ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

公演終わればキムチでしょ!

2015-01-25 10:01:31 | 暮らし
 菜の花座の公演が終わった。12月末に仕込んだキムチも底をついた。だったら、キムチ作りでしょ。

 もうどうしたってキムチ狂いなんだよな。今シーズンはなんと三回目だ。前二回、きれいに底の底までさらって、付け汁だってキムチ鍋にして食べ尽くした。別に漬けてある赤蕪なんてあんなにうめぇ!うめぇ!って食ってたのに、もう見向きもしない。ごめん!赤蕪。ぬかみそ漬けのにんじんは、目指せ越冬!ってことで、二日に一度はつけ込み取り出しして食卓に上がってはいるが、手が出るのはもっぱらキムチ。作るったって面倒だし、毎日瓶から取り出すのだって、あちこちはねて大変なのに、どうしたってこうしたって、やっぱ、キムチなんだ。

 数年前、血圧上がって、うーん、こりゃキムチの塩分と辛さのせいか?とキムチ作りを封印したこともあったが、ランニング始めたら血圧も落ち着いて、となれば、気にすんなキムチ!キムチガンバ!待ってたぜキムチ!とつけ込みを再開した。

 ネットでちょい見してみると、キムチの高血圧リスクは塩分なんだな。ただし、キムチは日本の白菜漬けと違って塩漬けした後、水切りして漬け直すから、漬け物とは言え塩分濃度は低めの2.2%。僕の場合、最初3%の塩で漬けるから、上がった水分を捨てるともっと低濃度になってるんじゃないか。まっ、ほどほどに、食べ過ぎなけりゃ、ってところみたいだ。一方、メリットの方は、唐辛子のカプサイシン、これが血管拡張効果大でコレステロール値を低下させる効果がある。てことは、血圧抑制の働き有り!さらに、副原料ニンニクのなんたら言う成分も血圧下げるんだって。おいおい、高血圧対策食品じゃないか!それと発酵食品だからね、体には悪いわけないのさ。そう、良いとこだけ聞いておけばいいのさ。悪いと思えば悪い。効くと思えば効く、ってなんか新興宗教みたいじゃないか。

 てことで、今シーズン三度のキムチ漬け、工程を紹介してしまおう。

 まずは白菜の塩漬け。



 使うのは、もちろん!自家製白菜。一度に大量に漬けると最後は酸っぱくなるから、大きめのものを2個。



 一回に食べるのにちょうど良いように1個を12個に切り分け、3%の塩をすり込んでつけ込むこと一日。重しは外で雪に埋もれてるから、赤蕪漬けの瓶を代用する。あ~あ、食べもせず重しの役なんて!



 一昼夜で水があがるから、瓶から出して水を捨てる。これでかなりの塩分が排除されるってわけだ。塩分気になる人は、ここで水洗いすればもっと低塩分なるだろうね。



 次に材料は、大根、にんじん、ネギ、ニンニク、韓国産唐辛子粉と水飴。前回はセリを買ってきて使ったけど、少しばかり入れたって彩りはもちろん、味にも大差なしだったから、今回は自家製ネギで代用。この辺、何入れようとお好みしだいの好き勝手でいいみたい。



 野菜は千切り、ニンニクはすり下ろす。おっと大切なもの忘れてた。アミの塩辛、これが旨味のもとで、我が家では煮干しと一緒に煮だして使ってる。



 塩辛と煮干しのだし汁が冷めたら野菜と唐辛子と水飴を入れてかき混ぜ、白菜の葉の間に詰めてつけ込む。ここの写真、手が汚れているのでなし、ご容赦!



 瓶に漬け直してて、3日もたてば、絶品キムチの完成だ。でも、僕は待てない。漬けたその日からちょこちょことつまみ食いが始まる。と、まあ、こんな具合で漬けたキムチ、これから3週間、元気の元になるってこと。そうだよ、カプサイシンには食欲増進効果も神経系の活性化効果もあるんだからね、呆けなんてどっかに飛んでけってもんなんだよ。

 


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シニア演劇学校四期生募集始まったぁぁ!

2015-01-23 10:08:25 | シニア演劇
 山形新聞にプラザシニア演劇学校四期生募集の記事が載った。

 こちらの募集チラシを見て、頼まないうちからさっそく書いてくれた。ありがたい!こういう記者様は大切にしないと。そうよ、様付けだよ。演劇ってともかくマイナーだからね、公演の案内もなかなか取り上げてくれないし、劇団の様子が記事になるなんてとんとない。たしかに、趣味の領域でしょ、って言われればその通りで、詩吟やら合唱やら吹奏楽やら一生懸命やってる人たちと同じなんだけどね。音楽関係に比べれば、演劇やってます、てのはめちゃめちゃ少ないし、団体の数もいたって少数派だ。でも、そこだ、マイナー故に価値がある、なんてことも考えるわけだ。

 なんで演劇はマイナーなのか?それ、敷居が高いってことが大きな理由じゃないかな。合唱や吹奏楽なんかだと、ソロってのもあるけど、全体としてはみんな一緒、団体活動だ。一方演劇は?コロスなんて大勢で同時にせりふ言ったりする場合もないわけじゃないが、まっ、普通は一人で勝負だから。せりふ間違えたり、出なかったりしたら芝居そのものぶっ壊すことにつながりかねない、ってことは怖い。照明当たって観客を前に演ずるって、これかなりの度胸と自信がなけりゃできないってだれだって思う。なんかすげえ能力高くて、あれ選ばれた人のもんでしょ、って遠巻きにしちまうってわけだ。あと、あれ目立ちたがり屋、の人たちなんよって偏見も普通に広がってると思う。

 でもね、高校演劇やアマチュア演劇、そしてシニア演劇にも関わってきて、そんなのみーーーんな嘘!って自信持って言える。置農で演劇部に入ってきた子たちってほとんどが、クラスじゃ地味ぃぃぃな、目立たなぁぁぁい、ごくごく普通ぅぅぅの生徒たちだった。成績もピンからキリ、トップクラスも居れば、最下位争奪グループなんかも少なくなかった。菜の花座だって演劇大好き!は共通していても、根っから才能豊か、なんていないし、シニアもほぼみんな迷いに迷って飛び込んできた人たちだ。

 敷居もハードルも高くなんかない。能力あったり、出たがりだったり、特別な人たちなんかじゃない。ちょっとばっかし変わったことやってみようか、とか、新しいこと挑戦してみようか、ていう好奇心と意欲があればそれで十分!あとは一歩を踏み出す勇気ときっかけだけ。そのわずかな踏み出しがまるで違った新しい感動の世界を開いてみせてくれるってことなんだ。

 だから、まだまだこれからだって思ってる人、なんか別世界に飛び込んでみたいと願ってる人、新しいつながりを作りたいと狙ってる人、シニア演劇、すぐ目の前に大きく扉を開いて待ってるから、ってことで、演劇へのお誘いでした。

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みんな役者だぁぁぁ!

2015-01-21 14:51:59 | 演劇
 高校で演劇部指導してたときもそうだったけど、僕のキャスティング方針は、全員出演!全員役者!ってことだ。いやまあ、スタッフだって必要だから、文字通り全員キャストってことはない。照明、音響、舞台監督などこればっかりは居てもらわなくっちゃ、ってスタッフ以外は、極力に舞台に立ってもらう。場合によってはスタッフ借用したって役者優先、キャスト主義だ。

 集まって来るのが、舞台に立ちたい、照明浴びたいって人がほとんどだって事情が大きいけど、スタッフで行きたいです、なんて言ってる人間だって本心は舞台なんだ、役者なんだ。いや、心からスタッフ志望って奴もいるけど、もうなにが何でも役者を経験してもらうことにしている。舞台に立って初めてわかるあの高揚感!達成感!そして一体感!これ味わってもらわないとね。

 今回は、シニア3期生公演とかぶった一人には大いに我慢してもらって舞台監督兼制作を担当してもらった。いやぁ、かんなし!悔しがってたなぁ。音響は一ヶ月後に出産予定のM、そして照明、普段は中心役者のH、雪深き小国からの通いってことで初の照明調光を任せた。って言っても、初体験で色作りなんて出来ないから、役者で出る置農演劇部顧問のNが事前に作って記憶しておき、そのデータを台本に即して呼び出してもらうっていうやり方だ。簡単?いえいえ、通しとかほとんど見てないし、調光室上がるの自体初めてなんだもの、これはかなりのプレッシャーなんだ。そんなんで大丈夫なんか?まっ、細かいこと言えばきりはないけど、まずはクレーム付くような事態に立ち至ったことはかつてない。てことで、菜の花座、いつだって舞台裏は火の車なんだ、実は。

