映画と本の『たんぽぽ館』

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復讐捜査線

2011年08月11日 | 映画(は行)
亡くなってなお強まる父と娘の絆



             * * * * * * * *

英国BBC TVシリーズの映画化です。
実のところ、全く眼中になく、見過ごすところでした。
それにもかかわらず見たというのは、
私がよく拝見する渡まち子氏の映画評の中で、
「いかにもB級っぽいこの邦題で損をしているけれど、骨太の良作」
・・・というようなことが書かれていたためです。
まさに、私はこの怪しげな「題名」で、見損なうところでした。
原題は「Edge of Darkness」。
いい題名なんですよね。
もう少しましな邦題を考えて欲しかった・・・。


さて、この作品、主演はなんともお久しぶりのメル・ギブソン。
8年ぶりの映画主演というので、本当にお久しぶり。
彼がボストン警察殺人課のトーマス刑事を演じます。
よれよれのコート姿は、ちょっとコロンボ刑事を思わせますが、
これはそういう推理劇ではなくて、サスペンス・アクション。

ある日、彼の自宅で一人娘エマがいきなり射殺されてしまいます。
本来の標的はトーマスなのでは?ということで、
そちらへ向けた捜査が始まります。
トーマスも犯人を追及していくうちに、
エマが抱えていた秘密に突き当たり、
そこから軍需産業に絡む政治権力の凶悪を暴くという
大きなテーマへと突き進んでいくのです。

娘を亡くしたトーマスの喪失感・・・実に切ないものがあります。
彼女の幼い頃のビデオ。
ふと思い出される彼女のしぐさ。
時折彼に呼びかけているように思われる彼女の声・・・。
こういうことが、命を賭けても社会の巨悪を暴こうとするトーマスの力の源となっているので、
説得力があります。
エマは父親の正義感を受け継いだのでしょうね。
普段はトーマスが忙しくて、なかなか会う時間も取れなかった
というように見受けられるのですが、
でもやはり、父と娘の絆はしっかりとつながっていた。
また、隠蔽工作を図る男の、単に敵役ではない複雑な胸の内が見えたりするのも、
悪くありません。
邦題とは裏腹に、きちんとした大人の作品です。



ところで作品中、日本人ならヒヤリとして人ごととは思えないシーンが多々。
冒頭、エマが吐き気に襲われ、突如体調を崩す場面があったりするのですが、
これは放射能の影響なのです。
今、日本ではなくてはならない線量計。
目にみえない放射能の恐怖。
実に、身につまされます・・・。

2010年/アメリカ・イギリス/116分
監督:マーティン・キャンベル
出演:メル・ギブソン、レイ・ウィンストン、ダニー・ヒューストン、ボヤナ・ノバコビッチ