一応の満足は得られるが・・・

* * * * * * * *
スタジオジブリ作品。
この頃ジブリ作品には、
以前のように“何が何でも見なくては!”という求心力がないように感じます。
このたびも、ジブリ作品とはいえ、監督は宮崎吾朗氏・・・ということで、
見なくてもいいかと思っていたのですが、
まあ、時間の都合がちょうどよかったので拝見した次第。
ジブリ作品でも、これは「耳をすませば」に類するものです。
若い男女のほのかな思いと、瑞々しい生きる力を、
リアルな生活感を絡めて描き出す作品。
ですからこれは、小さなお子さんには向きません。
今作は、1980年に「なかよし」に連載されたものの映画化です。
舞台は1963年横浜。
東京オリンピックが開催される前年にあたります。
戦後の混乱期を脱し、明るい未来を目指して日本全体がエネルギッシュ、
そんな時代でしょうか。
この時代背景が、相当丁寧に書き込まれていまして、
私のような年代のものには、何もかもが懐かしい・・・。
絞り器付きの洗濯機や、マッチで火を付けるガスコンロ。
ガリ版に謄写版。
TVから流れる坂本九ちゃんの「上を向いて歩こう」。
これは、私くらいの年代以上の方には、たまらないと思います。
主人公、高校生の海は、港の見える丘にあるコクリコ荘に住んでいます。
コクリコ荘は以前病院だった建物で、今は若干の下宿人を置いていて、
母の留守中、海が切り盛りしています。
冒頭から大勢の分の朝食の支度のシーン。
うーむ、高校生がこれをしますか。
なんて働き者!! それだけでもう感動してしまうのです。
一度にたくさんの目玉焼きを作るのですが、
一つだけ、ハムをたくさん使っていまして、
それは、食べ盛りの弟の分。
う~ん、芸が細かいっ!
そしてもう一つ、彼女の毎朝の日課は、
今は亡き父に教わった信号旗を揚げること。
海は気づいていませんが、その信号旗に応えるように、
海上のあるタグボートでも信号旗を揚げています。
それは、海と同じ高校の一つ年上の俊が揚げたもの。
彼は新聞部にいますが、
目下の問題は、文化部部室が入っている建物、通称カルチェラタンの取り壊しについて。
学校はそこを取り壊して、新しい建物を建てようとしているのですが、
ボロではあるけれど歴史と風格のあるこの建物を壊すのは反対!と、彼らは思っている。
いつしか海は俊の新聞発行を手伝うようになり、
二人は次第に惹かれあっていきます。
しかし、そこに大きな問題が!
これはもう予告編で堂々と明かされているので、
ネタ晴らししてしまいますが、
どうやら二人は血のつながった兄弟であるらしい・・・。
このことを二人がどうとらえてどう乗り越えようとするのか、
そこが見所となるわけです。
また、おそらく明治時代に立てられたと思われるカルチェラタンの建物の行方と
学園闘争の行方、
いろいろと興味深い部分はありますね。
そうして、そつなく感動のラストへと向かっていき、
一応の満足は得られます。
でもやっぱり、今なんで少女漫画で、昭和で、しかも血の問題なんだか・・・、
あまりピンと来ません。
昭和の人情やレトロを懐かしむ・・・そういうのは、
“3丁目の夕日”で、もうたくさんでは。
今、非常に生きにくいとされる現代を、私たちはどう生きていくのか、
・・・そういう方向のストーリーをのぞむところです。
映画評論家の清水節氏はこんなことを言っています。
「カルチェラタンとはジブリであり、
血をめぐる彷徨は監督自身の自分探し」であると。
カルチェラタンがジブリ・・・というのもなかなかキツイ。
立派ではあるけれど時代遅れ・・・?
あ、そこまで言ってませんか。
ずいぶんな言いようだけれど、ちょっぴり納得できてしまう、鋭いご指摘。
映像的には、カルチェラタンの猥雑雑多で混沌としている様子が見事でした。
「海」の妹が「空」で、
弟が「陸」。
これも楽しい。
作品中にはなんの説明もなかったと思うのですが、
「海」はメルと皆に呼ばれていましたよね。
これはMER・・・つまりフランス語で海。
妹はソランちゃんと呼ばれていませんでしたか?