 で、そんなに無理してみーんな出して演技はどうよ?芝居やろうとした人はほぼみんな経験してることだけど、劇団に合った台本てやつが、ほんと!見つからない!出演者の人数足りない、性別合ってない、年齢不適切。こんな基本的なところから困難は目白押しだが、仮になんとかはまったと思っても、持ち駒の演技力とか個性とかまで行くと、こりゃもう針の穴の駱駝だ。

 そこで効いて来るのが当て書きだ。人数、性別、年齢ばかりか、演技力、持ち味、声の大きさ、声の質、記憶力から雰囲気まで、すべて日常的につかんでいる。この役者ならこんな役だと生きるよなとか、こいつにゃせりふはこの程度が限度とか、これくらいの難易度なら超えられるだろうとか、家庭事情からこの人には今回この程度でとか、そうそう出番の数や時間だって・・・もう何からなにまで思案し、斟酌し、勘案して設定を作り上げる。もちろん、装置とか衣装とか照明とか舞台効果面も気を配る。要するに究極の適者適役!ってことだ。だから、無理が少ない。シニアにも即対応が可能になる。

 今回の配役では、シニアは一人を除き、その人の持ち味に合った役を配した。人によって役の重要度、せりふの多さ等は違うものの、役作りに苦労しなくても、地を生かして演技できる役所とせりふになっている。問題はせりふと動きの記憶だ。これはこれでかなり大変だったが、それぞれ苦労しながらも乗り越えた。だから、シニアの演じた役は、ほぼ上手く行った。観客の評価も高かった。

 一方、経験豊富な若手には、自分の個性から離れた役だ。年齢も実際より10歳近くも高かったり、日頃身近にいない職業、性格の役をあえて書いた。そう、彼らにはもう一皮脱皮してもらいたいからね。いつまでも、「今の自分でできる役」やってたらこれから伸びない。シニアにだって追いつかれ、抜き去られるからね。経験の数から経験の質へってことだ。若さで走ってきた役者道、これからは悪路もあれば嶮岨もあり、道なき道もある。それを自分なりに乗り越え踏み越えてどうやら一人前になって行くんだと思う。踏んだ舞台の数でいつまでも先輩面ぶら下げてると痛い目に遭うぞ!ってことだ。痛い目ってなんだ?そりゃ役がもらえなくなるってことだよ。主役から脇役へさらには端役へと転がり始めりゃ一気だから。ご用心!ご用心!








 

 
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ぶっ飛べば、笑い!これがツボ

2015-01-20 13:35:21 | 演劇
 吹き荒れた白魔をものともせず敢行した前日ゲネ、さて、その効果のほどは、・・・
 
 本番当日、さすがに吹雪は立ち去った、が、天気回復とまでは行かず雪のちらつく肌寒い天気。ああ、これじゃ客入らないよな、せいぜい100か?寒中、吹雪、短い宣伝期間と最悪条件はすべてそろったってところだもの。いいんだ、お客さん30だろうと20だろうとやる!それが役者の心意気ってもんだ。

 と、悲壮な覚悟の幕開けだったが、意外や意外、200人近い入りとなった。ちょっと鯖読んでるけど。大したもんだ。やっぱり、シニアの動員力は偉大なり!だ。ちょっとは菜の花座の名も売れてきたってこともあるかな。熱気に包まれた客席、とまでは行かないけど、まあそこそこに温かいムードの中で幕開け。



 今回徹底してこだわった笑いについて振り返ってみると、前半しょぼしょぼ、中ぼちぼち、後半やっとぼっぽぼっぽ!ってところだたった。なんじゃそれ?思惑としちゃ最初のシーンからくすくす笑いで客の脇の下くすぐるはずだったんだけど、ほぼ完璧に不発。3爺のごろごろ体操でようやく笑い袋が開いてきた。そして、クライマックスの男1対女5の見合いは大いに受けた。



 こんなこと書いても見てない人には通じない。最初の2つのシーンは、ちょっとずれた女たちのすれ違いの可笑しさを狙ったものだ。借金取りのヤクザに金借りようとする中年女優の図々しさとか、その女に誘われて自分の金で食事に行きかける人のいいヤクザとか。シーン2では、銀行に借金申し込みに行くのに、焼きプリンとか盛岡せんべい土産に持参する場違いな女とそれを小馬鹿にしつつ慇懃に対応する銀行員とか。爆笑ネタではないが、なんかどこ可笑しいって場面をぶつけた。これが全滅。



 思うに、もっと直接的なそのものずばりの笑いで勝負すべきだったんだなぁ。芝居の幕開けは難しいんだ、お客さん暖まっていないから。くすくすなんかじゃなくて、ワッハッハの荒技、大技で入れば良かったってことだ。例えば、3爺のゴロゴロ体操やオタ芸ダンスをのっけにもってくるとか。喜劇は第一球に決め球で全力投球!よおーくわかった!







