簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

ホームの駅弁売り(JR乗り潰しの旅)

2015-03-13 | Weblog
 駅での長い停車時間と言えば、ホームの“駅弁”も楽しみの一つで有った。
列車が到着すると「べんとう~、お茶はいりませんか~」の呼び声と共に、どこか
らともなく何人もの駅弁売りが現れる。
乗客は窓を開け、身を乗り出して呼び止めて、好みの“駅弁”を買い求めていた。



 駅弁売りは、側に店名の書かれた長方形のお盆のような容器を、太い帯で首か
ら下げ、そこに“駅弁”やお茶、冷凍ミカンなどを山積みにして売り歩く。



 
 中には片方の手に、アルマイトの丸い大きなやかんを下げた駅弁売りもいた。
昔のお茶は、陶器で作られた土瓶の形をした容器で売られていて、駅により独特
の形をしていたので、それを買うのも一つの楽しみであった。



 土瓶の蓋が湯呑代わりになり、それに移してはチョビチョビと、熱いお茶を啜った
ものだ。土瓶には茶葉が入れられているので、飲んでしまえば、そこに再び熱湯を
注ぎ足すとまた茶となった。
そのため駅弁売りは、やかんを持ってお湯も売り歩いていたのだ。



 この容器のことを「汽車土瓶」と言ったらしいが、残念ながら自分にはその記憶
がない。
飲み終わった容器は持ち帰り、コレクションの対象とされた時期も有ったようだ。



 発車時刻が来て、列車がゆっくりと動き出すと、それと歩を合わすように駅弁売り
も移動し、窓越しのやり取りが続き、やがて追いつけなくなると諦め立ち尽くし、その
列車のテールランプを静かに見送る。
 古い映画にはそんなシーンが良く描かれていて、今そんな映像を目にすると何か
とてつもない懐かしさを覚えたりする。(続)


(写真:紀勢本線・那智駅 本文とは無関係)





にほんブログ村 旅行ブログへにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする