青森が舞台の「奇跡の人」
奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫) | |
原田 マハ | |
双葉社 |
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アメリカ留学帰りの去場安のもとに、伊藤博文から手紙が届いた。
「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。
明治二十年、教育係として招かれた安はその少女に出会った。
使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、
れんは強烈な光を放っていた。
彼女に眠っている才能を開花させるため、二人の長い闘いが始まった―。
著者渾身の感動傑作!
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本作は題名でも分かる通り、3重苦のヘレン・ケラーとその教師アン・サリバンの物語「奇跡の人」を、
まるごと舞台を日本の青森に移した物語です。
アメリカ留学帰り、弱視の教師が去場安(さりば あん)、
三重苦の少女が介良れん(けら れん)と、
ネーミングもかなり意識しています。
読みはじめてしばらくは、なぜこんなにも著名なストーリー、しかも実話を、
わざわざ青森を舞台にして書いたのかと疑問が渦巻いたのですが・・・
青森である理由はわかりました。
青森には盲目でも女性がなんとか食べていく道がなくはなかった。
まずは三味線と歌で稼ぐ。
しかしこれはほとんど物乞い同様の扱いです。
そして、イタコ。
死者が乗り移り、何事かを語る、あれです。
そのような地に、れんのような存在があるのには何かしらの意味が感じられる。
そして、ちょうどこの舞台は実際のヘレン・ケラーとアン・サリバンの出来事と
時を同じくしているというのはなかなかよくできています。
始めはただ獣のように、食べて寝て排泄をして・・・
手に負えなかったれんが、言葉を覚えていく
・・・そして、実話と同じく「水」で全てを悟るその瞬間。
感動でした!
ヘレン・ケラーの実話にはなかったれんの友人、もしくは水先案内ともいうべき盲目の少女、
キワの存在が光っています。
はい、確かに感動の傑作。
が、それにしてもなお、
わざわざ現実のストーリーを借りてまで紡ぐストーリーなのかと言う思いを
拭い去ることができませんでしたが・・・。
「奇跡の人」原田マハ 双葉文庫
満足度★★★.5