 それにしても、どこか可笑しい、なんか笑っちゃう、って笑い、どうしてダメなんだろう?ヤクザが卵かけごはん嫌いだ!って叫ぶギャグも不発だった。僕はかなり面白いと思うんだけど。他にもすべったところは多々あって、どれもこの微妙なおかしみの部分だったように思う。それに対して、大受けだったのは、かなりベタな部分だったかな。ヤクザが丁寧な言葉に苦労するところとか、見合いをサイコロ賭博の壷振りで開始するところとか、借金申し込みにきた男が、担保に母親を差しだそうとするところなんか。見合いの男が厄歳の厄、厄落としの厄、厄勝さんだったり、ってかなり強引だよね。さらに、仁義切ってみたりって、どう考えてもやりすぎ!って思いつつも突っ走ってしまったところが受けた。

 プログラムにも書いたんだけど、馬鹿げた話し、あり得ない話し、アホな話しを書いたっていう後ろめたさを感じつつの本公演だった。あんまりにもお馬鹿な設定で、バカにすんな!ふざけるな!って叱られるんじゃないか。怒らぬまでもしらけるんじゃないかと不安だった。だって、借金取りのヤクザが女優の付き人になって下手な芝居に付き合ったり、男1人に女5人の見合いの司会をヤクザ言葉で仕切ったり、いやいや男1人に女5人の見合いからしてあり得ない、こりゃあんまりだ。

 ところが、それが受けた。大いに受けた。バカ受けした。



 そうか!これってありなんだ!リアルなんてこだわることないんだ。すっ飛んだストーリー、笑える設定、突拍子もないキャラクター、思いがけないギャグ、ここがツボなんだ、川西のお客さんの、菜の花座のお得意さんのここがバカ受けの。そうか、そうなのか、それでいいなら気が楽だ。喜劇や笑劇書いてても、いっつもどこかで不自然じゃないか?とか、そんなん無理!って言われないか?って自己規制かけてた。これ、無駄な足かせだったんだ。だったら任せてよ!思い切ってぶっとんじゃうから。コントのりで書いてしまうから。これは大きな収穫だな、作者としては。

 でも、今回すべったくすっと笑いやニヤッと笑いも大切にしていたきたいなぁ。お客さんと笑いのセンスがずれてるっとことなんだろうけど、僕としちゃぁ、自分を信じたいんだよ。とんでも笑いも嫌いじゃないけど、せりふや演技でじんわり笑いを取るってところはどこまでも狙っていきたい。ただ、微妙な笑いについては、役者の演技って言うより個性が大きく物言うようにも感じる。そこらへんどうやって育てて行ったらいいのか、これも菜の花座の課題の一つってことだ。



 
 
 
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公演前日、暴風雪のゲネ

2015-01-19 10:13:50 | 演劇
 公演前日、大雪、どころか暴風雪!夕食の買い出しに外にでたら、車埋もれてる!必死で雪払い落として近くのスーパーへ。うへーっ!前見えねぇぇ!完全にびびった。どうする、ゲネ中止するか?中抜きでやって照明、音響、場転のチェックだけ済ませるか?照明を頼んだHさんも来ない。そうだろ、豪雪僻地小国からだもの。

 ところが、外の様子を見ていない役者たちはゲネに向かって気合い十分。メイクも済ませ、衣装も着けて開始時刻を待っている。こ、これは、やるしかない。まともに通したのってわずか1回だけ、ここで仕上げておかなきゃ、明日の失敗は目に見えてる。でも、怖いなぁ!これから2時間半、土曜の深夜、家までたどり着けるか?自宅に着いたとしても、車庫に車いれるのに30分は除雪しなくちゃなんない、うーん、不安。

 どうやら到着したHさん、今度は家から緊急電、都会に出ている息子さんが入院したって連絡が入った。役者の1人も身内が危篤状態、おいおいおい、できんのか?本当に?役者のやる気そぐわけにゃいかんし、帰宅不可能の時のこと考えて、寝袋持参で駆けつけてくれたHさんの意欲と責任感にも打たれて、よしゃここはいっちょ、腹括って最後まで本番同然にゲネやるしかない。

