最初に台本を書いたのは、演劇学校の2年目だった。だから、今から10年前ってこと。書いたのは、良く知っていて、その時夢中になっていたいこと。つまり、演劇学校のことだった。題名は『輪になって踊ろ!』。ほら、V6が歌ったやつ、あれをタイトルに頂戴した。その頃、ダンスのレッスンで踊っていて、ちょっと気に入っていたから使わせてもらった。
内容はそのまま演劇学校のパクリだ。いろんな人が、いろんな動機で、いろんな顔つきで集まってきて、一つの舞台を作り上げる。そんな中で、いつしか心がつながり一体感が生まれていくって、まあ、お定まりって言えばその通りのストーリーだ。
でも、僕としてはエチュードなんかの練習風景やダンスレッスンを巧みに?スケッチしたり、客席から登場で幕開けなんて工夫凝らしたり、装置もステージそのもの全部見せてしまうなんて奇を衒ったりして、初めてなりに肩肘は存分に張った作品だった。それに、登場人物も演劇学校の生徒を一人一人観察して当て書きしたりして、今思うと、それ以降の書き方の方向性はだいたい出ているって感じる。
これをできれば、卒業公演でやってほしいと思ったんだ。本公演の『わが町』が終わって、卒業までの4ヶ月ほどで仕上げるにはちょうど良いし、演劇学校の生徒が演劇学校のこと書いてそれ上演して卒業なんて、実にいい具合じゃないか、どう?だから、僕としては、かなり気入れて書いたし、できた作品に自信もあった。演出もさせろ、とまでは図々しくはなれなかったけど、ぜひぜひやってほしいと願ってた。
でも、ダメだった。先生からのOKが出なかった。と言うより、先生からほとんどコメントが寄せられなかった。たった一言、セリフに特有のリズムがありますね、ってこれだけ。えっ!うそだろ?生徒が精一杯書いた台本だよ、50人以上もいる生徒の中から、唯一書かれた台本なんだ。何処がいいとか、何処を直したらいいとか、上演するにはここが足りないとか、何かあって当然じゃないか?卒業公演に使わないならそれはそれでいい、でも、その理由くらいは明らかにしてほしいと思った。何もなかったね、さっぱりと。卒業公演は、井上さんの『十一ぴきのネコ』の一部分を歌って踊ってお終いってことになった。
結局、この作品は、未だに上演されていない。第3期の演劇学校生徒の一部の人がぜひやりたいと言ってくれたけど、どういう事情だか、やはり没になった。
先生が、どういう気持ちでこの作品を葬り去ったのか知らない。僕の作品があまりに拙かったのかも知れない。批評するに足りないと考えたのかも知れない。それでも、そのことを丁寧に伝えるべきだったと思う。ダメさ加減を言葉にすべきだった。
この出来事から学んだこと、それは、指導者は、生徒の努力に、精一杯とまでは言わないまでも、真摯に向き合う姿勢が求められるんだっていうことだ。