ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

音楽は偉大だ!ゴスペル編

2007-05-18 21:58:20 | アート・文化

 ここほんと川西?フレンドリープラザ?観客400名、総立ち!

 Reach Out And Touch リーダーのパットが歌いながら客席に降りてくる。「腕を伸ばそう、手を触れ合おう。」歌いながら差し伸べる手に群がる人々。客席を駆け下りて、彼女とのタッチを試みる観客達。もみくちゃになりながら、次々と差し出される手と触れ合いつつ進むパット。押し寄せる人々でもう動くこともできない。そのうちに、上手側の舞台と観客が身を乗り出してタッチし始めた。ホールが完全に一体になった瞬間。1時間半の優しく美しい歌声の後に出現したクライマックスだ。

 TEGC(トータル・エクスペリエンス・ゴスペル・クワイア)の演奏会。もう、一曲目からノリノリだった。パットが歌詞を紹介し、一緒に歌うことを促す。待ってましたと歌い出す観客。最初はちょっと乗り損なった僕も、Down By The Riverside  あたりでは、もう完全に乗せられちまった。風邪引いて声が出ないっていうのに、歌詞がよくわからないっていうのに、まるっきりお構いなしで、歌い、手を打ち、身体を揺すっていた。もちろん、立ってだよ。

 こんなことってほんと珍しい。買って帰った彼らのDVD見ても、東京でだって、立ってんのちらほらだからね。ぎゅー詰めのライブハウスならともかく、演劇専用ゆったりスペースのプラザホールなのに、この盛り上がりだから。彼らの音楽に、聞く人たちを幸せにする力、心を浮き立たせる力が漲ってたってことだ。

 ヤヒロ トモヒロさんのパーカッションも大きかった。ドラムとエレキベースにプラスだったから、これは強力。ラテン系のはじけるリズムで、全体を遊園地のような楽しく弾む景色に彩っていた。ゴスペルの重厚さとか、深刻さってものが上手に包み込まれて、とってもポップな仕上がりになっていた。

 でも、観客の力も大きかった。米沢、川西のゴスペルグループのメンバーがたくさん詰めかけてたからね、のらないわけないよ。歌わないわけないよ。それと、プラザが続けてきたミニコンサートや歌声喫茶、音が鳴れば、リズムが刻み始めれば、すぐに歌い出す、踊り出すって条件反射になってる人たちがこれまた多い。それと、置農演劇部!彼らも負けずに突っ走ってたからね。こんな舞台と客席が一つになるコンサートが、こんな田舎町で突発する。いいよねえ。さすがだよねえ。

 でもね、一緒に歌いながら、フラッピングしながら、跳ねてる高校生みながら、考えてたんだ。この一体感、どこから生まれてくるんだ?って。

 「私はあなたのために歌う・・あなたは私のために歌う・・あなたは私の大切な人・・私はあなたの大切な人・・何故なら、神様の身体の一部分だから・・」

 冷静に考えたら、この歌詞でそうは簡単に涙流せないんじゃない?自分が神様の一部だって思える日本人ってどれくらいいるだろう?私はあなたのために歌う、これくらいはいい。でも、あなたは私の大切な人って、恋人でもない人に向かってささやけるだろうか?

 彼らが恥ずかしがることもなく、ストレートにこんな万人への愛を歌い上げることができるのも、神を心から信じ、敬愛し、賛美できるからなんだ。だから、ゴスペルを聴く時はいつだって、その強烈な信仰とどこまでも深い祈りの気持ちに圧倒されてしまう。また、その一途な思いに、たるんだ心と身体を引き締めたくてゴスペルを聴く。

 でも、僕らは違う。万人への愛の世界に生きていない。すべてを投げ出す信仰の潔さとは縁遠い。僕らが見上げる彼方に神は存在しない。日本人が歌うゴスペルが心を打たないのも、言うまでもなくここに理由がある。

 今回のコンサートは素晴らしい一体感を生み出した。でも、それはお互いの誤解を土台にして積み上げたものだ。ならば、その一体感に意味はないか?そうではない。僕たちは、手を差し伸べたいと願っている。手を触れ合いたいと念じている。あなたを大切な人と言い切りたいんだ。・・・・・・その思いの深さは、浅くなんかない。でも、身近に神を感じられない僕たちは、その思いだけを心に秘めて、黙している。

 そして、昨夜、彼らの歌声が、彼らの呼びかけが、僕らの心の奥底にしっかりと響き渡った。愛する神のもとに届けようと心を込めた歌声が、僕らの魂を揺り動かした。僕らの中の秘めたる希求の思いに灯をともしたんだ。信仰の透明度の高さはある。でも、歌だから、音楽だから、ここまで深く感動し、激しく共鳴できたんだと思う。

 結論はここでも、やっぱり音楽は偉大だ。

 

 

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ポスター・チラシも劇団の実力!