 そんなこっちの動揺なんか知ったこっちゃない、始めたゲネはこれまでの稽古から一転、熱気あふれる舞台になった。どうして?なんで?こうなるの?今朝までの右往左往の支離滅裂、なんだったの?こんだけできるならもっと早く開眼してよ!終了後、舞台監督もまったく同様の驚きを口にした。やり終えた役者たちも一様に満足の表情、これなら明日はそこそこの舞台に仕上がるだろう。

 2時間半のゲネを終え、出したダメだしはただ一つ。ともかく声を大きく!さぁ、後はさっさと着替えして帰ろう。何はともあれ無事に帰宅してもらわなくっちゃ。その他細々としただめ出しは明日のことだ。

 外に出る。雪はややおさまっていたものの、吹き降りがひどい。横殴りの暴風に雪が荒れ狂っている。ヤバヤバヤバ!前見えないよ。視界はわずか数メートル。ともかく帰ろう。ゆっくりでもいいからたどり着こう。帰宅の道筋は、10年ほど前、空前の地吹雪で車に閉じこめられた人が死んだっていう曰く因縁付きの道路だ。

 町を出外れると、田んぼの中の吹きっさらし。見えない!ライトに浮かぶのは舞い狂う雪。風下側の道路には早くも吹きだまりが数メートルおきにできて道路の中央までせり出している。完全に一車線、対向車とすれ違うこともできない。吹きだまりにつっこんだら、出るに出られず、車放棄して救いを求めるしかない。もう10時過ぎだから、レッカーを呼ぶなんてできないし。

 風上側の雪の壁をそろそろとなぞるようにして走る。強風が雪を舞い上げれば躊躇することなく止まる。以前、見込みで動かして吹きだまりにつっひんだ苦い経験が頭をよぎる。視界ゼロなら、止まる!後ろがつかえようがどうしようが、って、後ろからも前からも車なんて来やしない。そりゃそうだ、土曜の夜中でこの豪雪だもの。たまに風がぱたりと止まり、道路脇の電柱列がかすかに見える。だ、大丈夫だ。車まっすぐ向かってる。数メートル進んでは止まり、ゆっくり発信しては風を待ち、ここらで吹き込められたら、民家まではかなり遠い。携帯持ってたって救助を助ける相手はいない。万が一なら警察だろうけど。

 のろのろと匍匐前進すること30分、おお!なんと電柱さえ立ってないじゃないか!行く先を確認する手段はなにもなし。そろそろ十字路の信号灯が見えるはずなのに、見えない。ま、まさか、異次元に踏み込んでしまった!なんてことじゃないよな。このまま永遠にこの真っ白な凶暴のさなかを彷徨い続けるんじゃ?まったく距離感が狂ってしまっている。それぞれこの吹雪の中を家路をたどっている団員たちのことも心配になる。Hさんはどこかで寝袋か?車ごと埋まって凍死だろ、そんなことしたら。

 あそこまで行けば、風は弱まるはず、あの先は普段吹いたりしないから。淡い期待はことごとく裏切られ、どこまでもいつまでも続く猛吹雪。この調子じゃ高畠に出てもダメなのか?

 かろうじてたどり着いた洲島の橋を渡って高畠に入った。なんと!そこからは別世界!はるか彼方まで道が続くの見える。しかも積雪も少ない。吹きだまりは同じく出来ていたから数時間前には吹き荒れていたんだろう。でも、今は静かな雪の夜道。なんなんだ?川西は!呪われた魔境なのか!どっと熱い安堵の思いがこみ上げてくる。生き延びた!大げさ、いやいや、本当それに近かった。

 自宅にたどり着き、若手の何人かに連絡を取る。どうやら全員無事に帰り着いたようで一安心。おっと、家から帰ってくるなって言われて友人宅に泊まったのもいたけど、ともかく、「豪雪の中、稽古を強行!団員凍死!」なんて記事にならなくて良かった。冗談ばっか、って思う?違うって、真剣に心配してたんだって。

 なんだこりゃ、ゲネの報告書くつもりが暴風雪の中の行軍記になっちまった。そんだけ危うかったってことだよ。これ乗り切ったから、明日はもう絶対上手く行く。でも、この雪、明日は止むのか?





 
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