たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

藤沢周平著 獄医 立花登 手控え 1 「春秋の檻」

2020年03月04日 09時24分08秒 | 読書記

図書館から借りていた 藤沢周平著 連作短編構成の時代小説 「獄医 立花登 手控え」シリーズの第1段目の作品 「春秋の檻」(講談社)を 読み終えた。

藤沢周平著 獄医 立花登 手控え 1 「春秋の檻」

東北の小藩羽後亀田藩の微禄下士の次男で、藩の医学所で医学を習得した若い医師立花登は、江戸で活躍しているという叔父小牧玄庵に憧れて江戸に出てくるが 叔父の実態は 酒に溺れ、妻の尻に敷かれる流行らない医者だった。
叔父の家に居候する立花登は 叔母松江、従妹おちえからは 口やかましく、下男扱いにこき使われることになり、さらに 叔父がやっていた小伝馬町の獄医の仕事まで押しつけられてしまう。「獄医 立花登 手控え」シリーズは そんな若い医師立花登が 獄医の仕事を通して出会う「訳有り」の囚人達に纏わる様々な事件を 身につけた起倒流の柔術の妙技と、鮮やかな推理で 次々と解決していく捕り物物語であり、青春ドラマでもある。
藤沢周平の時代小説の多くでは、凄惨なまでの剣闘場面がよく描かれているが 「獄医 立花登 手控え」シリーズは、刀や匕首と柔術での立ち合い、捕り物がふんだんに描かれている。
「春秋の檻」「風雪の檻」「愛憎の檻」「人間の檻」、全4巻からなる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「春秋の檻」の主要登場人物

立花登(主人公)・・医者、22歳、幼い頃から柔術鍛錬、鴨居道場では 三羽烏の一人。
小牧玄庵・・登の叔父、同じ羽後亀田藩の母親の実家小牧家の末子、江戸福井町の町医者・獄医、
松江・・叔母、玄庵の女房
おちえ・・従妹、玄庵の娘、16歳、
おきよ・・小牧家の女中
新谷弥助・・登の親友、柔術仲間、22歳、鴨井道場三羽烏の一人、
奥野研次郎・・鴨居道場の師範代、鴨居道場三羽烏の一人。25~26歳、
鴨居左仲・・神田若松町の起倒流鴨居道場の師匠、
園井・・鴨居左仲の孫娘、
おあき・・おちえの遊び友達、あばずれ。
吉川恒朴・・医者、叔父玄庵の飲み友達、
矢作幸伯・・獄医、
土橋桂順・・獄医、
藤吉・・八名川町の岡っ引き、
直蔵・・藤吉の手下、下っ引き、
平塚・・牢屋同心
水野・・牢屋同心、
仁兵衛・・大牢牢名主
おたつ・・女牢牢名主、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「雨上がり」
牢内で腹が痛いと訴える勝蔵を診察する際、は、こっそり、「伊四郎から、分け前の10両をもらって、おみつに渡して欲しい」と頼み込まれる。「やっちまいな」、女が叫ぶ。伊四郎の匕首、喜八、市村半之丞の剣に、手刀、背負い投げ、当身で闘った登。10両を渡しに行くと・・・。なんということか、そこにいたのは・・・。島送りとなった勝蔵を乗せた流人船を見送っているのは誰?

「善人長屋」
牢内で 「はめられた、無実だ、助けてくれ」と訴える吉兵衛の言葉を真に受けた獄医立花登は 通称善人長屋を訪ね、吉兵衛の娘の盲目のおみよに会う。吉兵衛と仲が良かった与五郎源六が おみよの面倒を見ているというのだが・・。登は 「雨上がり」の中で、島送りになった勝蔵の1件で知り合った八名川町の岡っ引き藤吉とその手下直蔵に相談、調べてもらうと、善人長屋の連中の裏の顔が見えてきて、12年前の700両盗難事件との関連が浮かび上がり・・・。

「女牢」
朝の牢見回りの時、登は女牢に顔見知りの女が入牢しているのに気がつく。おしのという女で、夫時次郎を刺殺し、死罪と決まっている。死ぬ前に、昔心魅かれた登に抱かれたいとの願い、牢名主おたつが段取りする。そしておしのは斬首された。登は、時次郎の知り合いの参吉を脅し、おしのを破滅に追い込んだ金貸し業能登屋政右衛門の存在を知ることにり・・・・。
「能登屋の身体は高く宙に舞い、一回転して地に落ちた。ギャッと言ったまま動かなくなった」

