ちょうど1年前から、全国各地の多くのバスに、「NBA」と書かれた緑色のシール(ステッカー)が貼られているのを目にするようになった。
この「NBA」は、「National Basketball Association」の略のアメリカのプロバスケットボールリーグではなく、「Nihon Bus Association」で「社団法人日本バス協会」のこと。(「にっぽん」だと思ってたけど「にほん」なんだ)
要するに「NBA」はバス会社の業界団体であり、このステッカーはその加盟各社の車両に貼られる「会員章」。
協会には路線バス事業者はもちろん、小規模な貸切専門の会社、さらには格安ツアーバス事業者でも加入しているところが多いようだ。
昨年秋までは、別デザインで水色のステッカー(会員章とは明示していなかったはず)を、一部の貸切バス会社だけが貼っていたが、新デザインのステッカーは、路線・貸切問わず、ほぼ全会員事業者の全車両に貼っている。
(加盟しているのに貼っていない事業者もごく一部存在する。)
今回取り上げるのは、その会員章の貼付位置。
小型バスや貸切バスなど、構造上スペースに制約があるものもあるので、一般的な中型・大型路線バスで見てみる。
リラックマバスの立川バスのように、中ドアの戸袋など後ろの方に貼っている事業者も多少あるが、経験上やネットで見ると、前ドアの直後に貼る事業者が圧倒的多数。
さらに前に貼る事業者の中では、ボディに貼るところもあるが、下の写真のように窓ガラスの最前部・最下部に貼るところの方が多いようだ。
三重交通も窓ガラスの最前部・最下部(赤丸)
NBAの県単位の組織、石川県バス協会のサイトに、「『会員章』の貼付場所について」という文書(http://www.ishikawabus.jp/information/information11.html)があった。
協会から各加盟事業者宛てのものと思われ、「前ドア後ろの窓付近に貼付願います。」「会員事業者の証ですので極力同一箇所に貼付をお願いします。」とあった。
石川県以外でも同様だろうから、協会側で貼付位置まで指定しており、多くの事業者がそれに従った結果、前のガラスに貼るところが多いようだ。
ただし、「次の場合は指定場所ではなく他の場所(車両左側面に限る)へ貼付できます。」ともあり、
「指定位置に貼付すると目視の妨げになる場合(山岳路線等)。」「会社や組合等の方針で貼付できない場合。」などが挙げられている。
さらに、下の図中に「追加情報」があり「左側面貼付が難しい場合は、後面等でもかまいません。」とある。
最初は、左側じゃないとダメで統一しろと言っていたのが、最後には後ろでもいいってか!
僕はこの会員章を初めて見た時から気になっていたのだが、窓ガラスの最前部・最下部に貼るのってどうなんだろう?
バスを運転したことがないから知らないが、こんな小さなシールでも視界を妨げてしまうと思う。
いちばん前の側面ガラスは、バスの安全運行・事故防止上、重要な左前輪の真上であり、ドアの直後。小路から大通りに出る時、左折時、発車前後など、もっとも神経質になって目視確認しなければならない場所の1つだと思う。
首を動かせばいいかもしれないし、ミラーもある。でも、シールがなければ直視で確認できるものを、シールを貼ったことによって、無駄な労力・神経を運転士に要求し、危険を増やしているのではないだろうか。つまり、シール自体が「死角」を作っていることにならないだろうか。
特に万全の安全運転が要求される営業運転を行う公共交通機関のバスなら、“万万が一”を考えてこんな場所にシールなど貼らない方がいいのではないだろうか。
上記の石川県協会の文書では「指定位置に貼付すると目視の妨げになる場合(山岳路線等)。」などと言っているが、山岳路線なんかより、街中路線の方が「目視の妨げになる」場面が多いかもしれないし、事故につながる可能性だって高いんじゃないの。
しかもそれをさせているのは、事業の1つに「輸送の安全を図るための運動」を掲げる業界団体であり、邪魔しているものは(会員章という名ではあるが、結局は)自己の存在を知らしめるシール。
個人的には、このような状況では、この協会が各バス会社の現場社員/職員や乗客、沿線住民のことを考えているとは思えない。
そう考えると、前のガラス以外の目視に影響がない場所に会員章を貼っている事業者は、安全に対する意識が高いのかと、なんとなく頼もしく感じる。
その1つが、青森県の弘南バス。
ガラスでないボディ部分(左写真)や前ガラスではあるもののその後方寄り(右写真)に貼っている。
さて、秋田県中央部のバス会社では、協会のお達しを忠実に守り、
ガラスの前寄り下に貼っていた。おそらく全車両がこの位置だった。今までは…
ところが、会員章を貼って丸1年経った先月あたりから、変化に気づいた。
秋田駅周辺を20分程うろついて、バスを観察してみた。
いちばん前のガラスだが、最下部でなく、上の方に貼り変えられた車両が何台もあった!
