映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「砂漠」 伊坂幸太郎

2009年11月11日 | 本(その他)
砂漠 (Jノベル・コレクション)
伊坂 幸太郎
実業之日本社

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5人の学生たちの織り成すストーリー。
ここで「砂漠」とは、卒業後に彼らが乗り出す「一般社会」を言っています。
そこが砂漠とすれば、
学生時代というのは、
利害関係のない純粋な好意から生まれる交友関係のオアシス。
そのオアシスで起こる、彼らの冒険譚をどうぞご賞味ください。


いつも冷静。他の学生たちのバカ騒ぎには加わらず、
傍から眺めるタイプ。北村。
彼が、このストーリーの語り手です。

女好きの鳥井。彼はこの物語ではちょっと過酷な運命を背負います。
しかしそのことで余計に深まる皆の絆。
そして、一つの大事な愛に気づく。

おとなしげで、いつもにこにこ。
陽だまりのような雰囲気を漂わせる、南。
彼女には、秘密の特技が・・・。

超美人の東堂。しかし、いつもむっつり。
押し寄せる男子はみな撃沈。
彼女がひそかに思いを寄せる相手とは・・・?

自己のこだわりにとても忠実な西嶋。
しかし、彼の熱いこだわりをたいていの人は無視。
でもなぜか、この仲間たちは彼を気に入ってしまう。


というわけで、東西南北
(いえ、ここでは「東南西北」と言うべきでしょうか)
+鳥 というわかりやすい組み合わせの5人組。
で、麻雀のシーンが多いです。
私は全然ワカリマセン。
・・・でも、わからなくても特に問題はないみたいです。
わかっていれば余計楽しめそうですが。

彼らの交友の様子は、いつもの伊坂ワールド。
軽妙洒脱のセリフの数々に、にやりとさせられます。
そんな彼らが事件に巻き込まれてゆくのですが・・・・
4年間が事件の進行と絡んで過ぎていきます。
そして彼らの友情には愛情も混じり始めて・・・。
そんなところも楽しい。
5人だと、ペアが2組できたら1人余ってしまいます。
でも、ご心配なく。
社会人の鳩麦さんという素敵な女性が加わります。
ハトムギさんか・・・。
なんだかアオマメさんを思い出してしまった。
(全く関係ありませんけど。)

彼らなら、このオアシスを抜け、「砂漠」に放り出されても、
何とかやっていくに違いありません。
心の底に、水脈が通っているから。

「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」
この名言を肝に銘じましょう。
サン・テグジュペリの本の中の言葉だそうです。

この作品の友人関係は、
「ゴールデン・スランバー」の友人関係につながりますね。
愛情よりも友情の方が得難いのかもしれない・・・。

満足度★★★★★

パイレーツ・ロック

2009年11月10日 | 映画(は行)
ロック魂に怖いものなし

* * * * * * * *

1966年、イギリス。
ビートルズやローリング・ストーンズ、ブリティッシュ・ロックの全盛期。
にもかかわらず、当のイギリスでは、民法の放送局はなく、
国営放送BBCラジオではロックの放送は一日45分に制限されていた。

今時の若い方には想像もつかないかもしれませんが、
当時日本でも、HNKにグループサウンズが出られなかったり・・・、
長髪もダメ、ロックなんて騒々しくて下品。
そんな時代でした・・・。
だからこそロックは、今でも反骨の象徴であるわけなんですよね。

さて、こんなとき、海上に停泊した船から24時間ロックを流し続け、
人々に熱狂的に支持されたラジオ局があった。
それが「海賊ラジオ局」。
この船内のポップス&ロックに情熱を捧げる8人のDJと
その周囲の人々の物語です。

高校を退学になったカールは、
母親にこの船に乗るようにといわれてやってきた。
船内の変人たちの狂騒的な日々に戸惑いながらも、
だんだんここの人たちが好きになっていくカール。
周りのオジサンたちの狂態に比べ、なんてウブでまっすぐなこと・・・。
そして、彼が生まれてこの方一度も逢ったことがない父親が、
どうやらこの船にいるらしい・・・。
この映画は彼の青春ストーリーも兼ねているところがミソです。

