サヨナライツカ (幻冬舎文庫)辻 仁成幻冬舎このアイテムの詳細を見る |
2010年1月公開予定の映画作品となっていますが、
この本が出たのは2001年、最新作というわけではありません。
やはり映画となれば興味がわきまして、まず先に読んでしまいました。
豊は、理想とする結婚相手に巡り会い、婚約。
結婚式を間近にして、タイに赴任。
ところが、そこで沓子(トウコ)という謎の美女と知り合う。
なぜか沓子の方から強引な接近があり、勢いに負けて関係を持ってしまう豊。
ところがこの二人は思いの外相性がよく、離れがたくなってしまう。
始めは人目を忍んでのデートも、次第におおっぴらになり、
タイ在中の日本人社会で、"好青年"で通っていた豊であったのに、
「婚約者がいながら、別の女性とイチャイチャ・・・」と、
次第に評判も落ちてくる。
言い寄る女性のいいなりにずるずると引きずられ、
しかも、婚約者との関係も絶てないでいる豊・・・
この優柔不断さに、実のところいらついてしまうのです。
う~む、私にとってはイマイチかな・・・と、思い始める。
しかし、結局二人は身を引き裂かれる思いをしながらも別れ、
豊は予定通りの結婚をするんですね。
その後は一切連絡も取らず・・・。
さて、そしていきなり25年の時が流れます。
この物語が生きてくるのは、実はここからだったんです。
切ない思い出の地、タイ、バンコクを豊が訪れる。
思いがけず再会する二人。
25年の歳月を経ても、お互いの思いはあのときのまま・・・。
人を愛する強い思いは、
時の流れなどでは強まりこそすれ薄まることがない・・・。
このあまりにも強くて美しい絆に、心打たれてしまいました・・・。
これはやはり、豊にとっては
妻に対する裏切りをずっと続けていたということではあるのですが・・・、
しかし、他に浮気は一切せず、
ひたすら仕事に打ち込み望みうる最大の出世を勝ち取ってきた、
このことがせめてもの妻に対する償いであったのでしょう。
ここまで貫けば、やはりホンモノなんですね。
すばらしい恋愛小説でした。
通常は精神愛が最後に肉体への愛へ昇華する。
でもこのストーリーはいきなり肉体関係があって
最後は心のつながりだけになっていくのです。
愛の形は様々・・・。
でも結局強いのは心の絆なんですね。
この映画では、辻仁成夫人の中山美穂が沓子役。
12年ぶりの映画主演ということでも話題になっています。
そんなところに興味もあって、やっぱり観てしまいそうだなあ・・・。
満足度★★★★☆