映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「夢見る黄金地球儀」 海堂尊

2009年12月05日 | 本(ミステリ)
夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)
海堂 尊
東京創元社

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「チーム・バチスタの栄光」から始まる、
やはり桜宮市が舞台のストーリーです。
でも、これは少し未来の話だったりする。
医療現場は出てきません。


桜宮市の水族館に鎮座している「黄金地球儀」。
物理学者の夢をあきらめ、家業の町工場を手伝う平介。
そして、8年ぶりに現れた悪友のガラスのジョー。
彼らが、この黄金地球儀の強奪を計画します。

しかし、なんともとんでもない話。
なぜかこの地球儀のセキュリティーを、平介の工場が請け負うことになってしまった。
しかも、これには保険がかけてあって、
もし盗難にあった場合には、平介の工場が倍賞責任を持つ。
つまり、せっかく盗み出したとしても、
その分の補償費を自分で払わなければならない。
・・・そんな馬鹿な! 
それでは盗むだけムダ・・・。
しかし、そこからが面白いところなのですねえ。
どうやってこの四面楚歌の状況から脱出するのか。
ぜひとも、読んで確かめてください。


この状況打破には、実はここの鉄工所で開発された様々なアイテムが役に立ちます。
この工場主にして平介の父親、豪介は、まさしく天才。
平介はこんな父親を尊敬していて、
彼を手伝いために物理学者を目指したのですが、道半ばで断念。
ちょっぴり、ホロリとくる、そんな逸話も混じっているところがミソ。

球体の内空を削り取る『ケズリン』
ジェット水流切断機『ストレートフラッシュ』
ゴキブリを叩き潰す『ゴキブリボコボコ』
その姉妹品『ハエパシパシ』に『シラミプチンプチン』・・・
実際に役に立つかどうかはともかくとして、
これは確かな技術に支えられたものでありまして、
実際にこういう技術があれば日本の未来も明るいのでしょうけどねえ・・・、
などと思ってしまう。
また、この水族館の特筆すべき展示品は深海生物「ボンクラボヤ」に、「
ウスボンヤリボヤ」。
これらのネーミングだけでも、楽しいですよね。

だからといって、下らぬドタバタコン・ゲームかと思えば、
しっかりと押さえるところは押さえ、二転三転して、オドロキの結末。
まさに、文句のつけようのないエンタテイメントです。
また、この海堂作品を読み続けている人には、
なんとも懐かしい出会いがあります!
すっかり転身を図ったある男女。
・・・これだから、目が離せません。

でも、この作品で初めて海堂作品を読むという方でも、全然問題なく楽しめます。
ご心配なく、ご覧ください。

合言葉は"ジハード、ダイハード!"

満足度★★★★★