英国政府はこの海賊放送が気に入らなくてたまらない。
あの手この手で、何とかこの局をつぶそうと躍起。
さあ、彼らは持ちこたえることができるのか・・・。


60年代の懐かしい曲の数々。
私には耳に馴染んだ曲ばかりでした・・・。
音楽への愛、そして、束縛されない自由な心。
ユーモアたっぷり、とても楽しい作品です。

二人のDJの意地の張り合い、対決シーンが見ものです。
高所恐怖症にはつらい・・・。
けんかばかりしているけれど、芯のところの心は一つ。
ここはほろりとさせられて・・・。

そして最後には、なんと“タイタニック”ばりのスペクタクルに突入!
怖いものなしのロック魂を、じっくりご覧ください。


2009年/イギリス/135分
監督:リチャード・カーティス
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、ビル・ナイ、リス・エバンス、トム・スターリッジ、



パイレーツ・ロック 【予告編】



「最後の恋ーつまり自分史上最高の恋。」 阿川佐和子ほか 

2009年11月09日 | 本(恋愛)
最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)
阿川 佐和子,沢村 凛,三浦 しをん,柴田 よしき,乃南 アサ,谷村 志穂,角田 光代,松尾 由美
新潮社

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アンソロジーです。
最後の恋、つまり「自分史上最高の恋」をテーマとした短篇作品集。
著者は阿川佐和子、角田光代、沢村凛、柴田よしき、
谷村志穂、乃南アサ、松尾由美、三浦しをんの8人。
この豪華さ、これで面白くないはずがありません。

そこで、さぞや濃密な愛の物語化と思ったのですが・・・


冒頭は、三浦しをん「春太の毎日」
1人暮らしの麻子の家にころがりこんだ春太。
ところが、麻子は春太がいるにもかかわらず、
他の男を連れ込んで、いちゃいちゃしたりする。
何、これ。
相当飛んでる自由な発想の女の子のストーリー???
なんか、三浦しをんらしくない
・・・と怪訝に思いながら読み進むうちに、見えてくる真相。
あ、なーんだ!そういうことか。
冒頭から、変化球でしたね。
しかし、これはいい意味で予想を裏切りました。
風変わりではあるけれど、すごくいい話なんですよ。


次の谷村志穂「ヒトリシズカ」。
瑞江は、いつも忙しくてなかなか会えない彼との逢瀬を楽しみにしている。
そろそろ、結婚に踏み切りたいのだけれど・・・。
おっと、マサカと思いきや、これも意外な落ち。

この本はこんなくせ球ばかりですか?
それも楽しくていいけど・・・、と思いましたが、
その後は普通に、恋愛小説になっていきますので、ご安心を。
何しろ、始めの一作がすごいインパクトだったので・・・。


それぞれの持ち味で、読ませるストーリーばかりです。
さすが「最後の恋」ということで、
甘すぎるハッピーエンドは無しなんですが。

楽しい一冊でした。

満足度 ★★★★☆

「天才柳沢教授の生活 28」 山下和美 

2009年11月08日 | コミックス
天才柳沢教授の生活 28 (モーニングKC)
山下 和美
講談社

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相変わらず賑やかな柳沢教授の身辺。

冒頭の一話「コンゲーム」が傑作です。
オレオレ詐欺の話が出てくるのですが、
まず、ヒロミツくんが騙されやすい! 
パンクファッション、強面の彼なのですが、実は優しくてお人よし。
そういうギャップが実にいいのですよね。
かと思えば、今度はお母さんがまた、簡単に騙される。
「私に限って一生そんなことはない思ってたのに・・・
オレオレ詐欺の相手は「オレオレ」って言うもんだとばっかり・・・
せめて、オレオレってちゃんと言ってくれれば・・・」
笑ってしまいますね。
教授だったらどうでしょう。
きっと相手の話の矛盾点をしっかりついて、逆に質問するんでしょうね。
詐欺師が勝てるわけがありません。


