映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

三年身籠る

2013年09月22日 | 西島秀俊
父親の自覚を身につけるまで



* * * * * * * * * *

えーと、今作の原作・脚本・監督を務める唯野未歩子さんって、
なんだか最近見たことのある名前、と思ったら
この間見た「いたいふたり」のなつさんだね。
そうなんだあ。才能のある方なんだなあ・・・。
ん~、でも本作の主人公は最近何かと話題の中島知子さんだし。
いまさらながら話題性のある作品だよね・・・。
まあ、そういうこと。
彼女についてのおかしな話題がまだなかった時の作品です。
さて、今作は題名がすべてを物語ってるよね。
三年身籠る・・・? 
つまり3年間ずっと妊娠中ってこと? 
あー、京極夏彦にそんなのがあったよねえ。
あ、いやいや、本作はそういうミステリでも怪談でもなくてね、
まあそれは寓話みたいなもので、
とにかく27ヶ月妊娠状態だった若妻とその夫や家族の様子をコミカルに描いているのです。


女系家族というのかな、とにかく女ばかりの家に育った冬子(中島朋子)は妊娠9ヶ月。
ちょっとのんびり屋。
しかし、夫・徹(西島秀俊)は父親になるなどという自覚はまるでなく、
夜毎愛人と遊び歩いている・・・。
そんな夫の浮気を冬子はさすがに気づくのだけれど・・・。
問題はそこから。
子供がいつまでたっても生まれてこない。
妊娠18ヶ月。
徹は愛人にフラレて目が覚めたか? 
超身重の妻を気遣い始める。
しかしこの子は本当に自分の子供なのだろうか?
もしかしたら冬子が以前に付き合っていた男が宇宙人か何かで、
そのせいでこんなことになったのでは・・・?
などと妄想をふくらませたりして。
この子が生まれてこないのは実は自分の浮気のせいではないか・・・と薄々気づいてもいるわけだ。
ところがこの長い妊娠のことが世間で話題になってしまい、
何かと身辺がうるさくなってきた。
二人は人里離れた山中に移り住み・・・
妊娠27ヶ月! 
しっかり浮世離れしてきた徹は、家のことや料理、超々身重の冬子の世話もお手の物。
いつかきっと生まれてくる子供を心待ちにしている。
父親の資格十分!!
いやまあ、そこでも一波乱はあるんだけどね・・・


なんでしょう、つまりこれは男が父親の自覚を身に付けるまで3年もかかるってことなのか。
徹の変わり方がテーマなんだろうと思うね。
でも実のところ、さっさと生まれて実際に手のかかる赤ちゃんを目にしたほうが
よほど早く父親の自覚が芽生えるんじゃないかって気がするけどねえ。
はは、それを言っちゃあ、おしまいだ・・・。
冬子の妹・緑子が面白かったねえ。
彼女も女ばかりの家に育ったせいか、父性に憧れてるわけだ。
それで親子ほど年の離れている男が恋人。
いや、確かに最初はどうかと思ったけど、なかなかこれが“大人”の人物だよね。
うん、冬子と緑子は一見性格がぜんぜん違うように見える。
だけど、男に父性を求めるあたり、二人はそっくりだと彼は言うよね。
この姉妹の家系が女系家族っていうのには、なにか意味があるんだろうか。
はじめの方でさ、彼女たちの間で、
男は缶やビンの蓋を開けるときにしか役に立たないって思われてたよね。
そうそう、笑っちゃった。
確かに子供生むときに男なんて何の役にも立たないわけだけど・・・
いやでも、やっぱり男は必要だ、家族は男女で築くべきものだって、
そう言いたいんじゃないかな・・・。
なるほど。
27ヶ月お腹にいた赤ちゃんは、生まれてすぐに歩けてしまう1歳半、というのはどう?
そりゃいいけどさ・・・、その間ずっとお腹の中というのが辛すぎるよ~。
やっぱり卵で産んで、あとは適当に温めておけば生まれてくるっていうのがいいなあ・・・。
それだと全く親の自覚は芽生えないかもね・・・

三年身籠る [DVD]
唯野未歩子,唯野未歩子
東映ビデオ


「三年身籠る」
2005年/日本/99分
監督・脚本:唯野未歩子
出演:中島知子、西島秀俊、奥田恵梨華、塩見三省、木内みどり
家族再生度★★★☆☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