何気ない日常が崩れ去る時
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いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫) |
西條 奈加 | |
東京創元社 |
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中学三年生の滝本望は祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。
芸者時代の名前でお蔦さんと呼ばれる祖母は、
粋で気が強く、ご近所衆から頼られる人気者だ。
後輩の有斗が望の幼なじみとともに滝本家へ遊びに訪れた夜、
息子ひとり残して有斗の家族は姿を消していた―。
神楽坂で起きた事件にお蔦さんが立ち上がる!
粋と人情、望が作る美味しい料理が堪能できるシリーズ第二弾。
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西條奈加さんの「神楽坂」シリーズ第二弾。
元芸者の祖母・お蔦さんと暮らしている中学三年・望(のぞむ)の
日々を描く日常の謎系ミステリ・・・。
ところが本作、日常の謎ではなくて実際に犯罪がらみ。
しかも短編の連作形式ではなくて、一冊まるごとの長編となっているので、
読み応えがあります。
望の後輩・有斗は、明るく無邪気なサッカー少年。
その彼が、ある日帰宅すると、家には両親も姉もいなくなっていて、
居間には大きな血溜まりが・・・。
他に身寄りのない有斗は、とりあえずお蔦さんの家で望とともに暮らすことにします。
そもそもその血溜まりは誰のものなのか?
家族の誰かが怪我をしたのか?
家族のものではないとしたら、一体誰のもの?
両親の不和や借金のことが明るみに出るに連れ、
有斗を取り巻く世間の様相も変わっていきます。
望とお蔦さんは有斗を守るために、両親の行方や事の次第を推理していきますが・・・。
何気なく繰り返されて、それが当たり前と思っている日常。
それがある日突然消え去ってしまうとしたら・・・。
そんな怖さが身にしみて感じられる一作です。
前回同様、望やお蔦さんを取り巻く町内の人々や友人たちの、
温かな心からの応援・手助けがなんとも心地よい。
キレイ事ではありますが、
何処かにこんな風に損得抜きで協力し合える関係があると信じたい気になります。
カード・ローンのリボルビング機能とか
キャッシングのオソロシイ仕組みも勉強になります。
街金ではなく、立派な大手のカード会社で行われていることなので、
気をつけなければいけません。
図書館蔵書にて(単行本)
「いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記」西條奈加 東京創元社
満足度★★★.5