また、「月と機関車」では、もう1人の孫、まもるくん登場。
まもるくんは、ちょっと頭のねじが他の子よりゆるい。
やや心配な子なのですが、
教授の彼に向けるまなざしは、冷静であり温かい。
幼稚園児でありながら、九九を覚えてしまう一生懸命の華子とは正反対。
でも、まもるの持つ人にはないひらめき、発想には
さすがの教授も感動してしまう。
教授は言うのです。

「華子のように、ひたすらレールをばく進する機関車のような人たちは、
われわれを引っ張っていく。
しかしそういう人たちは、
レールがどこかで途切れたり何かとぶつかってしまったりした時は、
そこで止まってしまう。
まもるのような人は レールの上を走るのは苦手でも
レールが暗闇で途切れたとき、
あざやかに答えを照らし出す力を持っているのかもしれません・・・」

深いですねー。


それから「ローリングパパ」では、
なんと5年ごとに教授をたずねて、30万円を借りてゆく男、登場。
お母さんに言わせれば、「騙し取ってゆく」のです。
もちろんお金は戻りません。
なんでも、「ローリングママ」という機械を開発中で、
なんとしてもその資金が必要だという。
嘘と知ってか知らずか、いつも30万円を差し出す教授。
さて、またその5年目が来て、やってきた男に、今度は突然教授が激怒。
そのわけは・・・?
ぜひ読んで確かめてくださいね。


どの話も、面白くて、オススメの一巻だと思います。

満足度★★★★☆

アメリカンパスタイム/俺たちの星条旗

2009年11月06日 | 映画(あ行)
アメリカンパスタイム 俺たちの星条旗 [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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日系人強制収容所にて

           * * * * * * * *

第二次世界大戦下アメリカが舞台です。
先ごろ3ヶ月連続発売で読んだ「栄光なき凱旋」と同様、
日系人の強制収容所について描かれています。


ロザンゼルスに住んでいたノムラ一家。
父カズ(中村雅俊)は少年時代にアメリカにやってきて成長し、
エミ(ジュディ・オング)と結婚。
長男レイン、次男ライルは、アメリカ生まれのアメリカ育ちで日本を知らない。
この4人家族は比較的豊かな生活を営んでいたのですが、
突然日米が開戦。
大急ぎで家財を二束三文で売り払い、
住み慣れた地を追い立てられて、ユタ州の強制収容所に収容されてしまう。
長男レインは、自らアメリカ人であることを証明するために、
米軍に志願します。
こういうあたりは「栄光なき凱旋」と同じですね。
そうした日系人のみで構成された442部隊がヨーロッパの激戦地に送られ、
多大な犠牲者を出しながらも、目覚しい活躍を遂げる。
この作品ではそこはあまり詳しい描写はありません。

メインとなるのは弟ライルの方で、
彼は戦争には行かず、収容所に残っています。
彼が得意なのはジャズのサックスと野球。
大学へ進学もしたのに、ダメになってしまい、やる気を失っています。
そんな中で、収容所の子供達の音楽教師として来ていたケイティと恋仲に。
そのケイティの父親ビリーというのは、この収容所の看守でもあります。
戦時下であり、白人と日本人の恋・・・これはご法度。
父親が許すはずもありません。
そんなあるとき、収容所の野球チームと、
看守ビリーの所属する野球チームが試合をすることになり・・・・。

野球というテーマを中心にしながら、
戦争が生んだ日系人とアメリカ人の軋轢が、うまく描写されています。
日系人への差別の中で生き抜いた人々には、敬意を表したいと思います。
これは過去の話で、今とは関係ない・・・と思いきや、
こんな話が「ミリキタニの猫」へとつながっていくわけですよね。


強制収容所にいる反骨精神あふれる老人がナイスです。
彼は酒を密造し、賭場を開く。
時には英語は話せないととぼけて、米兵を困惑させる。
ライルにとってはよき師。
この人の存在がなければ、この映画は全然つまらなくなっていたでしょう。

