時代小説+ミステリの魅力
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なぞとき 〈捕物〉時代小説傑作選 (PHP文芸文庫) |
細谷 正充 | |
PHP研究所 |
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棒手振りの魚屋に、鰹を千両で買いたいという奇妙な申し出があり…(「鰹千両」)、
幕府直轄の御薬園で働く真葛は、薬種屋から消えた女中の行方を探ってほしいと頼まれるが…(「人待ちの冬」)、
商家の妾が主夫婦の息子を柏餅で毒殺した疑いをかけられるが、料理人の季蔵は独自の捜査を進め…(「五月菓子」)など、
"捕物"を題材とした時代小説ミステリー。
話題の女性作家陣の作品が一冊で楽しめるアンソロジー。
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時代小説のアンソロジー、テーマは「なぞとき(捕物)」、
しかもすべて女性作家ということで、興味を惹かれました。
同じPHP文芸文庫で、先に「あやかし」と「なさけ」というのが出ているのですが、
ミステリ好きの私としてはやはりこの本。
収録作品は・・・
「五月菓子」和田はつ子
「煙に巻く」梶よう子
「六花の涼」浮穴みみ
「人待ちの冬」澤田瞳子
「うき世小町」中島要
「鰹千両」宮部みゆき
私にとって馴染みのある方、ない方、いろいろですが、
時代小説の初心者としては、様々な方に触れられるのはウレシイ。
時代小説のミステリは、当然ながら指紋とか遺体解剖などの科学捜査はありません。
時計もないので、厳密なアリバイものも無理。
このようないろいろな制約の中で繰り広げられる推理。
そこがまた魅力です。
巻頭の「五月菓子」は、皆で同時に食べたカステラで、
一人の子供が急に苦しみ亡くなったという事件が語られます。
その真相は、多分に今様かもしれません。
巻末の「鰹千両」。
宮部みゆきさんの時代小説ではお馴染みの茂七親分登場。
ある商家が鰹を千両で買うと申し出て、戸惑ってしまう魚屋・・・。
う~ん、さすがの宮部みゆき作品。
引き込まれて、楽しませてもらいました。
奇しくも、本巻で2作に登場する「双子」の話。
江戸の昔は、双子は「畜生腹」と言われて嫌われた・・・
という背景からのストーリーですね。
これもまた興味深い。
「なぞとき (捕物)時代小説傑作選」和田はつ子他 PHP文芸文庫
満足度★★★★☆