2007-05-16 21:47:48 | 演劇

 東京行くでしょ。芝居見る、と、押っつけられるのが、分厚いチラシの束。ちょっと迷惑だけど、あれ結構楽しみだ。ほんと!いろんな人たちがいろんな舞台作ってる。なんか、芝居に対するものすごいエネルギーの固まりを手にしてるって感じだ。まさに生の情報ってところ。それと、チラシのデザイン!これも、もう、様々あって、ほんと楽しい。あの何十枚の中から、人目を引こうてんだから、作る人も気張るよね。自分の全才能傾けて、知恵絞って、アイディア出し切って、勝負だから。劇団の人たちの来て来てパワー!とチラシデザイナーの見ろ見ろ念力!の相乗効果だもの、こりゃたまらんわ。

 菜の花座もそんなチラシ・ポスターを作りたいって熱望してきた。そのためには、まず、才能を育てなきゃね。菜の花座で絵と言ったら、何と言ってもサオリ。だから、このところずっと彼女にお任せでやってきた。彼女のデザイン、悪くないよ。意表ついたアイディアで、毎回面白い。でも、あの見ろ見ろ念力には欠けるんだよなあ。やっぱり役者との二枚舌、いやいや、二足のわらじはきついんだろうな。

 とりわけ今回のサオリは、演技の他にとてつもない役回りに、グルグル巻きにされちまったからね。クラリネット!!吹いたこともない、触ったこともない、見たこと、・・はあるよな、クラリネットを本番までに最低3曲仕上げなくちゃなんないんだ。なんせ、チンドン屋の社長の役だからね。先週も、クラリネットを無理矢理押しつけられ、毎日1時間は練習しろ!と冷たく座長から、つまり僕だけど、厳命されたところだ。だからね、できませんよぉ!勘弁してくださいよぉ!さおり得意の嘆き節、今回ばかりは、嘘泣きじゃあない。仕方ない、認めよう。はて、じゃ、チラシ・ポスターどうする?

 絶対絶命のピンチ!と言えばスーパーマンの登場。これまでも何度もあった崖っぷち、菜の花座には、その都度スーパーマンまでは現れなかったけど、オタスケマンくらいは、必ず登場してくれていた。

 やっぱりだぁぁぁぁ!!今回のオタスケマンはメグミ。この春高校を卒業したばかりの若手イラストレーターだ。あえて就職もせず、この仕事でプロになることに狙いを定めて修行中の身だ。彼女の絵には、壊れてしまった若者の哀切な涙のひとしずくがある。ちょっと異教風の題材なんかもあって、そうか、『おもかげチャンチキ』にすっかり重なるじゃないか。なんせ、菜の花座には珍しく暗い話しだから。

 話しはまとまり、約束通り10日でしっかり仕上げてきた。そうなんだよ、これなんだ!イラスト勝負、この気迫が欲しかったんだ。で、彼女が仕上げてきた絵は、第一話の少女柚木のチンドン姿だった。うつろに見やる眼差しに少女のあどけなさと色っぽさが二つながら宿っている。彼女のえんじ色の着物を透かすように黒い電柱と電線がこれまた、寂しげに立っている。電線は柚木の異世界への憧れだろうか。主役は違うが、台本の根っこをしっかりと押さえている。いいよ、なかなかいい。文字の処理の仕方なんかにまだ勉強の予知があるけど、それはこれから追々にだ。このポスターはきっと評判になるね。

 さらに、嬉しいことには、舞台美術もやってみたいと意欲を見せてくれたことだ。とりあえずは、僕が考えた装置のパネルを彩りしてもらうつもりだが、いつかは、すべて任せきってみたい。さらに、メグミのイラストに触発された芝居が生まれるなんてのも、凄いと思う。

 だから、彼女のチラシ、早く印刷屋に回さなくちゃいけないのに、チラシ裏作らずに、こんな文章書いてて、まったくもう!!

