いよいよ安倍首相が訪米し日米首脳会談が行われる。
しかし直前になっても会談内容についての事前報道がない。
あるのは憶測記事ばかりだ。
なぜか。
それは外務省にシナリオがないからだ。
だから事前報道資料(ブリーフィング)を流せなかったのだ。
無理もない。
事前の準備をしたくても出来なかったのだ。
トランプ外交はトランプ大統領しかわからないからだ。
だからぶっつけ本番となる。
側近不在の、トランプ大統領と安倍首相の二人の間の、本当の意味での取引になる。
どう考えても安倍首相にとって困難な首脳会談になる。
なぜそのような日米首脳会談が行われるようになったのか。
それを、きょう4月16日の朝日新聞が教えてくれている。
すべては3月9日の電撃的な米朝首脳会談の発表から始まったのだ。
すなわち安倍首相がその事を知ったのはトランプ大統領からのその日の電話連絡だったという。
この寝耳に水の電話連絡に驚き、そしてはしごを外されてはいけないと狼狽した安倍首相は、その場で4月初旬の日米首脳会談を申し入れたのだ。
この安倍首相の決断は正しかったのか。
よせばいいのにと批判するのは簡単だ。
しかし南北首脳会談や米朝首脳会談が決まった以上、その前に一日も早く日米首脳会談を行うというのは、安倍首相の賭けとして理解できる。
問題はその後の状況が誤算続きだというところだ。
最初の誤算は、その後の動きが、北朝鮮の非核化に向かって進んでいる事だ。
もはや「最大限の圧力強化で日米一致」とは言えなくなった。
「北朝鮮が非核化を前提に話し合うと言い出した。この変化を評価する」と言うほかはなくなったのだ。
次の大きな誤算は、トランプ大統領が日本を輸入規制の適用例外としなかった事だ。
それどころか日本に対する攻勢を強めている。
報道によればトランプ大統領の日本に対する要求は理不尽なものばかりだ。
ついに米ドル間の為替管理まで持ち出そうとしている。
日米経済問題は今度の首脳会談の最も困難な問題になることは間違いない。
その上に、訪米直前になってトランプ大統領はシリア攻撃に踏み切った。
中東問題については日本の出る幕はない。
ロシアと欧米の対立の板挟みになって安倍首相は翻弄されるだろう。
おまけに国内では森友・加計・自衛隊日報疑惑で安倍政権の支持率が下げ続けている。
今朝の朝日や共同の世論調査は深刻だ。
支持率は下げ止まらず、もはや安倍1強支配は崩れた。
そんな時に訪米してトランプ大統領と国益を賭けた首脳外交ができるはずがない。
朝日新聞のその記事で私が最も注目したのは、ゴルフを持ちかけたのはトランプ大統領のほうであり、さすがの安倍首相もためらったが、断れば日米蜜月が陰ったとの印象を与えかねないと判断して応じた、とされているくだりである。
これが事実なら、トランプ大統領はなかなかの戦略家だ。
トランプ大統領は側近のいない二人だけのゴルフ談議で、すべて安倍首相を丸め込むつもりに違いない。
このままでは日本の戦後の外交史上、もっとも国益を損なう日米首脳会談で終わる事になる。
そんな首脳会談であってはならない。
メディアは今度こそ、安倍首相とトランプ大統領の間で何が話し合われたか、検証してその真実を国民に教えなくてはいけない。
果たしてメディアは何と報じるだろうか(了)