映画と本の『たんぽぽ館』

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人生に乾杯!

2009年08月15日 | 映画(さ行)
年金生活者をバカにするもんじゃない!

* * * * * * * *

この作品の主人公はエミル81歳、へディ70歳の老夫婦です。
ハンガリーの作品。
冒頭に、この二人の若き日の劇的な出会いのシーンがあります。
・・・そしてあっという間に時が過ぎ、
もう愛情も冷め果てたかのようにみえる、年金生活の二人となる。

おじいさんは元共産党員で運転手を勤め上げました。
それで、共産党が公用で使っていた年代モノの高級車を
それは大事にしている・・・、というハンガリーならではの設定もあります。

さてしかし、世の中は変わって、
年金だけでは生活は苦しく、部屋代も滞り、
とうとうおばあさんの大事なダイヤの指輪を
担保に差し出すことになってしまった。
さすがにおじいさんはそれには気が引けて・・・、
なんと思い立ったのは郵便局の強盗!
それを知ったおばあさんも次には加担して、
二人はお尋ね者となりつつも強盗の旅を続ける・・・。

ユーモラスに描いてありますが、実は深刻ですよね。
日本でも、国民年金だけではとても生活していけそうもなく、
「ハンガリー、おたくもか・・・」と、思わず肩を抱き寄せたくなります。
「年寄りは働くしか能がない」なんて、バカな発言をした人もいますし。
死ぬまで働けということ?
・・・第一若い人だって勤め先がないのに。

まあ、こんな状況なので、
この二人の強盗のニュースは、意外にも世間の人たちの同情を買うわけなのです。
カッコイイ。
無理もない。
良くやった。
強盗された本人ですら、
「あの時は気が動転して怖かったけど、良く考えると、紳士的だった・・・。」
ちくりちくりと、今の社会に苦言を呈して行くこの作品、
なかなかよいですよ。

この二人を追う、もと恋人同士の男女の刑事もまたいい。
刑事もドジで、こんなおじいさんを、なぜか取り逃がしてばかり・・・。
異常に車に詳しい、オタク警官も良かった。
・・・どこにでもこういう人っているんですね。

夫婦寄り添って、世の中の枠からはみ出してやろうじゃないか、
というこの心意気。
ちょっと、あこがれてしまいます。
冒険心は二人を若返らせるし。
まあ、あくまでもフィクションとして、ですが。
夫婦より添って覚醒剤では、全然かっこ悪いですから。

2007年/ハンガリー/107分

監督:ガーボル・ロホニ
出演:エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド



6月公開映画『人生に乾杯!』予告編