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鯨 エマさん に会った!

2007-05-14 15:27:40 | 演劇

 さて、山形県高校演劇講習会終了後、鬱々と帰路に就いたって書いた(妬けるぜ!高校生!!)けど、ほんと言うとまんざらでもなかったんだ。良いこと二つあったからね。

 その一つ、鯨エマさんに出会えたこと。

 講師として初参加の彼女、東京の役者さんで、演出家で、脚本家で、プロデューサーで、映画監督で、・・・まだまだ続くんだけど、詳しくは彼女のホームページをhttp://kujira-enter.sakura.ne.jp/参照!!あっ、そうそう、講習会の感想もアップされてるから、講習会参加者は必ずチェックだ。こんなにいろんなこと目一杯やってる人だなんて、ホームページを見るまでちっとも知らなかった。僕が興味は持ったのは、彼女がシニアの劇団を指導してるということだったんだ。そうそう、そうだよ、僕も、ただ今計画中だからね、来年春の旗揚げを目指して。

 で、彼女のシニア劇団『かんじゅく座』のことを根掘り葉掘り聞いてしまった。現在団員が20名ほどいることとか、女性が圧倒的に多いこととか、60歳から72歳までいるってこととか、50歳台の希望者もいるってこととか、旗揚げ公演はもの凄く盛り上がったって話しとか、公演は120名定員の小ホールだったこととか、応募者は多かったげと、週二回の稽古と聞いて諦めた人も少なくなかったこととか、なるほど、なるほど、わかるわかるって首を振りながら聞いていた。だって、風邪で声出ないからね。ボディランゲージしかないでしょ。

 朝日新聞に取り上げられたら、問い合わせが殺到したって話し、ふ~ん、やっぱり朝日かぁ!って何故か、納得。そう言えば、僕がフレンドリープラザの演劇学校に入るきっかけになったのも朝日の記事だった。発行部数だけの問題じゃないんだよ。どんな人が読んでるか、読者の質っていうか、層っていうか。あっ、山新さんごめんなさい!こまめな取材と丁寧な記事、いつもとっても助かってます。と、ことのついでに御礼を。

 で、彼女が一番しみじみと言っていたのは、お年寄りって凄いってことだった。上手いとか下手とか、そんな次元を越えて長年生きてきた存在感、これには圧倒されるって言っていた。それはそうだよな。樹木に年輪があるように、人間にだって、積み重なった厚みってもんがあるんだ。それをしっかり伝えることができれば、このシニアの演劇活動ってのは、これから大きな可能性をはらんだ分野だと思うって、これも彼女が言った言葉だった気がする。

 旗揚げ公演の演目は、劇団員たちの人生の重みがもろに伝わってくる好舞台だったようだ。裁判員制度にかり出され、夫婦間の殺人事件を裁くことになった人々の意見のぶつかり合いが見せ場だったと言っていた、かな?この辺り、周りの喧噪にさえぎられ聞き書きに自信なし。でも、裁判員制度といい、夫婦間の殺人といい、とても時流をつかんだ見事な設定だと思う。あっ、そう言えば、彼女の劇団の次回公演も、葬式に金がかかることを気に病ん青年が、自分の葬儀について遺言書を書きかけで死んでしまって、残された者達は右往左往・・・って話しだとか。これも、時勢をちくりと突いてるね。

 と、まあ、こういう素晴らしい人と出会えたことと、も一つ、顧問と講師の懇親会の会場で、チンドン屋デビューのこともセンセーショナルに報告してしまったからね、僕の目立ちたがり精神もしっかりカバーできたってことで、結構、気持ちよく帰ることができたんだ。ついでに言うと、チンドン御用『菜の花商会』、中心メンバー3人はすべて置農演劇部顧問だってことも、改めて、書いておこう。

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妬けるぜ!高校生!!

