クリント・イーストウッド監督主演の2008年の作品。
タイトルは主人公コワルスキーが所有している72年型の車。
フォード社で長年働いて退職した愛国心の塊の偏屈な白人の老人が、
東洋系の家族と心通わせていく物語。舞台はデトロイト。
国籍はアメリカであるが主人公はポーランド系であり、イタリア系の
床屋やアイルランド系の友人らが登場し、東洋系の隣人らも関係する。
お下劣なスラングが盛りだくさんであり(日本語字幕ね)、
お互いがののしり合っているように聞こえるのだが、
それほど心を許した近しい関係なのだ。
アメリカではこんな感じなんだろう。と楽しめばよい。
<ストーリー>
教会での葬儀のシーンから始まる。ポーランド系米国人コワルスキー
(クリント・イーストウッド)は妻を亡くした。参列する二人の息子や
孫との関係がギクシャクしている事がうかがい知れる。そして彼は、
隣のアジア系の家族に対して反感を持っている。
隣家の息子タオ(ビー・ヴァン)はギャングの従兄弟スモーキーに
脅されてコワルスキーの車グラン・トリノを盗みに行く。
タオと言う名前や風貌からして中国人かと思ったのだが・・・
劇中ではモン族と呼ばれており、ラオス、ミャンマー、タイ、
中国に住む民族のようだった。
いずれにしても、東洋系と言う事で差別されている。
コワルスキーは単に自宅に入った悪人を追い払ったにすぎないのだが、
タオの一家は自分達を助けてくれた英雄としてお礼をする。
亡き妻の遺言で牧師がやって来るがコワルスキーは取り合わない。
コワルスキーは1950年~の朝鮮戦争に参加したような供述がある。
不良に絡まれている隣家の娘スー(アーニー・ハー)を助けた事から、
コワルスキーとスーの間に友情が芽生えて行く。
スーの家のパーティに招かれたコワルスキーは͡歓迎はされなかったが、
祈祷師に人生を言い当てられる。そして自分の家族と一緒にいるより、
居心地の良さを感じる。コワルスキーは吐血してしまう。
スーはお詫びにタオをコワルスキーの家で働かせる事にする。
最初は嫌がっていたコワルスキーは真面目に働くタオを見て、
心を開きいろいろな事を教えて行く。父親のいないタオも
コワルスキーを父親のよう思い慕い始める。
タオの従兄弟スモーキーはそれを良く思わずタオの家を銃撃し
スーを暴行する。復讐に燃えるタオ。コワルスキーは責任を感じる。
朝鮮戦争の不利な状況下で13人以上を殺害し勲章をもらっていた
コワルスキーは自分が余命いくばくもない事を知っており、
決着をつけるべく作戦を練る。
床屋に行き、スーツを仕立て、教会で懺悔し、愛犬をタオの家に預け、
タオを地下室に監禁し、単独でスモーキーの家に行く。
スモーキー達に銃で狙いを定められたコワルスキーは、
銃を抜くと見せかけライターを出そうとして撃たれてしまう。
無防備な自分を射殺したスモーキー達を長期刑に処す事で、
コワルスキーはタオ一家を助けたのだった。
コワルスキーの葬式で牧師は「彼に本当の生と死を教えられた。」
とコワルスキーが彼に行った言葉で語り、愛車のグラン・トリノは、
友人のタオに贈ると言う遺言状が読まれる。
タオは愛犬を助手席に乗せ海岸線をグラン・トリノで走る。
ローハイドでダーティーハリーなクリントイーストウッドである。
最後は一人で多数をやっつけてしまうのかと思ったが・・・
こういう終わり方もあるなぁ。
コワルスキーは人生の最期に多くの人々に教えを与え去って行った。
病気で自らの死を予期していたと言う事もあるだろうけれど、
自らの人生を誰かの役にたてようと思ったのかもしれない。
いい映画だった。クリントイーストウッド大好きである。