ところでこの兄弟、よく似ていて、
どっちがどっちだかよくわからない・・・。
日本人の私がそう思うのだから、
アメリカの人なら全くわからなかったでしょうね・・・。
ここも、日本の俳優を使ってもらいたかった・・・。

2007年/アメリカ/107分
監督:デズモンド・ナカノ
出演:中村雅俊、ジュディ・オング、ゲイリー・コール、アーロン・ヨー





「ヴィヨンの妻」 太宰治

2009年11月05日 | 本(その他)
ヴィヨンの妻 (新潮文庫)
太宰 治
新潮社

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実はこの作品、未読だったのですが、
このたび映画を見る前に予習のつもりで読みました。
短編集で、「ヴィヨンの妻」は、その中の一篇なので、
すぐに読めてしまいます。
そして、始めからこの妻、佐知を松たか子が演じると知っていたので、
読みながら私の中では松たか子がセリフをしゃべっていました。
そのため実に明確なイメージがうかびまして、はまりました。
映画では、原作のセリフを極力そのまま生かしていることが良くわかります。

映画と同じく、冒頭、夜中に帰ってきた大谷を追って、
居酒屋の主人とおかみさんが、お金を返せと乗り込んでくるシーンから始まります。
さっさと逃げてしまう大谷。
取り残された3人。
佐知が事情を聞いて、思わず吹き出してしまうところがすごいですよね。
ショックで泣くとか、怒るとか、呆然とする・・・ではなくて、
笑うというところが、彼女の磊落な性格を現しています。
変に深刻にならない。
どうしようもない男を丸ごと受け入れてしまう懐の深さ。
しなやかな強さ。
この短篇の魅力は、佐知の魅力そのものといってよいのではないでしょうか。
このストーリーは映画ほど長くはなく、
あの映画の半分ほどのところまでで終わっています。

ここの最後のセリフが
「人でもいいじゃないの。
私たちは、生きていてさえいればいいのよ」

そうなんですよ。
どんなにみっともなくたって、生きてさえいればいいのに。
このセリフは、太宰があえて自分に言い聞かせたかったのかもしれませんね。
どんどんネガティブに落ち込んでゆく自分と対照的存在として、
こんな人物を登場させたのかも知れません。


この本の短篇は、昭和21年、太宰が疎開先から東京へ戻ってきてから
昭和23年に亡くなるまでの間に書かれた8編が収められています。
発表順に並べてみると、はじめのうちは明るいトーンなのですが、
次第に暗くなってきて、
やがて彼の死の予感を告げるかのような雰囲気になってくるのがわかります。

巻末の「桜桃」。
「生きるという事は、たいへんな事だ。
あちらこちらから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。」
・・・などとつぶやきつつ、
妻と三人の子をほったらかしに、ふらりと家を出て飲みに行ってしまう夫。
まさに、当時の太宰はそんな風だったのでしょうね。

なにしろ、まともな『文学』とはあまり縁のなかった私ですが、
もっと太宰を読んでみたくなりました。
当然、今度はあれでしょうか。
こちらも映画化され、まもなく公開の「パンドラの匣」。

満足度 ★★★★☆

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

2009年11月04日 | 映画(ま行)
愛をありがとう、マイケル・ジャクソン

* * * * * * * *

私は特ににマイケル・ジャクソンのファンというわけではないのですが、
この日は込み入った内容の映画を見る気分ではなかったので、
単純に楽しもうというつもりで見てみました。
どうせ見るなら大画面の劇場はやはりいいですよね!

従いまして、今回は、ほとんどこれまでまともにMJの音楽も聴いたことがない
ド素人のオバサンの感想文と思ってください。
一言でいえば、思いがけなくすごく貴重ないいものを見てしまった
・・・ということで、しばらくこの余韻が抜けなかったですね。

本当にMJをお好きな方は、
この映画はあくまでも「リハーサル」で、
MJのテンションも低いし、彼の魅力はこんなものじゃない、
とおっしゃるようです。
それにしても、私には十分かっこよく、魅力は伝わりました。
第一皆様、MJは1958年生まれ・・・、ということは50歳ですよ! 
ほとんど私と変らないじゃありませんか。
10年前と同じ動きを期待しようというのは酷です・・・。


