映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

シャニダールの花

2014年12月02日 | 映画(さ行)
静かに清らかに美しく・・・生きられますか?



* * * * * * * * * *

人の胸に花が咲く・・・寓話的・幻想的な作品です。
「シャニダール研究所」。
そこでは特定の女性の胸に花を植え付け、成長させます。
その花が咲くと新薬開発のために億単位で取引がなされるのです。
その花の成長をケアするのが植物学者・大瀧(綾野剛)。
そこへ新任のセラピスト美月(黒木華)が来たところから、ストーリーは始まります。




チリ一つなく清潔に保たれた施設内で、ゆったりと時が進む。

しかし、花を植え付けられた少女たちは
何かしら精神の変調があるようでもある。
次第に心を寄せていく大瀧と美月ですが、
実は満開の花を切除した女性たちがみな、
命を落としてしまっていることを二人はまだ知らない・・・・。



生命の根源にも触れるような、静かで奥深い作品。
シャニダールというのは、
イラクのシャニダール遺跡で、
埋葬された骨と一緒に花の化石が発見されたというのです。
野蛮だと思われていたネアンデルタール人に、
死者を悼み花を捧げる“人間”の心の萌芽があった、
という説があるのだとか。
それにちなんだ名前ですね。
本作中の“花”の生育は
多分に提供者のメンタルに影響するようで・・・。

争いもなくただひっそりと花を咲かせ種を実らせ・・・
実はそのように生きるほうが幸せなのではないかと・・・
慌ただしく、嫌な事件や紛争の絶えない世の中を見ると、
時にそんな気持ちにもなりますね・・・。



登場人物みな若く、清潔感・透明感にあふれていましたが、
中でただ一人ここの研究所長(古館寛治)が
清濁合わせ持つ、最も人間味を感じさせる人物で、
存在感があふれていました。
静かで、清らかで、美しい。
やはりそれだけでは「人間」味には、欠けるようで・・・。



「シャニダールの花」
2012年/日本/104分
監督:石井岳龍
脚本:じんのひろあき
出演:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、伊藤歩、古館寛治

幻想度★★★★☆
満足度★★★☆☆


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