「もの食う話」所収 「新青年」昭和8年3月
直木氏の作品は初めて、拝読した。ユーモアがあって、スケール
の大きな人を感じさせる。マンゴー地獄とは、すごい表現だな。
ビン詰めを下に行くにしたがい、うまくなって全部食べてしまう。
六円五十銭。一か月で百九十五円、と計算する直木氏。
一晩、二三切れならいいだろう、ともうひとビン買ってくる。しかし、
子供が食べてしまっている。もうひとビン買ってきて、一日一切れ食
べよう、子供にも一切れしか食うな、と言い渡す。オレンヂを食うが
オレンヂはマンゴーじゃないし、甘酒を飲んでも、これもマンゴー
じゃない、阿片とはこんなものか、と思ってゐる、って、マンゴー
を阿片と同等に考えるのもどうかと思うが、それくらいマンゴーに
夢中になっている。ドリアンも食うと夢中になるのが怖いので、手を
出さないそうだ。
日本でマンゴーが育つなら、僕はマンゴー屋になる、と結んでいる。
でも、マンゴー屋、流行らないと思うよ、チーン。
(読了日 2022年10・21 12:25)