おそらく、秋田市内に3つある営業所のうち、特定の1つの営業所所属の車両だけがそうなっているようだ。(その営業所所属でも、従来通りの位置の車両もある)
ひょっとしたら、その営業所内で、やはり安全上、従来の貼付位置では問題があるとして、貼り直したのかもしれない。
だとすれば、このバス会社にしては融通と気が効いているし、安全運転への意識が感じられ、乗客としては安心できる。
さらに、同じ営業所の何台かは
会員章がない?!
一瞬、バス協会から脱退したのかと思いました…
剥がれたのか剥がしたのか分からないけど、貼らなくていいの?
さらに、秋田市外の営業所所属の車両。
窓の下というか、タイヤの上のボディに貼っている
位置が下すぎるし、塗装の緑色に溶けこんで目立たない。
拡大すると
「日本バス協会」分裂?!
点検時に取り外すフタとボディ本体の境目にまたがって貼っているため、シールが切れている。
貼る時にこうなることに気づかなかったのかねぇ~
協会側は自分の存在感を示そうと、費用をかけて会員章を作って配ったのだろうが、こうした扱いを見ると、現場では邪魔者扱いされてるのかも??
バスに関心のある僕でも、「バスまつり」や「走行中は立たないで」シール、高速道路1000円に反対する申し入れを国へ行ったことくらいしか印象にない同協会だったから、会員章貼付によって、存在感は感じるようにはなった。
でも、各加盟事業者は厳しい経営の中で協会費を捻出してるんだろうし、それには我々乗客の支払う運賃が含まれているはず。バス会社、その社員/職員、そして乗客のためになる活動を、もっともっとしてほしいものだ。
※続きはこちら
※この後、会員章を貼る事業者が減るなど、その存在感は薄れたがいちおう継続。2018年11月からは、背景(外周)を白からグレーに変え、左上に通し番号を振った新しいステッカーに変わった。
この「NBA」は、「National Basketball Association」の略のアメリカのプロバスケットボールリーグではなく、「Nihon Bus Association」で「社団法人日本バス協会」のこと。(「にっぽん」だと思ってたけど「にほん」なんだ)
要するに「NBA」はバス会社の業界団体であり、このステッカーはその加盟各社の車両に貼られる「会員章」。
協会には路線バス事業者はもちろん、小規模な貸切専門の会社、さらには格安ツアーバス事業者でも加入しているところが多いようだ。
昨年秋までは、別デザインで水色のステッカー(会員章とは明示していなかったはず)を、一部の貸切バス会社だけが貼っていたが、新デザインのステッカーは、路線・貸切問わず、ほぼ全会員事業者の全車両に貼っている。
(加盟しているのに貼っていない事業者もごく一部存在する。)
今回取り上げるのは、その会員章の貼付位置。
小型バスや貸切バスなど、構造上スペースに制約があるものもあるので、一般的な中型・大型路線バスで見てみる。
リラックマバスの立川バスのように、中ドアの戸袋など後ろの方に貼っている事業者も多少あるが、経験上やネットで見ると、前ドアの直後に貼る事業者が圧倒的多数。
さらに前に貼る事業者の中では、ボディに貼るところもあるが、下の写真のように窓ガラスの最前部・最下部に貼るところの方が多いようだ。
三重交通も窓ガラスの最前部・最下部(赤丸)
NBAの県単位の組織、石川県バス協会のサイトに、「『会員章』の貼付場所について」という文書(http://www.ishikawabus.jp/information/information11.html)があった。
協会から各加盟事業者宛てのものと思われ、「前ドア後ろの窓付近に貼付願います。」「会員事業者の証ですので極力同一箇所に貼付をお願いします。」とあった。
石川県以外でも同様だろうから、協会側で貼付位置まで指定しており、多くの事業者がそれに従った結果、前のガラスに貼るところが多いようだ。
ただし、「次の場合は指定場所ではなく他の場所(車両左側面に限る)へ貼付できます。」ともあり、
「指定位置に貼付すると目視の妨げになる場合(山岳路線等)。」「会社や組合等の方針で貼付できない場合。」などが挙げられている。
さらに、下の図中に「追加情報」があり「左側面貼付が難しい場合は、後面等でもかまいません。」とある。
最初は、左側じゃないとダメで統一しろと言っていたのが、最後には後ろでもいいってか!