「返り花」
牢に妻が差し入れした餅菓子を食べた御家人の小沼庄五郎が死にかけた。登は、庄五郎の妻登和を調べるが 餅菓子は、庄五郎の上役松波佐十郎から渡されたものだった。藤吉の手下直蔵の調べで、登和が昔馴染みの井崎勝之進と出会い茶屋で密会していることが分かる。井崎は松波から金を強請りとろうとして逆に松波に斬られ、登は 松波との激闘で腕に傷を負った。登は 梅の花を見上げながら、登和の不可解な女心を思うのだった。

「落ち葉散る」
「登さん、お願い」・・日頃 「登、登、」と呼び捨てする叔母から手を合わせられ、登は 飲んだくれて帰れなくなった従妹の不良娘おちえを迎えに行った。翌日 小伝馬町の牢に出勤し牢見回りにかかった時 昨日 おちえ迎えの帰りにすれ違った、近所に住んでいる平助が入牢しているのに驚く。錺職人清吉と夫婦約束しているおしんという娘がいる。そのおしんが夜道で襲われる事件が発生。おしんが清吉を刺して入牢してきた。何故?・・・。牢から解き放たれる平助「かわいそうに、牢になんぞに入りやがってよ」、泣きながら遠ざかっていく。

「風の道」
度重なる牢問い(拷問)に必死に耐える傘張り職人鶴吉、しゃべれば殺されると言う。登は 鶴吉から 女房に今の住まいから逃げるよう伝えて欲しいと頼まれ、裏店を訪ねるが・・・。鶴吉は 牢内で殺される。牢内に監視している仲間がいるのか?、大牢の隅の隠居為蔵の告げ口で 浮かび上がってきた男 辰五郎。岡っ引き藤吉の手下直蔵と登は張り込みの末・・、匕首で袖を切られながらも・・。

「牢破り」
叔母に泣きつかれ 従妹の不良娘おちえの遊び相手、薬種屋の息子芳次郎に会い、問い詰めるが 最近は新助という櫛作り職人と付き合っていることが分かる。夕刻 登を待ち伏せしていた二人の男から「おちえを預かっている。大牢の金蔵という男に この鋸を渡してくれ。渡さなければ 娘の命は無い」等と脅迫される。緊迫する日々、登は おちえの遊び仲間、みきおあきを探し出し、懸命におちえ誘拐犯を突き止めようとするが・・・・。
岡っ引き藤吉、その手下直蔵の探索で、ようやく隠れ家発見されるが、相手はごろつき5人。親友の新谷弥助の助勢を得て、藤吉、直蔵の案内で、無住の寺に飛び込み、狂暴に襲いかかる匕首と柔術の闘いの末、おちえを無事保護。登は おちえの頬を張り飛ばす。甘やかされ放題のおちえに いい薬になったのかどうか。
「男たちは笑い、おちえの泣き声だけが、ますます高くなって行く」

(つづく)


花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に

2020年03月04日 06時40分23秒 | 懐かしい小倉百人一首

小倉百人一首で「春」を詠んだ歌 その5

花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせし間に

出典 
古今集(巻二)

歌番号

作者
小野小町(おののこまち)

歌意
桜の花はすっかり衰えてしまったことよ。
むなしくも 春の長雨が降るのを眺めている間に
そしてまた、この身が世の中で暮らしてゆくことについて
いろいろと物思いにふけっていた間に、
(私の容色も衰えてしまったなあ)

注釈
桜の花が色褪せて散ってゆくことを嘆きながら、
自分の容色(女性美)の衰えも嘆いている。
その穏かな嘆きには 
一種の妖艶(魅力的な美)が漂っている。
藤原定家が 「古今集第一の歌なり」と 賛美した歌、
掛詞、縁語、倒置法等、表現技巧にも優れている。

「花」・・「桜の花」だが ここでは 小野小町自身の容貌も意味している。
「ふる」・・長雨が「降る」と 世に「経る」の掛詞。
「いたづらに」・・上の「うつりにけりな」を倒置で修飾し、しかも
下の「ふる」、「ながめせし」を 修飾している。
「ながめ」・・「長雨」と「眺め・詠め(何か眺めながら物思いにふけること)の掛詞。


小野小町
平安時代前期を代表する女流歌人。
「六歌仙」の一人。
「六歌仙」とは 平安時代のすぐれた6人の歌人。
在原業平、僧正遍昭、小野小町、文屋康秀、喜撰法師、大伴黒主、
9世紀中頃、仁明天皇、文徳天皇 両朝に女房として出仕。
絶世の美女と言われた女性で
いろいろな伝説が有るが、真偽不明部分が多いという。


参照・引用
「小倉百人一首」解説本(文英堂)


「へー!、そうなんだ」
今更になって 目から鱗が落ちている爺さんである。

因みに
クレオパトラ、楊貴妃、小野小町 を
一般に 「世界三大美女」等と呼んでいるが
日本以外では 周知されていないらしく
日本で作り上げられたもののようだ。