映画と本の『たんぽぽ館』

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西の魔女が死んだ

2009年08月21日 | 映画(な行)
魂が肉体を離れて自由になること・・・

           * * * * * * * *

私のお気に入り、梨木香歩原作の映画化です。
学校に行くことが苦痛になってしまった中学生のまい。
しばらく、祖母の家に身を寄せることになりました。
そこは、大自然に囲まれた一軒家。
おばあさんは、イギリス人。
日本人の男性教師と結婚して、まいのお母さんが生まれたのです。
そして、おばあさんの秘密・・・。
それは、おばあさんは魔女の血を引いているということ・・・。

しかしここは、ほうきに乗って空を飛ぶ黒い服を着た魔女が登場したりはしませんので、ご安心を。
ここで言う魔女というのは・・・、
そうですね、自然の中で生活して、
薬草の知識があったり、
人より少し霊感が働いて、先のことが見通せたりする
・・・というそれくらいのものなのですが。

まいも、その魔女の血を引く末裔として、魔女の修行をすることにします。
でも、それは
早起きして、料理をしたり洗濯をしたり、庭仕事をしたり・・・。
つまり、全く日常の営みを積み重ねていくことなのです。
そうして、まいは徐々に生きる力を取り戻していく。
・・・生きていく上ではごく当たり前のことなのに、
学校ではやらないことばかりですよね。
料理は家庭科がありますが・・・、毎日やるわけじゃない。
特に今の子供たちは、家でも全くやらないことばかり。
確かに、こういうことって本当はとても大事なんですけれど。
男女に関わらず。


多感なまいは、人は死んだらどうなるんだろう・・・と、不安になります。
パパは言ったそうな。
「死んだら、それですべてお終い。
まいが死んだって、それでもただ当たりまえに毎日が過ぎていくんだ」
って。
確かにそうかもしれませんが、それではあまりにも虚しくて、怖い。
おばあさんは言うのです。
「それは、魂が肉体を離れて、自由になることなの」と。

魔女というのは生き物の生と死の境界に、
とても近いところにいる人のことなのかも知れないと思いました。
とすればやはりこれは、私たちを取り巻く境界、
「ぐるりのこと」の話なのでしょう。

映画は初夏の瑞々しい緑にあふれた美しい映像で飾られています。
おじいさんが亡くなって、その後のおばあさんの誕生日、
びっしり実をつけた野いちご。
そこにうずくまって泣くおばあさんの姿が印象的。
野いちごのジャムはおいしそうでしたねえ・・・。

2008年/日本/115分

監督:長崎俊一
出演:サチ・パーカー、高橋真悠、りょう、木村祐一

西の魔女が死んだ 特報