ブラシーボ効果~その正と負の効果 2020・11・10
********************************************************************
前述した長堀医師はブラシーボ効果は医学界で
“科学的研究の邪魔者扱い”をされてきていたと言う(*1)
ブラーシボ効果とは、小麦粉を丸めた丸薬でも、
信頼している医者からよく効く薬だと渡されて
信じて飲めば、本当に効いたように効果が
上がることを言う、いわゆる好転症状現象だ。
なぜ科学的研究ではあまり見向きされないかといえば、
二つの理由があげられる:
①個人差がある、
②検証実験での結果測定が難しいという理由から客観的な
評価がなかなか下せない
さらに、ブラシーボ効果を期待するより、有効性ある
薬剤の開発で病状を好転させた方が科学的にも
理に適っているというところからあまり、現場で
利用されることがないのだろう。
が、私どもの協会のように、自然治癒力を考えると、
医学的効果の強い薬はその効果に比例して
ほかの臓器への負担をかけるから、副作用が出る
確率が高いという理由で、一概に”有効性のある
薬剤の開発を進める方が良い”という考え方に
賛成ができかねない。
むしろ、ブラシーボ効果を利用して、病が癒える
のなら、心の及ぼす体への好影響として、
自然の理で身体に負担をかけずに、免疫力や
新陳代謝などを促せればこれにこしたことはない
と思う。
ところが、昨今、このブラシーボ効果の見直しが
世界的に注目を浴びてきているらしい。
米国保健社会福祉省では1999年度のレポートの
中で、次のように報告されている。(*2)
“重度のうつ病患者に対し、抗鬱剤を与えられた
グループではほぼ半数が回復したのに対して
(ブラシーボ効果を期待した)偽薬を与えられた
グループでは、なんと投薬を受けたグループを上回り、
約3分の2が回復した”(引用終わり)
ブラシーボ効果を得るためには、偽薬を投与する
必要性があるかといえばそうでもない。
たとえば、“痛いの痛いの飛んで行け!”と
転んだあとに、優しく母親にその箇所をそんな
他愛のない言葉とともにさすられると、何となく、
痛みが軽くなった気がしたものだ。
これもまた、一種のブラシーボ効果かもしれない。
次の研究報告は世界的に著名な医学雑誌に
とりあげられて、ブラシーボ効果はこんな意外なところ
にも見られるということで話題になったことがある。(*3)
それは オーストラリアの整形外科医 モズレー博士
の研究班の論文である。
その内容は、疼痛(とうつう)などの痛みを伴う、
変形性ひざ関節の患者に対して行ったもので、
三つのグループに分けた患者たちにそれぞれ異なる
療法を 施して、手術のどの部分が痛みを和らげるか
を実証したものだった。
①初めのグループには、痛んだひざの軟骨の除去、
②2番目のグループには洗浄して炎症物質の除去、
③3番目のグループには皮膚切開と洗浄のみ、
を行った。
③のグループは特に手術をしていない。
皮膚切開をして洗浄しただけで、その原因となる
炎症物質も、痛んでいる軟骨の除去手術も
していない。
ところが、その結果を見ると、3つのグループとも、
同等の結果が得られたという。
これは、ブラシーボ効果というのは、薬の投与だけでは
なく、手術をしなくても、痛みが治まるという驚くべき
結果を証明した。
ということは、’手術の有効性はどこにあるのか?’と
いう根本的な質問も外科医の間で上がったに違いない。
ブラシーボ効果は、正の効果だけではない。
なぜなら、’想念’、’人の思い’や ’心の持ちよう’が健康
に大きく作用するわけで、負の思いが強ければ、その
結果はむしろマイナスとなるからだ。
つまり、正の効果もあれば、負の効果もあるといえよう。
例えば、1996年に報告されたレポートでは負のブラシーボ
が明らかにされている。(*4)
それはレベッカ・フェルカー医師達が ’自分が心臓病
にかかりやすい’ と信じている女性と同様の
リスク因子を持ちながら’心臓病にかかりやすくはない’
という想念を持つ女性と比較した研究である。
それによると、’心臓病にかかりやすい体質だ’と
否定的想念を持っている前者は、死亡率が
そうでない後者と比べ、4倍も高いという結果になった。
二人ともその危険因子は同等に持っていたという
前提の中で出たその結果は、否定的な信念は、
肯定的な信念と同様、同じように体へ影響を与える
ということが証明された。
’自分は~に弱い’、’~病にかかりやすい’、
’~病で代々先祖は亡くなっているので、自分もそうなる”
等の恐怖をともなう想念は負のブラシーボ効果を招きやすい。
’そう思うな’と言っても、そう感じてしまうのだから、
どうしようもない、とおっしゃる前に、
何故、そう感じてしまうかを考えてみると、
その対処法が見つかるかもしれない。
恐怖を取り除くにはその元を除去すればよい。
その元とは何か?
それは”潜在意識”の中にある。
潜在意識とは、これまで生きてきたときに感じた
感情が、知らず知らずのうちに、心の奥底に、
厚い海底地層のように重なって、ここから発する
想念は‘実は、90%’占めていると言う。
では、どのようにして、この潜在意識の中の
”マイナス感情”を取り除けばよいのか?・・・
次回は、このあたりからお話しを進めさせていただきたい。
***************************
(*1)“見えない世界の科学が医療を変える” 2013年 星雲社
(*2) “U.S. Department of Health and Human Service 1999”
(*3) “The New England Journal of Medicine (2002 Moseley et al)
(*4) “Journal of the American Medical Association 1996 ”