2007-05-13 20:33:17 | 演劇

 昨日今日、高校演劇の講習会だった。山形県内すべての演劇部から330人もの部員たち、これが、演技基礎(3班)、演技応用(2班)、ジャズダンス(2班)、ヒップポップ、声楽、照明、衣装、舞台装置、殺陣の13のコースに分かれて作品作りに取り組んだ。

 300人の高校生って言ったら、その体温だけだって相当なもんだけど、全部、演劇部員だからね、そりゃ、すごいよ。そのパワー!そのハイテンション!会場に入った瞬間から、挨拶合戦。『おはようございます!』の殴り込みなんだ。昨日の午前中から今日の午後の発表会まで、もう、完全に圧倒された。まあ、風邪が悪化して、鼻は出る、声は出ない、熱に震えるって最悪コンディションだったてこともあっけど、体調万全のいつもの年でも、あの若さの爆発には、あてられていた。そう、この講習会が終わると、何故か、不機嫌になっちまうんだな。

 置農の生徒が引っ込み思案だからか、いやいや、そんなのは、もう昔の話し、今じゃダンスだって、前列中央で踊ってるし、コミカルに笑いをとってる奴も少なくない。他校の生徒ととも、どんどん交流をして、友達の輪を広げてる。

 じゃあ、中身が面白くないのか?とんでもない!どれもこれも、とてもとても、丸一日の成果とは思えない仕上がりなんだ。ダンスなんか、たった一日で、よくもまあ、って感じだし、コントも高校生のセンスてんこ盛りで実に面白い!照明や衣装の先生には、僕も毎年アドバイスをもらいに行く。今回も舞台の奥行きを深く見せる照明技術を教わった。あっ、菜の花座の次回公演チンドン芝居『おもかげチャンチキ』で使おうと思ってね。

 部員にも問題ない、中身も満足、なのに、何故、鬱々と帰路に就くのか?

 今回、その答えが見つかったんだ。9回目にしてやっと。それは、嫉妬・ヤキモチ、だったんだ。あの奔放自在なエネルギーの溢れかえり!途方もないハイテンション!底知れぬ記憶力!飛び跳ねる肉体!それを支える体力と気力!さらには、上手い下手を越えた目立つぞ精神!味噌糞ごちゃ混ぜ爆笑感覚!・・・

 そんなはじける高校生達を、いかにも、大人然として、微笑みなど浮かべながら、見つめている僕たち教師。実は、心の底深く、こいつらやりたい放題やりやかって、見てろ、明日からまたしごいてやる!くそ、羨ましい!って感じてたんだよな。あるいは、若さの爆発だけで舞台が作れるか、なんて、必死で水差したりしてたのかもしれない。おっと、そいつは、僕だけの特殊事情だろうけど。だから、妬いてたんだよ、要するに彼らを。僕の中にもはや失われた数々。僕の中に足りないもろもろ。ああ、ちくしょー、良い物持ってやがるぅぅ!

 いけねえ、いけねえ!なに高校生相手に気張ってんだよ。落ち着けおじさん!

 でもなあ、たとえ高校生だろうと、表現者としては、対等だから。子どもだろうと、高校生だろうと、青年だろうと、中年だろうと、熟年だろうと、表現者なら、土俵は一つだ。そいつ忘れて上から見るようにはなりたくない。いやいや、そうじゃない。しょっちゅうそうなってるから、この講習会の後は不機嫌になっていたんだろう。そういうこった。今年が最後の講習会引率。少しは、素直に高校生にも自分にも目を見開くことができたってことだ。

 忘れないようにしよう!表現者は、みな対等!なんだ。

 

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服地屋さんで時を忘れる。

2007-05-11 21:52:47 | 演劇

 置農演劇部定期公演まで、あと、一ヶ月!なのに!装置も道具も衣装も手つかずだ。連休は食育子どもミュージカル『”いただきます”見つけた!』の連続公演でいっぱいいっぱいだったからね、仕方ないんだ。大慌てで打ち合わせをして、全員で裏方仕事にかかることにした。

 今回の出し物は、『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』っていう、10数年ほど前、横内謙介さんが岸田国士賞を受賞した作品だ。この題名からして凄いよね。アンデルセンの『裸の王様』にセルバンテスの『ドン・キホーテ』、それにシェークスピアの『リア王』、おまけに、ミュージカルの『ラ・マンチャの男』までと、山盛り大サービスにおまけ付きの賞品付きって台本だ。

