図書館から借りていた 諸田玲子著 狸穴あいあい坂・「恋かたみ」(集英社文庫)を 読み終えた。先日 読み終えた「狸穴あいあい坂」の続編、「狸穴あいあい坂シリーズ」第2作目の作品である。
諸田玲子著 「恋かたみ・狸穴あいあい坂」
(目次)
「春の雪」、「鬼の宿」、「駆け落ち」、「星の坂」、
「恋の形見」、「お婆さまの猫」、「雪見船」、「盗難騒ぎ」
「春の雪」冒頭の
「春というのに、お江戸は時ならぬ雪景色。
鳥居坂も一本松坂も芋洗坂も長坂もくらやみ坂も そして狸穴坂(まみあなざか)も すっかり雪で覆われている。坂の多い麻布界隈(あざぶかいわい)は 積雪ともなると歩きづらい」・・・から、
今年1月3日に 「港七福神巡り(ウオーキング)」で その周辺を歩いてきたこともあって、江戸時代の地理的情景を想い描いてしまう。
ふとしたことで知り合って、お互いほのかな思いを寄せる 火盗改方与力の娘結寿(ゆず)と 八丁堀同心の妻木道三郎、
旗本と町方同心では 家格が異なり 犬猿の仲でも有り 相容れること寸分も無く、
しかも 18歳の結寿と、10歳も年上で子連れの道三郎、条件的に 結ばれる可能性ゼロの恋物語だが 前作の「春のきざし」では 「二人の恋は 果たしてどうなるのか?」、
若干 読者に気を揉ませ、期待を持たせた。
しかし、結果は やはりそうにはならなかった。
武家の娘の縁組は親が決める時代、本書で 結寿は 御先手組与力小山田家に嫁ぎ 道三郎は 姉や親戚の強い意志で他の女性と結婚する。
温かく迎え入れてくれた嫁ぎ先小山田家で安定した暮らしに入った結寿ではあったが 尚 なかなか道三郎への恋心を断ち切ることが出来ないでいる中、小さな出来事や事件を解決するために奔走、道三郎とも関わり合うことになる。
「恋の形見」では 結寿が狸穴坂で道三郎と初めて出会った日に着ていた納戸色の結城縮の着物を 「ゆすら庵」の山桜桃の木の根元に 「恋の墓」「恋の形見」として 埋める場面がある。成就するはず無い恋を断ち切ろうとするおんな心、それを思いやる百介や小源太、情景が浮かんでくる。
「盗賊騒ぎ」では 結寿が張り込み中の道三郎に狸穴坂で突然に出会うが 賊に気付かぬように 意気の有った芝居をし 賊一味を捕らえるのに一役買った。
結寿や道三郎の爽やかさ、登場人物夫々の思いやり、愛情の深さ、鷹揚さ、「ゆすら庵」の山桜桃(ゆすらうめ)の情景等 季節の移り変わりの美しい描写、前作同様 諸田玲子独特の ほんわか、おっとりした読み心地良さが残る作品だ。
「恋かたみ」には 続編が有る。
「狸穴あいあい坂シリーズ」第3作目 「心がわり」、続いて読むことにした。
(つづく)
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