映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ROCK YOU!/ロック・ユー!

2009年12月29日 | 映画(ら行)
ロック仕立ての中世青春群像

            * * * * * * * *

この作品、舞台は14世紀。
全くクラシカルな設定ながら、クイーンやデビッド・ボウイの音楽を投入。
現代風にアレンジした青春ドラマとなっています。
これが、別に奇異でもなんでもなく、するりと入ってくる。


馬上槍試合。
映画などでは戦争の場面は良く見かけますが、
ここではあくまでも、「試合」なんです。
中世の騎士、あの、重い甲冑を見につけた騎士が、
馬に乗って長く重い槍を互いにつき合う。
ところがこの試合は、由緒正しいものであって、貴族しか出場資格がない。
この物語の主人公ウィリアム(ヒース・レジャー)は、間違いなくただの平民。
彼が仕えていた貴族が急死し、
急遽インチキで彼が主人の身代わりで出場したら、勝ってしまった。
彼はそこでやる気になったわけです。
訓練をつみ、身分を偽って、多くの大会で優勝を重ねてゆく。

彼を支える友人たち。
彼の心を揺さぶる貴族の乙女。
子供の頃別れたきりの懐かしい父親。
彼の本当の身分を怪しんでばらそうとする、ライバル。

・・・いろいろな要素が、バランスよくきっちりはまっているんです。
そして登場人物1人1人が、いい味を醸している。

まずいきなり素っ裸で登場する、自称作家の男。
なぜ、素っ裸なのかその場では明かされません。
でも、まもなくわかる仕掛けとなっています。
このあたりが心憎い。
ウィリアムにとっては得がたい人材。

また、ウィリアムが一目ぼれしてしまう貴族の女性ジョスリン。
彼女もなかなか一筋縄では行きません。
その名前を知るのも一苦労。
彼女はなんとウィリアムに、「試合に負けろ」というのですよ。
普通のドラマではありえませんよね。
「勝つのはあなたの夢。
でも本当に私を愛しているのなら、
私の願いをかなえて試合に負けることができるはず。」
うーむ、なんと傲慢でわがまま・・・と想わなくもありませんが、
見ているうちに、この炎のような思いの女性が素敵に見えてくるんです。
彼女のみ、時代設定を相当無視したと想われる服装なのも、
彼女をグンと引き立たせています。

教会のステンドグラスをバックに、
ロングで固定した二人の会話のシーンがとても印象深い。

ウィリアムのチームの一員となる鍛冶屋の女職人というのも心憎い。
彼女はウィリアムの時代遅れでポンコツの鎧をみて、
彼女が工夫した軽くて動きやすい鎧を作るのです。

まあ、難をいえば敵役のアダマー伯爵が、
あまりにもわかりやすく嫌なヤツすぎ、
というあたりが、もう少し何とかなればよかったかな?

とにかく、人物1人1人の魅力が、
この試合のお祭りめいたわくわく感をいっそう高めるのに一役買っています。


いやあ、良くできた映画だなあ・・・。
手放しで感心してしまう。
ダンスのシーンも素敵でした。
スローでゆっったり優雅な踊りが、
次第にテンポを増して、現代風のロックのリズムになっていくんですよ。
このあたりのつくりにはうっとりさせられます。

結局は、ありがちのサクセスストーリーなのですが、
ポイントは、ウィリアムは貴族の騎士を詐称したわけですが、
次第に魂において真実の「騎士」に成長してゆく。
ここのところです。
最後に、彼の身分がばれてしまった時に彼が取る行動。
ここに注目してくださいね。
・・・全く気持ちのよいドラマです。

おまけに、エンドクレジット終了後のお遊びシーンあり。
わたくし、DVDだと、いつもはそんな最後まで見ないのですが。
なぜか今回最後まで曲を聞いていたら
突然このシーンが出てきて、面食らいました!

ヒースレジャーの魅力も満載。
・・DVDが欲しくなっちゃったな。

2001年/アメリカ/132分
監督・脚本・製作 ブライアン・ヘルゲランド
出演:ヒース・レジャー、ルーファス・シーウェル、シャニン・ソサモン、ポール・ベタニー、アラン・テュディック


ロック・ユー! コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る