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女性トイレのないスタジアムで
* * * * * * * *
この作品はイランが舞台でなければ成り立ちません。
2006年のドイツW杯出場をかけたイラン対バーレーンのサッカー戦。
テヘランのスタジアムに集まる人々。
その中に、男装をした1人の少女。
しかし、まもなくその少女は兵士に捕まってしまう。
なんと、イランでは女性はサッカー観戦は禁止されているのです。
スタジアム外に設けられた簡易留置所についてみると、
そこには同じく、捕まえられた少女たちが数人。
・・・なんだか、社会問題を描いた重い作品に思えるでしょう?
でも、これは存外にユーモアが漂う楽しい作品です。
女性がスタジアムに入れない。
私たちからすると、そんなバカなって思いますね。
そんな風に虐げられた女性の状況って、相当ヒサン
・・・のように、実は私は思っていました。
でも、イランだろうとどこだろうと、やっぱり女性は元気なんですよ。
サッカー大好き。
こんな風に、タブーと知っていても何とかもぐりこもうとする。
「そもそも、何で女はスタジアムに入れないのさ」、
と詰め寄る彼女たちに兵士はしどろもどろで、
「女性には聞かせられない汚い言葉が飛び交うから・・・。」
「日本人は女でも入っているじゃない!」といえば、
「日本人はイラン語がわからないからいいんだ・・・」
と、妙に理屈はあっているのがおかしい。
この男性側の反応も、ただ高圧的に女なんか問題外というのではなく、
どこか後ろめたい思いがあるんですよ。
女の子相手に乱暴はできないし、
やっぱり、女性だってサッカーくらい見てもいいだろ、と内心は思っている。
それで、つい少女たちに詰め寄られると弱腰になっちゃうんですね。
トイレに行きたいと言い張る少女を、女性トイレがないものだから
他の男性が近寄らないよう兵士が見張っていたりする。
しかし、彼らも任務であり、
そこでの失敗は本人のみならず家族などへも罰が及ぶ
・・・というのがまた、きびしい・・・。
そんなわけで、元気な少女たちに大の男の兵士たちがなにやら翻弄されてしまう
・・・そんな姿がユーモラスに描かれています。
中東は単に女性蔑視・・・というイメージがあったのですが、
それは意外にも女性を守る意味もあるのがわかりました。
世界的な情勢から言えば、納得できない風習ではあるのですが、
そんな中でも人々はいろいろ折り合いを付けて、生活しているんだなあ
・・・というのが見えた気がします。
2006年/イラン/92分
監督:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