「もの食う話」所収 「銀座 百点」昭和51年6月号
向田邦子はほとんど読んだが、これも読んだのだろうが、記憶には
なかった。当時の風景が甦るようにわかって、ほほえましい。父上が
カルメ焼きを焼いてくれるのだが、兄弟四人そろわないと機嫌が悪い。
母上にたのまれて、しぶしぶ並び、「これは邦子のだ」マジメくさって
言うので、私も仕方なく、「ハイ」などと、なるべく有難そうに返事
する、とある。
邦子さんは生涯結婚していなくて、ガンも末期だったらしいのだが、
飛行機事故で亡くなった。
この小品は、幼少のときの思い出が語られている。文学というのが
こういうところが、すごいなあ、とおもうところである。
(読了日 2022年10・21 12:10)