これは当時「宇宙少年ソラン」というアニメがあって、
そこから来た呼び名と思われるのですが・・・。
解る人しか解らない・・・。
そういうのもちょっと楽しかったりして。
2011年/日本/91分
監督:宮崎吾朗
原作:高橋千鶴・佐山哲郎
企画・脚本:宮崎駿
出演(声):長澤まさみ、岡田准一、竹下景子、石田ゆり子

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スタジオジブリ作品。
この頃ジブリ作品には、
以前のように“何が何でも見なくては!”という求心力がないように感じます。
このたびも、ジブリ作品とはいえ、監督は宮崎吾朗氏・・・ということで、
見なくてもいいかと思っていたのですが、
まあ、時間の都合がちょうどよかったので拝見した次第。
ジブリ作品でも、これは「耳をすませば」に類するものです。
若い男女のほのかな思いと、瑞々しい生きる力を、
リアルな生活感を絡めて描き出す作品。
ですからこれは、小さなお子さんには向きません。
今作は、1980年に「なかよし」に連載されたものの映画化です。
舞台は1963年横浜。
東京オリンピックが開催される前年にあたります。
戦後の混乱期を脱し、明るい未来を目指して日本全体がエネルギッシュ、
そんな時代でしょうか。
この時代背景が、相当丁寧に書き込まれていまして、
私のような年代のものには、何もかもが懐かしい・・・。
絞り器付きの洗濯機や、マッチで火を付けるガスコンロ。
ガリ版に謄写版。
TVから流れる坂本九ちゃんの「上を向いて歩こう」。
これは、私くらいの年代以上の方には、たまらないと思います。
主人公、高校生の海は、港の見える丘にあるコクリコ荘に住んでいます。
コクリコ荘は以前病院だった建物で、今は若干の下宿人を置いていて、
母の留守中、海が切り盛りしています。
冒頭から大勢の分の朝食の支度のシーン。
うーむ、高校生がこれをしますか。
なんて働き者!! それだけでもう感動してしまうのです。
一度にたくさんの目玉焼きを作るのですが、
一つだけ、ハムをたくさん使っていまして、
それは、食べ盛りの弟の分。
う~ん、芸が細かいっ!
そしてもう一つ、彼女の毎朝の日課は、
今は亡き父に教わった信号旗を揚げること。
海は気づいていませんが、その信号旗に応えるように、
海上のあるタグボートでも信号旗を揚げています。
それは、海と同じ高校の一つ年上の俊が揚げたもの。
彼は新聞部にいますが、
目下の問題は、文化部部室が入っている建物、通称カルチェラタンの取り壊しについて。
学校はそこを取り壊して、新しい建物を建てようとしているのですが、
ボロではあるけれど歴史と風格のあるこの建物を壊すのは反対!と、彼らは思っている。
いつしか海は俊の新聞発行を手伝うようになり、
二人は次第に惹かれあっていきます。
しかし、そこに大きな問題が!
これはもう予告編で堂々と明かされているので、
ネタ晴らししてしまいますが、
どうやら二人は血のつながった兄弟であるらしい・・・。
このことを二人がどうとらえてどう乗り越えようとするのか、
そこが見所となるわけです。
また、おそらく明治時代に立てられたと思われるカルチェラタンの建物の行方と
学園闘争の行方、
いろいろと興味深い部分はありますね。
そうして、そつなく感動のラストへと向かっていき、
一応の満足は得られます。
でもやっぱり、今なんで少女漫画で、昭和で、しかも血の問題なんだか・・・、
あまりピンと来ません。
昭和の人情やレトロを懐かしむ・・・そういうのは、
“3丁目の夕日”で、もうたくさんでは。
今、非常に生きにくいとされる現代を、私たちはどう生きていくのか、
・・・そういう方向のストーリーをのぞむところです。
映画評論家の清水節氏はこんなことを言っています。
「カルチェラタンとはジブリであり、
血をめぐる彷徨は監督自身の自分探し」であると。
カルチェラタンがジブリ・・・というのもなかなかキツイ。
立派ではあるけれど時代遅れ・・・?
あ、そこまで言ってませんか。
ずいぶんな言いようだけれど、ちょっぴり納得できてしまう、鋭いご指摘。
映像的には、カルチェラタンの猥雑雑多で混沌としている様子が見事でした。
「海」の妹が「空」で、
弟が「陸」。
これも楽しい。
作品中にはなんの説明もなかったと思うのですが、
「海」はメルと皆に呼ばれていましたよね。
これはMER・・・つまりフランス語で海。
妹はソランちゃんと呼ばれていませんでしたか?
これは当時「宇宙少年ソラン」というアニメがあって、
そこから来た呼び名と思われるのですが・・・。
解る人しか解らない・・・。
そういうのもちょっと楽しかったりして。
2011年/日本/91分
監督:宮崎吾朗
原作:高橋千鶴・佐山哲郎
企画・脚本:宮崎駿
出演(声):長澤まさみ、岡田准一、竹下景子、石田ゆり子