僕はこの会員章を初めて見た時から気になっていたのだが、窓ガラスの最前部・最下部に貼るのってどうなんだろう?
バスを運転したことがないから知らないが、こんな小さなシールでも視界を妨げてしまうと思う。
いちばん前の側面ガラスは、バスの安全運行・事故防止上、重要な左前輪の真上であり、ドアの直後。小路から大通りに出る時、左折時、発車前後など、もっとも神経質になって目視確認しなければならない場所の1つだと思う。
首を動かせばいいかもしれないし、ミラーもある。でも、シールがなければ直視で確認できるものを、シールを貼ったことによって、無駄な労力・神経を運転士に要求し、危険を増やしているのではないだろうか。つまり、シール自体が「死角」を作っていることにならないだろうか。
特に万全の安全運転が要求される営業運転を行う公共交通機関のバスなら、“万万が一”を考えてこんな場所にシールなど貼らない方がいいのではないだろうか。
上記の石川県協会の文書では「指定位置に貼付すると目視の妨げになる場合(山岳路線等)。」などと言っているが、山岳路線なんかより、街中路線の方が「目視の妨げになる」場面が多いかもしれないし、事故につながる可能性だって高いんじゃないの。
しかもそれをさせているのは、事業の1つに「輸送の安全を図るための運動」を掲げる業界団体であり、邪魔しているものは(会員章という名ではあるが、結局は)自己の存在を知らしめるシール。
個人的には、このような状況では、この協会が各バス会社の現場社員/職員や乗客、沿線住民のことを考えているとは思えない。
そう考えると、前のガラス以外の目視に影響がない場所に会員章を貼っている事業者は、安全に対する意識が高いのかと、なんとなく頼もしく感じる。
その1つが、青森県の弘南バス。
ガラスでないボディ部分(左写真)や前ガラスではあるもののその後方寄り(右写真)に貼っている。
さて、秋田県中央部のバス会社では、協会のお達しを忠実に守り、
ガラスの前寄り下に貼っていた。おそらく全車両がこの位置だった。今までは…
ところが、会員章を貼って丸1年経った先月あたりから、変化に気づいた。
秋田駅周辺を20分程うろついて、バスを観察してみた。
いちばん前のガラスだが、最下部でなく、上の方に貼り変えられた車両が何台もあった!
おそらく、秋田市内に3つある営業所のうち、特定の1つの営業所所属の車両だけがそうなっているようだ。(その営業所所属でも、従来通りの位置の車両もある)
ひょっとしたら、その営業所内で、やはり安全上、従来の貼付位置では問題があるとして、貼り直したのかもしれない。
だとすれば、このバス会社にしては融通と気が効いているし、安全運転への意識が感じられ、乗客としては安心できる。
さらに、同じ営業所の何台かは
会員章がない?!
一瞬、バス協会から脱退したのかと思いました…
剥がれたのか剥がしたのか分からないけど、貼らなくていいの?
さらに、秋田市外の営業所所属の車両。
窓の下というか、タイヤの上のボディに貼っている
位置が下すぎるし、塗装の緑色に溶けこんで目立たない。
拡大すると
「日本バス協会」分裂?!
点検時に取り外すフタとボディ本体の境目にまたがって貼っているため、シールが切れている。
貼る時にこうなることに気づかなかったのかねぇ~
協会側は自分の存在感を示そうと、費用をかけて会員章を作って配ったのだろうが、こうした扱いを見ると、現場では邪魔者扱いされてるのかも??
バスに関心のある僕でも、「バスまつり」や「走行中は立たないで」シール、高速道路1000円に反対する申し入れを国へ行ったことくらいしか印象にない同協会だったから、会員章貼付によって、存在感は感じるようにはなった。
でも、各加盟事業者は厳しい経営の中で協会費を捻出してるんだろうし、それには我々乗客の支払う運賃が含まれているはず。バス会社、その社員/職員、そして乗客のためになる活動を、もっともっとしてほしいものだ。
※続きはこちら
※この後、会員章を貼る事業者が減るなど、その存在感は薄れたがいちおう継続。2018年11月からは、背景(外周)を白からグレーに変え、左上に通し番号を振った新しいステッカーに変わった。