本的には皆同じものを注文するから、お店の
方も列車の到着に合わせ下ごしらえを済ませてあり、あとは出汁を掛ければよいか
ら、やりやすく、こんな芸当が出来たのだ。

面白いのは、支払いにお札を出してもすぐに釣り銭が出て来ることだ。
これは何人分かの釣り銭を、予めカウンターに積み上げてあるから、つりの必要
な客にはその山を一つ掴んで渡せば済むので、こんな工夫が、短時間に集中す
る大勢のお客を、まさに職人技のように捌いていた。

客の方も僅かな時間で慌ただしくかき込んで、味わうと言うよりも、予め調べてお
いた「この駅で、これを食べる・・」と言う、いわば旅中の一行事としてその雰囲気を
楽しんでいた。

「どんぶり」は、使い捨ての樹脂製が使われていることも多かったので、熱くて食
べられないのなら車内に持ち込む事も出来た。
列車の座席が、殆ど向い合せに座るボックス席で、窓際に小さなテーブルも付い
ていたので、そこに丼を置いて、流れる車窓風景を見ながら、そばを啜る・・・と言う
のも当時は旅の一つのスタイルであった。(続)



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“立ち食いそば(うどん)”を食べることであった。
しかし残念なことに、最近では地方駅のホームの、そのような店はめっきり減って
しまったように感じる。

これらの店では列車を下りて飛び込めば、間髪を入れず作ってくれるので、一時
に大勢の客が殺到しても、弾かれて食べそびれると言う事はまずなかった。
それは、当時はメニューも単純で、基本的には皆同じものを注文するから、お店の
方も列車の到着に合わせ下ごしらえを済ませてあり、あとは出汁を掛ければよいか
ら、やりやすく、こんな芸当が出来たのだ。

面白いのは、支払いにお札を出してもすぐに釣り銭が出て来ることだ。
これは何人分かの釣り銭を、予めカウンターに積み上げてあるから、つりの必要
な客にはその山を一つ掴んで渡せば済むので、こんな工夫が、短時間に集中す
る大勢のお客を、まさに職人技のように捌いていた。

客の方も僅かな時間で慌ただしくかき込んで、味わうと言うよりも、予め調べてお
いた「この駅で、これを食べる・・」と言う、いわば旅中の一行事としてその雰囲気を
楽しんでいた。

「どんぶり」は、使い捨ての樹脂製が使われていることも多かったので、熱くて食
べられないのなら車内に持ち込む事も出来た。
列車の座席が、殆ど向い合せに座るボックス席で、窓際に小さなテーブルも付い
ていたので、そこに丼を置いて、流れる車窓風景を見ながら、そばを啜る・・・と言う
のも当時は旅の一つのスタイルであった。(続)


(写真:旧大社線・大社駅 本文とは無関係)

