映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ニュートン・ナイト

2018年02月24日 | 映画(な行)

長い戦いの始まり

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米、南北戦争の時代の実話をもとにしています。
衛生兵のニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は、
戦士した甥の遺体を故郷ミシシッピ州ジョーンズ郡に届けるため、南部軍を脱走しました。
悲惨な戦死者をあまりに多く見てしまったために、
戦争がすっかり嫌になってしまっていたのです。
故郷では南軍が農民から強盗のようにして食糧や物資を奪い取っていて、
その部隊とも衝突。
いずれにしても脱走兵なので、捕まるとマズい立場になってしまいます。
そんな時、沼地で黒人の逃亡奴隷たちと出会い、
そこをアジトとして、同じ脱走兵や近隣の食い詰めた農民たちとも手を組み、
やがて白人・黒人が平等に生きる「自由州」を名乗るようになっていきますが・・・。

この出来事はリンカーン大統領の奴隷解放宣言よりも以前のこと。
いつの時代にも、リベラルな心の持ち主はいるものですね。
ニュートン自身、特別に「優しい」人物というわけでもないのです。
自分たちの群れのためには、敵と闘うことは当然、
これもまた一つの戦争となってしまうわけですが。
彼が南軍を嫌ったのは、ただ
「綿花で儲けている金持ちのために、貧乏人が戦争で命を落とし奴隷が虐げられている」
から、なのです。
自身が信じるもののためには闘い続ける、
そういう強い信念の男の物語。



さてところが、南北戦争が終結し、奴隷解放宣言が出されてもなお、
彼の闘いは終わらない。
奴隷ではなく「年季奉公」のような形で、やはり黒人は白人に支配され続けるし、
黒人が選挙権を得てもそれに反感を抱くKKK団に狙われ、
投票に行くにも命がけ。

さて、このようなストーリーの合間に、
時を100年以上下った時代のある裁判の様子が表されます。
ニュートン・ナイトの数代後の男性が、
「黒人の血が混じっている」が故に、白人女性との結婚が無効である
と、言い渡されているのです。
始めのうちこのシーンがなんだか唐突に思えて戸惑ってしまったのですが、
次第に深い嘆息と共に見るようになりました。
つまりこの100年の長きに渡っても、
ニュートン・ナイトの闘いはまだ終わっていなかった、ということなのです。
根深い差別と迫害の物語・・・。



アメリカで公民権法が成立したのが1975年ですから、
奴隷解放宣言から本当に100年以上なんですね・・・。
アメリカの歴史を知る、これも意義深い作品の一つです。



ニュートン・ナイト/自由の旗をかかげた男 [DVD]
マシュー・マコノヒー,ググ・ンバータ=ロー,マハーシャラ・アリ,ケリー・ラッセル
TCエンタテインメント



<J-COMオンデマンドにて>
「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」
2016年/アメリカ/140分
監督:ゲイリー・ロマ
出演:マシュー・マコノヒー、ググ・バサ=ロー、マハーシャラ・アリ、ケリー・ラッセル
歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