和歌山2区は二階俊博元幹事長の三男・伸康氏(46)が自民党公認を得た。が、裏金問題で離党を余儀なくされた世耕弘成前自民党参院幹事長 (61)は出馬を強行。 保守分裂選挙と相成った。賊軍の立場である世耕氏が、二階陣営をどうやって切り崩したのか。

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 当選から一夜明けた10月28日、世耕氏は在阪メディアの取材に、

「極めて満足のいく結果」

 と、笑みを浮かべたが、

「世耕氏は周囲に“トリプルスコアで勝つ”と豪語してきました。実際今回、10万1000票を獲得して伸康氏に3万票差をつけた。大勝利です」

 とは政治部デスク。

「二階元幹事長と気脈の通じた和歌山県連は、世耕氏の鞍替えに反発して、“重大な党規違反だ”という談話を発表したうえ、森山裕幹事長からも“ルールに従えば、復党を承認することはない”との言葉を引き出していた。伸康氏が当選していたら、世耕氏の復党の目は完全についえていた」(同)

 つまり、世耕氏には伸康氏に比例復活を許さないほどの“圧勝”が必要だったというのである。

「世耕の戦い方はうまかった」

 だが、和歌山は「二階王国」として知られ、選挙区の大半の首長や地方議員らが伸康氏の支援に回った。

 しかも、世耕氏には「裏金」の逆風も吹いた。知名度に勝るとはいえ、いかにして氏はこの選挙戦を戦い、勝利をもぎ取ったというのか。

 世耕陣営関係者は、

「集会でも、街頭演説でも、道端ですれ違う人にでも、まず初めに自分が行った不記載について丁寧に説明し、謝罪をする。その姿勢を徹底していました。なかなかできることではありません。しかも毎日、聴衆が多くなくても、地道に街頭演説をしたり、集会を開いたりしていました。世耕さんほどの経験をしている方が、あんなに地道な選挙戦をするとはビックリしました」

 と語るが、対する二階陣営のベテラン県議はこう嘆息する。

「世耕の戦い方はうまかったよね。自分の裏金問題は早めに謝っちゃって、それを打ち消すかのようにオヤジさん(俊博氏)の政策活動費50億円の話を出して、そっちの方がひどいだろうって触れ回っていたからね」

 幹事長時代の二階氏に使途公表の不要な「政策活動費」が50億円も支出されていた問題を持ち出して、自分の裏金問題の方がマシだろうと喧伝していたというのである。

権謀術数を駆使

 世耕氏の巧妙な戦術はほかにもあって、

「世耕さんは選挙区の2区だけではなく、1区の支援者にも“比例は公明党”へ投票するよう依頼していました。自民の比例枠に伸康さんが滑り込む余地をなくそうとしたのでしょう」(二階陣営関係者)

 まさに権謀術数を駆使して伸康氏を追い詰めていったというのである。無論、二階陣営もただ手をこまねいていたわけではない。

「選挙戦終盤の3〜4日間はオヤジさんも応援に入ったよ。もうそんなに体力がないから街頭演説で一緒に立つとかはできないものの、ハコモノの集会に1回顔を出してくれたし、その後も事務所で首長たちと面会を重ねたんだけど……」(前出・県議)

 しかし、老父の助力も虚しく、息子は比例復活を果たせず落選の憂き目に。世耕氏は冒頭の取材で「26年間“ザ・自民党”でやってきて、和歌山の国会議員の経歴は私が一番長いわけで、(党に)戻ることに違和感は全くない」と述べたが、県連の反発は必至。勝てば官軍とはいかないようだ。

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「週刊新潮」2024年11月7日号 掲載