映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

春琴抄(1976)

2018年05月14日 | 映画(さ行)

マゾヒズム・・・

 

* * * * * * * * * *

山口百恵文芸シリーズ。
明治初期の大阪。
明治の世ではあるけれど、まだまだ人々は封建的。
老舗薬問屋の次女・お琴(山口百恵)は子供の頃に失明。
以後一心に琴の修行に励んできました。
奉公人の佐助(三浦友和)は、お琴の身の回りの世話を任され、
お琴の教えるままに三味線の稽古をするようになります。


ちょっとびっくりするんだけれど、ここでのお琴はかなり高飛車の上から目線。
いや上から目線ってさ、家の使用人に対してのことだからそれが当然の訳だね。
気位が高くて、目が見えなければ人を使うのが当たり前。
まあ、いばるだけあって、琴の腕は確かで、師匠があとを継がせたいと思うほどなんで・・・。
でも今までのシリーズを見てきたので、百恵ちゃんのこの変わりようにはしばらく馴染めなかったなあ・・・。
大抵は貧乏で気持ちが優しくて、ひたすら男に尽くすって感じだったもんね。
だよねー。まあだからこそ、全く別のタイプの話をもってきたのかもしれない。
それでね、佐助はしかしそんなお嬢様に憧れ、近づきたいと思い、
始めは誰にも内緒で夜な夜な三味線の練習をしていたりしたんだね・・・。
いじましいわあ・・・。
やがてお琴は師匠がなくなったのを期に、春琴として琴の師匠となり、佐助と共に新居に移り住みます。
しかし変わらずあくまでも主人と奉公人。
さて、しかしここに春琴に横恋慕してくるやつが登場。
春琴目当てに琴を習いに来ている美濃屋(津川雅彦)。
しかし見事に振られるわけだけれど、その腹いせに春琴の顔半分に大やけどを追わせてしまうんだね。
そして春琴は佐助に「この顔を絶対に見ないで」と命じる・・・。
みにくくやけどを負った顔を、佐助に見られたくないという女心・・・。
まあ、もちろん彼女なりに佐助に思いを寄せていたわけだからね・・・
でも、自分の立場として、同情を買いたくないというプライドもあったんだろう。
それをまた、まっすぐに受け止めちゃうんですよ、この佐助が。
嫌な予感がしたんだけれど、ホント、正視に耐えられないシーンになります・・・。
究極のマゾヒズムだよこれ~。
そこまでやるか・・・?
うーん、好きにはなれない作品だった、私には。
谷崎潤一郎だねえ・・・。


けど、一つ謎のことがあってさ。
お琴は父親のしれない赤ん坊を産み落とすんだよね。
当時私生児なんてあまりにも外聞が悪いので、
こっそり生んだ子どもはすぐにどこぞにもらわれていった・・・。
お琴の家族は佐助の子どもだろうと思ったんだよね。むしろそれならそれでかまわない、と。
でも当然私達は知っているけれど、佐助とお琴にははじめから最後までそういう関係はなかったわけ。
じゃ、一体誰の子ども???
本作中にはヒントも何もなかったよねえ・・・。
お琴が盲目なのをいいことに誰ともしれないヤツに乱暴されたとか・・・?
そんな感じかもしれない・・・。
でもこのエピソードの意味は何なんだろう。
あまりにも唐突で関連性がないようにも思えるけれど・・・。
うーん思うに、最後まで肉体関係がなかった2人なんだけど、
それは春琴の処女としての潔癖性からそうなったわけではない、と言うことをいいたかったのかもしれない。
好きな相手に決して許さない・・・というのは、これもまたある意味マゾヒズムだよね。


えーと「春琴抄」は2008年にも映画化されていて、主演が斎藤工と長澤奈央。
ひゃー、斎藤工には非常に心誘われるのだけれど、でもこのストーリーはもう二度と見たくないわあ・・・。
確かに・・・。


えーと、山口百恵文芸シリーズはこの後にもまだあるのですがWOWOWの特集がここまでだったので、
私たちが見るのもここまでにします。
というか、やっと終わってホッとした~。
なんだか見るのが苦痛になってきていたもんね・・・。
まあそれにしてもこんなふうに何度も何度も命がけの恋を演じれば、
いつしか本気になってしまうのは当然のように思えるね。
そだねー。
それこそほら、何度も生まれ変わってまためぐりあう、運命の恋人みたいな感じ。
まあ、百恵ちゃんにとっては確かに幸いな出会いだった・・・のかな?


春琴抄 [DVD]
西河克己,堀威夫,笹井英男,衣笠貞之助
ホリプロ

<WOWOW視聴にて>
「春琴抄」
1976年/日本/97分
監督:西河克己
原作:谷崎潤一郎
出演:山口百恵、三浦友和、津川雅彦
マゾヒズム度★★★★★
満足度★★☆☆☆



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