映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

第三の男

2009年12月24日 | 映画(た行)
道端にたたずむ男。一瞥も与えず、通り過ぎる女。

        * * * * * * * *

アントン・カラスによるツィターのテーマ曲。
このメロディは、映画を見たことがない人でも、きっとどこかで耳にしたことがあるはず。
曲もさることながら、観覧車のシーンや、ラストの並木道での男女の情景、
どれも名高いものばかり。
まさに不朽の名作です。
私もかなり以前見たことはあるのですが、
そのときでも、もうすっかり往年の名作でした。


有名な、ラストシーン。
墓地に続く並木道です。
男がじっとたたずんでいる。
並木道の向こう側から女がこちらへ向かって歩いてくる。
二人は互いに、憎からず思っていた仲。
しかし、女は男に一瞥も与えず、じっと前だけを見てそのまま歩き続ける。
男は声もかけず、そのままじっとたたずんでいる。
観客は、いつ、どちらから声をかけるのかと、
固唾をのんで見てしまうのですが、
結局、何も起こらないままの幕となるんですね。
いや~、実に印象深いラストなのです。
だから私はそこだけは覚えていたのですが、
ストーリーは実のところ、忘れ果てていました。


さてさて、この作品は1949年、二次大戦終了後間もない頃の作品ですね。
作品としてはリアルタイムの物語で、
米・英・仏・ソ、4カ国に分割統治されていたウィーンが舞台。
各国の人物や言葉が入り乱れ、サスペンスたっぷりです。

アメリカ人作家のホリーは、親友ハリーを頼ってここまで来たのですが、
訪ねてみると、なんとそのハリーはちょうどその日に事故で亡くなったという。
その事故のことを調べるうちに、
事故に立ち会ったという二人のほかに、
謎の「第三の男」の存在が浮かび上がります。
その男とは・・・・・!?

モノクロ作品ですが、その光と影の陰影が、実に効果的に使われています。
暗闇の中で、さっと向かいの家の窓から明かりが漏れ、
そこに「第三の男」の顔が浮かび上がる。
その男の衝撃の正体。
うーん、うまいですね。
そして、それに続く夜の観覧車のシーンがまた、圧巻。
それから、追跡劇となれば、定番の地下下水道。
これぞミステリの醍醐味!

映画ってこんなことができるのですよね。
最近はCGに頼りすぎて、
こうした正当なカメラワークなどの工夫がなさ過ぎるような気がします。
60年前のモノクロ作品、しかし、今でも学ぶべき点が山ほどある・・・。
参りました。

1949年/イギリス/105分
監督:キャロル・リード
出演:ジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・バリ




第三の男 [DVD] FRT-005

ファーストトレーディング

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