 中身の方も、当然のこと、凝りに凝っていてる。驚きの仕掛けあり、どんでん返しの連続あり、最後はとんでもない結末と、実にスリリングな展開だ。ミュージカルナンバーだってあるからね。以前から手がけてみたいと思っていた作品、ようやく、挑戦することができたんだ。これだけの大作、奇作、高校生が本当に仕上げられんの?う~ん、自信は????・・・でも、高校生だと思い切ってぶつかれるから、かえって菜の花座がやるより楽かもしれない。

 だから、本読みには、じっくりみっちりぎっちり時間を掛けた。かれこれ一ヶ月半かかったからね。本読みを終えたときには、部員達から感動のため息が一斉にもれたもの。あっ、ただし、本の中身に感動したわけじゃない。ごめんなさい、横内さん。繰り返し繰り返し読まされて、ダメ出しされて、怒られて、説教くらって、ついにたどり着いた最終ページ、最終行だったからね。まあ、高い山の山頂に、這いつくばってよじ登った達成感みたいなもんだった。

 本読みが終われば、立ち稽古と行きたいところだけど、なんせ、置農演劇部、全員攻撃、全員防御だからね。次は全員で道具、装置、衣装、ダンスの振り付け、へと飛び出すってわけだ。あれっ?あの本にダンスシーンなんてあったっけ?有りませんよ、台本の指示にはね。でも、そこは、演出の裁量範囲でしょう。台本には手を付けていないからね。読む人が読めば、ダンスシーンが浮かび上がって来るんだよ。えっ、見えない?おかしいなあ。それに、そうでもしないと、一年生舞台に上げられないしね。もう一度、ごめんなさい、横内さん。

 で、今回の裏方仕事で一番の難問は、やっぱり衣装なんだな。一昨年の『夏の夜の夢』(作:シェークスピア)もそうだったけど、演技が、えーっと、まあ、あれだ、そうそう、そこそこだから、せめて衣装くらいそれらしくしなきゃね。ってことで、中世ヨーロッパ風の衣装を作るってことにした。どこが、中世だ?なんて、固いことは言いっこなし。簡単に出来てそれらしい衣装ってことだよ。

 幸い演劇部の伝統で、お針子さんが何人かそろってる、これが強みだ。衣装チーフがデザインを決め、後は、下級生に下請け仕事。次々に仕上がっていくって寸法なんだ。でも、なんせ、デザインは作りやすさ最優先のワンパターンだ。どうやって変化を付けるか?そこで、物を言うのが、生地選びなんだよな。うひひひひ、これは、僕の仕事なんだ。絶対生徒にはさせない。

 だって、楽しいものね。服地屋さんで棚の前を行ったり来たり、下から生地の巻物を引っ張り足しては、ためつすがめつ。もし、時間に制限がなかったら、半日はゆうにぶっとんじまうよね。実際、最初に生地選びをしたときは、気が付いた時には、もう昼になっていたから。模様も様々、色合いも千差万別、さらに、生地の材質感もみな違うからね。一つ一つ見てるだけで、ほんと、飽きない。こんな楽しい仕事、生徒に預けられますかって言うんだ。おいおい、そう、けし気張ることないだろ。いかん、ちょっと、興奮した。

 真面目に言えば、舞台のイメージにあった布地、役柄にあった生地、全体のバランス、装置とのかねあい、照明でどう生かすか、ってとこまで考えて選んでるからね、本当だよ、これって、やっぱり生徒には無理なんだな。ここは、美意識と経験が物を言う仕事なんだ。で、気持ちとしては、じっくり時間を掛けて選びたかったけど、なんせ、あと、一ヶ月!ええーいっ、決断、決断!バックに使うカーテン地19メートルの他に5種類の服地を迷いを残しつつ、買い物した。しめて、2万円。高いのか?安いのか?まっ、まけてくれたし良い買い物をしたって思いこむことにしよう。

 さっ、後は、衣装チーフさん、お針子さん、皆さんの出番だよ。いいもの作ってね。だめだめ、僕のセンスを疑うな!作ればわかる!舞台に上げればもっとわかる!信じるだ!そう、僕も精一杯信じるんだから。

 

 

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