新潮文庫 昭和59年
その昔、21:00からのテレビで黒の絨毯という
映画をやっていた。これは、いわゆるアリである。
アリが大量に発生してしまってたまらん、というや
つである。ヒッチコックの鳥というのもあった。こ
れは鳥が大量に発生してしまってあれしてしまうって
いうあれである。やたらにあれが多いんである。
蚊は蚊が大量に発生してしまう、という意表を突いた
作品だ、短いのだが、オチがないのも特徴だ。じゃあ、
とりあえず、終わっちゃうよっていうね。ちょっと
残念と言うか、ワンアイデアで乗り切ってしまった、
というか。
山田の犬は、電車の中の犬について語った、何回か読んだ
ことのあるような話しだった。
ボクが一番気に入ったのは冒頭の一発目、真実の焼きうどん
、ね。デテールにまで気が配られていて、実に洒脱でパンク
だ。狂気というものが描かれていて、実にユカイ、ユカイ、
な作品である。
若いひとに、ぜひ読んでほしいと思う作品集である。ぐわし
……合掌。