そりゃもう何度も見てるから、山本太郎の勉強家ぶりだって知ってるし、理路整然とした展開にも感嘆している。話術の巧みさ、言葉の斬新さにはいつも感心させられてる。何より、あのバイタリティ、もう驚き超えてお手上げ、喝采だ。
本会議での予算案反対投票の時の、黙ってられるかの一言も、中国人権問題、ロシアウクライナ侵攻反対決議にも、考え尽くしたうえで反対票投じたのも、あえて多勢に流されない気骨があっていいよなぁ。まっ、ウクライナ問題にはついちゃ、今はまず国会全体で侵攻反対の声上げる時なんじゃないか?って、ちょっと違和感はあったけど。論旨そのものに誤りはないって思ったな。ともかく、全体が一方向に流れそうな時に、すっくと立ち留まるって人たちはいないとダメだよな、特に同調圧力の強い日本、しかもこの危い時期にあっては。
だから、何を今さら感が強いんだが、先日ツイッターで流れて来た山本太郎の街宣動画を見て、改めて、すんげぇ奴だなぁ!心底思った。
高崎での街宣時、聴衆の一人22歳の若者から核兵器配備について質問、って言うより反論があった。核で国を守ることもいいんじゃないか?ってことと、この問題の議論がタブーしされているのはおかしい、この2点だった。ロシアの一方的侵攻のこの時期だからねぇ、質問者もかなり思い詰めた物言いだった。
山本太郎の主張は、核は日本の安全保障に役立たない、核を持ち込めば周辺国にはっきりと敵国指定されて攻撃される危険性はさらに増す。もし互いに核攻撃したとして、狭い国土の日本は東京に一発撃ち込まれればほぼ壊滅、それに対して中国なら何発撃ち込まれてもお手上げにはならない、ってところと、核武装論はあまりに杜撰なので議論の余地などないってことで、これ自体は、当然の論で驚くことはないのだが、その後の若者へのフォローが見事だった。
国を守りたいという熱い気持ちは同じだ。国内での防衛力を高めることは必要だと、同意。ただ、核で守れるかどうかだけがお互いの違いに過ぎない。国を守るには武力以外に外交力も大きい。食糧の自給力アップも重要だ。と、核に対する評価の相違を際立てつつも、あくまで国は守りたい者同士、同じ地平に立っていることを強調したんだ。
いや、できないなぁ、俺なんか、何言ってやがる、そんな核なんてとんでもねぇぞ、ってかましちまって終わりだぜ、きっと。なのに、
議論はしっかりと反論するが、追い詰めることはしない。お互いに納得できる領域、この場合は「国を守りたい」、を見つけ出してそこに目を向けさせる。決して敵対者とか、相いれない者とは見做さない。情緒的に取り込もうなんていやらしさはみじんもない。ほんと、意見の相違なんて大差ないんだと感じさせてしまう。いや、山本は実際そう思っているんだろう。
こういうのを世間では懐の深さって表現する。でも、それって、よしよしわかった一理ある、ってマウンティングしてるようなもんだろ。一段高い所から見下して、優位に立ったことに満足するような姿勢だ。
だが、違う。共に今の課題に立ち向かう者への共感があるんだ、彼には。対決する議論って、言い放ちが終わった後、なんか消化不良感とむなしさと刺々しさが残るもんだけど、この街宣時の1シーンはとても爽やかな気分で議論が終了していた。若者が、納得したかどうかはわからない。が、少なくとも敵対者と身構える気持ちは消え去ったんじゃないだろうか。
まっ、比べるまでもないことだが、橋下徹や維新の面々との違い、歴然だな。相手の弱点を徹底的に突いて相手を黙らせる、一方的な論理展開で圧倒して勝利宣言する。彼らのこの勝てば官軍的殺伐とした論争風景が、一部マニアには痛快に感じられたとしても、多くの庶民にはうんざりものだってこと、もっと優しい言葉を思いやりのある対話を求めているってこと、それが山本太郎の街頭演説に人が群がる理由だろう。
参議院選挙もいよいよ候補者が出揃う。季節も暖かくなって街頭が勝負の場になる。山本太郎のすごさがいよいよ発揮されて来るに違いない。おっと、大石あき子もね。