ゼロの焦点 カッパ・ノベルス創刊50周年特別版松本 清張光文社このアイテムの詳細を見る |
今年は松本清張生誕100年にして、このカッパ・ノベルス創刊50周年だそうです。
1959年12月、カッパ・ノベルス創刊時に刊行されたものこそ、
この「ゼロの焦点」。
う~ん、それは知らなかったですね。
ミステリファンとしては、このカッパ・ノベルスにはずいぶんお世話になっていますけれど。
そしてこの作品、言うまでもなく現在映画で公開中。
私自身、遠い昔に読んだような気もするのですが、
全然覚えていないので、この機会に読んでみました。
新書で特別定価500円! お得です。
禎子26歳。
36歳鵜原憲一と、縁談により何度か顔を合わせただけで、交際期間もなく結婚。
夫は金沢で仕事をしていたが、この機会に東京に戻ることになった。
新婚一週間。
残った仕事を片付けるために、夫は金沢へ向かう。
これが最後の金沢行きのはずであった。
ところが、予定の日になっても夫は戻らない。
失踪した夫の行方を探るため、禎子は金沢へ向かう。
憲一の兄、宗太郎も弟の身を案じ、金沢に来ていたが、
何と彼は何者かに殺害されてしまう。
禎子はわずかな手がかりを探るうちに、
憲一や義兄になにやら女の影が付きまとっていることを見出す。
北陸の冷たい風景を背景として語られる情感漂う一作ですね。
昭和30年代。
今ではとても考えられない結婚の形ですが、逆に新鮮な感じもします。
こういう夫婦の営みって、なんだかちょっと刺激的だったりして・・・(^^;
結婚一週間では、夫のことは何もわかっていないのも同じです。
禎子は、失踪した夫を探すうちに、ようやく夫のことがわかってくるのですね。
結婚生活さえおぼつかない、頼りなげな禎子が、
次第に女の底力を見せて成長していく姿が見られます。
暗く寒々とした北陸の光景にひとりたたずむ、若き人妻。
ムードありますねえ。
そして、この物語で語られる事件の背景はやはり、この当時ならではのものです。
社会派、松本清張の代表作ですね、やはり。
今なら東京~金沢といっても、そう遠い感じはしませんが、この当時は、遠いですよ。
文中、夜行で金沢を発って、翌朝東京に着く、というような記述がある。
SLですよね、多分。
汽車。
うーん、この懐かしい響き。
今でもご年配の方は、JR利用はつい「汽車で」といってしまいますもんね・・・。
それはともかく、この当時のこの作品は、
今考えるよりももっと旅情に満ちた作品だったのだろうなあ・・・と、思います。
この雰囲気を踏まえつつ、映画がどのように仕上がっているのか、やはり見てみたくなりました。
これって、多分過去にも映画化されているのでしょうね。
モノクロのその当時の作品があったら、それも見たい気がします。
満足度★★★☆☆