さて、言わずもがなの説明ですが、
この作品は今年ロンドンで行うはずだった
マイケル・ジャクソンのコンサートのリハーサル風景を撮影したもの。
そのコンサート直前にMJが急逝し、幻のコンサートとなってしまいました。

ここには、マイケルの姿ばかりでなく、
この舞台を作り上げるためのいろいろなパートを務める
多くの人たちも映し出されています。
まずはMJのバックで踊るダンサーたちのオーディション。
MJに憧れ、MJと共に踊ることを夢みて練習に励んだのであろう大勢の若者たち。
バンドの人たち。
照明、音声、美術、ビハインド映像の製作
・・・こういう人々の力が結集して、舞台は出来上がるのですね。
MJの要望を聞きながら、頂点を目指してゆく。
マイケルはこの人たちの意識を集中させることのできるカリスマ性と、
彼らの持てる力を最大限に引き出す力を持っているように思いました。

この完成されたナマの舞台を見ることができたら、本当によかっただろうなあ、
と思うのはもちろんですが、
こういう舞台の裏側を見るというのも、めったにないことで、
すごく幸せなことですね。
例えば女性ギタリストにMJは言う。
「ここは、君の見せ場だ。ほら、僕はここについているから。」
う~ん。
MJに耳元でこんなことをささやかれたら、
私でもバンジージャンプを飛び降りちゃいそうですね・・・。


この作品中、MJのダンスを一番たっぷり見せてくれるのは“Billie Jean”
若いバックダンサーたちのエネルギッシュな動きもいいのですが、
MJのオーバーアクションではない、呼吸するように自然に身についた動き。
魅了されます。
MJの手、大きいですね。
彼がスリムだから余計大きく見えるのでしょうけれど、
その大きな手が実にスピーディに変幻自在に優雅に動く。
舞台の上の人も下の人も、視線が全てその手に集中する瞬間がある。
そのとき彼が全ての音を支配している。
まるで“ポップス”が人の姿を借りているようです。
不世出とはこういう人のことを言うのだなあ・・・。


しかし、この中でジャクソン・ファイブのシーンのみ、
MJは気が乗らず、嫌そうでした・・・。
「イヤホンの音が大きすぎて、自分の声が聞こえない」
といっていましたが・・・。
彼は子供時代のことはあまり思い出したくないのでは
・・・なんて、勘ぐってしまいたくなります。
いやいや、ここでは彼の私生活は置いておくことにしましょう。


2時間弱があっという間です。
そして、とても名残惜しい。
もっといつまでもMJを観ていたかった・・・。
もう、彼はいないのだと思うとやはり寂しいですね。
この興奮と、祭りの後の寂しさを
同じ劇場のたくさんの人たちと共感できたと思います。
やはりぜひ劇場でご覧ください。

2009年/アメリカ/111分
監督:ケニー・オルテガ
出演:マイケル・ジャクソン



Michael Jackson's This Is It/マイケル・ジャクソン THIS IS IT/JAPAN TRAILER



幸せはシャンソニア劇場から

2009年11月03日 | 映画(さ行)
舞台への愛、友情、そして父子の絆
     
 * * * * * * *

1936年、パリ。
シャンソニア劇場が、不況のため閉館。
そのため、長年裏方を務めたピゴワルは職を失ってしまいました。
彼の息子ジョジョは別れた妻に引き取られてしまいましたが、
何とか彼の元に連れ戻したい。
しかし、きちんとした職についていないと、引き取ることができないのです。
劇場が好きなことにこんな事情も加わって、
彼はかつての仲間たちと劇場再建に乗り出すのです。

華やかなショーの舞台裏にある切ない事情。
二次大戦前、資本家と労働者の対立という時代背景も表わされていて、
興味深いですね。


歌手志望の娘ドゥースの舞台は、実に花があります。
いつの間にか私も映画中の観客と一緒になって舞台を楽しんでいる。
また、ひきこもりの“ラジオ男”。
彼の存在も面白いのです。
なぜ彼がひきこもるようになってしまったのか。
まさかこのドゥース嬢と関係があるとは・・・。
実は彼は何者だったのか。
これはなかなか大きなポイントです。

