映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

リトル・ランボーズ

2011年08月08日 | 映画(ら行)
粗暴な少年の胸の内と成長



            * * * * * * * *

この作品は、先日見た「ナルニア国物語 第3章アスラン王と魔法の島」に登場した
ユースチス役のウィル・ポールター出演作品ということで興味を持って見ました。
ところが、今作のウィル・ポールターこそが実力の見せ所、
素晴らしいワルガキぶりを発揮しています。
そしてまた、ワルガキというだけでなく、これがなかなか複雑な胸の内があったりして、
ユースチスよりもずっと気に入りました。


主人公の11歳少年ウィルは、大変規律の厳しい教派の家庭の子です。
音楽や映画、TVなどの娯楽は禁止。
冒頭、まるでフェルメールの絵の中のような、
中世を感じさせるウィルの家庭の様子が映し出されます。
学校でもTVを使う授業の時は、教室の外で終わるのを待っている
というくらいに徹底しています。
そんな彼が、教師のいうことを聞かず教室から追い出された少年リー・カーターと出会う。
この彼こそがウィル・ポールターであります。
片や学校の鼻つまみ者。
片やまじめでおとなしい夢見がちの少年。
ウィルは、はじめリーから子分扱いされてしまうのですが・・・。



ウィルはリーの家で、生まれて初めて映画を見るのです。
それが「ランボー」。
ランボーのカッコ良さにすっかり夢中になってしまったウィルは、
リーが短編映画を作ろうとしているのに協力することになります。
ストーリーは、ウィルが「聖書」を装ったノートに書き留めたもの。
時折ウィルの想像のシーンが実写やアニメとなり挿入され、
これがまた楽しい効果を上げているのです。
映画作りを進めるうちに、次第に二人は打ち解け、親友の誓いをするのです。
しかし、そもそも映画を見るのも禁止なのに、
映画作りに参加するなんて・・・。
ウィルは教会をサボってリーと会うだけでも大変なのです。
そしてまた、フランスから留学してきたイカス男子(?)は、どう関わってくるのか。
外では威張っているくせに、兄には全くいいなりのリーの態度は何故?
なかなか先が読めないので、油断なりません。

この作品、主役はウィルですが、
ストーリーを支えているのはリー少年。
最後には泣かされてしまいました・・・。
ウィル・ポールター君はここでの演技が評価されて、
「ナルニア」に抜擢されたわけなんですね。



さて、少年たちの映画制作。
つい最近「SUPER8」の作品でもありました。
少年たちの夢は、なにもサッカーや宇宙だけではない。
こういう夢もまたいいですね。
映画を見たことのないウィル少年は、
ノートの隅っこにパラパラアニメを描いており、
元々素質十分ですしね! 
今、あまりにも高度な技術に支えられすぎた映画の業界、
子供の頃夢見た「映画作り」の原点に返りたい・・・、
そんな映画制作陣の思いが反映されているのかもしれませんね。


今作の原題は「Son of Rambow」。
正しくはRamboですが、少年たちの作った作品名がSon of Rambow というわけです。
しかし、この邦題をリトル・ランボーズとしたことには、なかなかのセンスを感じます。
つまり、少年たちの映画の題名ではなく、
ウィルやリー、少年たちをランボーズと呼んで讃えているわけです。
近頃の味も素っ気もない邦題の中では、上出来の部類なのでは?

リトル・ランボーズ [DVD]
ビル・ミルナー,ウィル・ポールター,エド・ウェストウィック,ジュール・シトリュック,ジェシカ・ハンズ
Happinet(SB)(D)


2007年/イギリス・フランス/94分
監督・脚本:ガース・ジェニングス
出演:ビル・ミルナー、ウィル・ポールター、エド・ウェストウィック、ジュール・シトリュク、ソフィア・ブルック