図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「花野」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第16弾の作品で、「第一話 花野」「第二話 雪の朝」の、連作短編2篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち)等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
「第一話 花野」
▢主な登場人物
亀蔵・おしな、辰蔵(鬼辰)、
和助・おふき
倉島市兵衛・おたね・お菊、市之助
権蔵・おとり、金作、
山田甚五郎、弥次郎、桑田格之進、
福沢宗周・伊与、
佐倉藤十郎(同心)、喜多蔵(岡っ引き)、半次(下っぴき)、
▢あらすじ等
慶光寺に駆け込んできたおしなを追ってやってきた亭主亀蔵が、畳職人が使いこんだ
糸切り包丁を掴み出し、「おめえを殺して俺も死ぬ!」、
一方で、「切られた縁を元に戻してほしい」と駆け込んできたのは、元上総国長谷村名主
倉島市兵衛の下男和助の女房おふき、
珍しい駆け込みに戸惑うお登勢十四郎だったが、どちらも放置出来ない二人、
真相探索に乗り出すと、その背後には、上総国幕領を巡る事件の影がちらつき出し、
楽翁の命を受けて、十四郎と喜多蔵が上総国へ・・・。
楽翁は、十四郎の話を聞き終えると、ふっと笑って
「そなたは、長谷村では、八州さまと呼ばれていたらしいな」
からかうような目で十四郎を見た。
「それは、なりゆきで、勝手に村人たちが・・・」
十四郎は、内心驚きながら、しどろもどろ言い訳を始めると、
「いいのだ。そのお蔭で一気に、なぜ長谷村の名主が島流しになのか分かったのだ」
「第二話 雪の朝」
▢主な登場人物
多七・おみか、
林蔵、伝治、
若松屋利左衛門、丹沢与八郎、
楽翁、深井輝馬、桑名五郎、
古賀小一郎、梅之助、
加島屋宗兵衛(加島恒元)、
▢あらすじ等、
浪人丹沢与八郎に襲われていた呉服問屋加島屋宗兵衛を、通りがかった近藤金吾と千草が
救うところから物語が始まるが、慶光寺に駆け込んできたおみかとその亭主多七の
離縁問題探索していく内、その二人の郷里、越後国秋山藩の藩内事情が浮かび上がってくる。
本篇の終盤には、長らく恋仲だった十四郎とお登勢が、楽翁の命により、急遽、仮祝言を上げ、
晴れて夫婦となるが、それが、あたかも出征兵士の如くで、
「万が一旅先で不測の事態が生じた時、いかが処置されるのでしょうか」
「捨て置きとなる」
楽翁はさらりと言った。
元筆頭老中松平定信・楽翁から、厳しい命を受けて、楽翁の隠密として、越後国秋山藩に
侵入する十四郎。
果たして、生還出来るのであろうか。
なんとなく、平岩弓枝著「御宿かわせみ」の、るいと神林東吾の関係を思い浮かべて
しまったが・・・・・。
(つづく)