失業者たちのあふれるパリの下町で、
華やかな舞台は人々の失意を癒してくれたのでしょうね。
ピゴワルを取り巻く人々の舞台への愛。
友情。
そして、ピゴワル、ジョジョの父子の絆。
じんわりと温かみの広がる感動作です。


実はこの映画の冒頭、
ピゴワルが警察署で尋問を受けるところから始まるんですよ。
殺人罪で捕らえられたピゴワルの供述が、そのまま映画になっている。
でも、映画が進むうちに、そんなことは忘れてしまうのです。
紆余曲折あって、劇場が復興した最も輝かしいミュージカルのシーン。
思わず、私もリズムに乗って・・・。
しかし、そこから一転、
冒頭のシーンに戻り、
高揚した私たちに水を浴びせかけるあたりが、
実にうまいストーリー運びだと思いました。

一体全体、こんな人のよいピゴワルがなんだって殺人なんか・・・。
そのわけは、やはりぜひご自分で見ていただくのがいいでしょう。


2008年/フランス・チェコ・ドイツ/120分
監督・脚本:クリストフ・バラティエ
出演:ジェラール・ジョニョ、クロビス・コルニアック、カド・メラッド、ノラ・アルネゼデール、マクサンス・ペラン


幸せはシャンソニア劇場から予告編



アルカトラズからの脱出

2009年11月01日 | クリント・イーストウッド
アルカトラズからの脱出 [DVD]

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

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これぞアウトローの心意気

            * * * * * * * *

アルカトラズ連邦刑務所
まずはこれをご紹介しましょう。
1934年に開設されたこの刑務所。
カリフォルニア州サンフランシスコ湾内の小島にあります。
脱出不能といわれた刑務所。
何しろ周囲が海ですから。
これがまた潮流が早く水温が低いということで、
脱出は本当に難しい。
1963年に閉鎖されるまで34人の脱獄者が出て、
7人が射殺。2人が溺死。5人が行方不明、
残りは再逮捕されたという・・・。
これがまた大変厳しい監視体制でね。
わずか30年足らずで閉鎖されたのは、維持費のかかりすぎ、という話もあります。
現在は観光地となっているそうです。
ダーティーハリー3には、この廃墟となったアルカトラズ刑務所を撮影舞台としたシーンがありました。


さて、その脱獄者のうちの行方不明となった5人。
この映画はそのうち3名の実話をもとにしているんだね。
つまり、数少ない脱獄の成功のストーリー。

各州の刑務所で脱獄を繰り返し、ついにここへ送り込まれてきたフランク(クリント・イーストウッド)。
彼の脱獄までの経緯を語っている。
まずはこの独房を、どのように抜け出すのか。
これはなかなか気の長い作業なんだよね。
刑務所内でも、暗黙の協力体制ができていくあたりも面白い。
皆の夢を背負っちゃうんだよね。
刑務所といっても一日中独房に入っているわけじゃない。
木工作業をしたり、自分たちの服の洗濯をしたり、分担してそういうこともやっているんだね。
絵を描いたり、楽器を弾いたりもしていたな。
そういうところに付け入るスキがあるわけだ・・・。

さて、刑務所の施設を無事抜け出したとして、
次にはどうやって海を渡るのか。これもまた大変です。
ドキドキ、ハラハラ。緊張感たっぷりの作品。
だけど刑務所なのにね、
若干回りの人たちの、人がよすぎる嫌いはありますが・・・。
はっきり嫌なヤツは1人だけ・・・。
でもまあ、アウトローたちの意地とでもいうのかな、
協力体制が出来上がっていくところは、なかなかいいと思う。
楽しめる一作です。


1979年/アメリカ/112分
監督:ドン・シーゲル
出演:クリント・イーストウッド、ロバーツ・ブロッサム、パトリック・マッグーハン、フレッド・ウォード