うすうす気づいちゃいるんだよ、ひたひたと老いに浸食されつつあるってことは。でも、なんか認めたくない、見つめたくない、無意識に抗ってるんだよな。
特に、若いころ、って言ってもついこの間まで、体もそれなりに動いてた人間にとっちゃ、何としても認めたくない現実でもあるんだ。だから、頭の方は往年の姿をイメージしている。ダンスだって、俺、けっこう踊れてるじゃん!って満足しちまってる。
これ、外から見るとそうとうヤバイ!出来る気でいるから、軽く合わせているつもりなんだろうが、もはや適当、リズムにゃ遅れ、ステップは間違い、振りは中途半端。何より悪いのが、ひたむきさが欠けていること。俺、踊れるしぃ、って踊れてないちゅうの!
これは見逃せない。見せられる観客はたまったもんじゃない!それ以上に当人のためにも極めて拙い。気付く機会を放棄してたら、ますます老いは加速して行くに違いないんだ。何十年と一緒に菜の花座を支えてきた代表なんたし、このまま老いさらばえもらっちゃ困る。彼のために、菜の花座のためにも、とても認められない。
敢えて厳しい指摘をした。ダンス全然ダメだから。振り適当にしてるから。ジジイの無様さそのものだから!って。
言っただけじゃわからない。よしっ、ビデオに撮ってそれ見て自分の姿を見つめ直してくれ。大勢一緒に踊ってるところじゃわからない。大写しになるよう、男3人だけで躍らせた。他に、手本になる若手女性陣のダンスも別に撮影して1本の動画にした。
DVDを渡した翌日の稽古、だれだ、これ?って思ったよ、まるでいい加減に踊ってる、こんなだったなんて思わなかった、と代表。気づいてくれた、良かった。
以前はそこそこ踊れたから、踊れてる気になってたんだ、腹も出てるのはわかったし、って。
スポーツマンの彼、動画に映し出された己の動きに相当ショックだったらしく、その夜のダンスレッスンは必死に追いつこうと頑張っていた。
そうそう、そうやって、一生懸命踊れば、お客さんだって許してくれるのさ。素人がダンス見せるおこがましさをほほ笑みつつ見守ってくれる。それがお馴染みさんへの最低限の気配りってもんなんだ。
それと、彼も自分の衰えに気付くことができた。ますます精進するのか、進む老化と折り合って行くのか、その判断は当人しだいだが、少なくとも舞台に立つことを望むなら、老いにずるずる押し切られちゃならないよな。
それはこちらも同じこと。いつまでも頑張れるわけじゃないが、早々降参もしたくない。だったら、まず、その時々の自分にしっかり向き合うことから始めなくっちゃ!