アレルギー状態を作る背景 2020・6/29
**********************************************************************************
前書き~アートマセラピーを開始して、最も比率的に多かったのが
喘息の方たちだった。
何年間も発作が起こるので横になれず、夜間座って寝ていらした方
もいた。
今では、お元気になられ、殆どの方たちは薬が不要になったり、
ごく少量の錠剤をとられたり、改善がみられた。
というのも、喘息はある意味、とても、心理的背景、心情的要因が
左右する病の一つだからだろう。
先回からの続きとして、心療内科の池見博士の臨床的実例をあげて、
その”病は気から”の意味を考えてみたい。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
④ 喘息
喘息(ぜんそく)は一般に気管支ぜんそくをさしている。
症状 発作的に喉がゼーゼー、ヒューヒューという音とともに息苦しく
なり、寝ている姿勢が取れないほどひどい場合、前かがみであえぐ
状態になる。
何らかの理由で気管支が過敏になっていて、ちょっとした刺激にも気管支
が反応すると考られる。
そのきっかけは、家のほこりや花粉、カビの胞子などへのアレルギー反応。
他には気管支炎や風邪で起きる気管の炎症、亜硫酸ガスや冷たい空気などの
科学的、物理的刺激、環境条件の変化や疲労、信頼抵抗力の低下など
さまざまである。
《アレルギー反応について ≫
抗原(アレルギーを引き起こす物質)と抗体(体の中のそれに対抗する物質)
との闘いにより、蕁麻疹(じんましん)などの症状が起きること。
その闘いの中、生体にとって有害な化学物質が大量に体内にできてくると、
それを体外に排出しようとして、咳の発作、皮膚上の発疹、吐き気、下痢、
などの反応が出てくる。
その闘い時において、気管支を中心に行われるので、喘息の発作になり、
皮膚を中心に起きれば蕁麻疹になると考えられている。
アレルギー反応は言い換えれば、自然治癒力で生体を守るための経過
ともいえる。
《原因》
血液中の免疫グロプリンEの濃度の測定によると、アレルギーを起こし
やすい人には正常人の平均値より高濃度の免疫グロプリンEが検出され、
原因の一因と考えられている。
つまり、抗体ができやすいため、それが細胞の表面について、その抗体
の対象となる抗原が入ってくると、結びつき、抗原抗体反応がおこり、
その結果としてその細胞からヒスタミンなどのアレルギー症状が
引き起こる化学物質が生成される。
それが、気管支に働きかけると筋肉が収縮し、粘液の分泌が増えるため、
気管支の内腔がせまくなり、呼吸困難が起きるという仕組みになっている。
《病は気から~の観点から》
池見博士の仲間である、中川俊二講師によれば、アレルギー反応の結果
で起きる同じ症状が心理的ストレスからおこる可能性があるという
検証が行われた。
つまり、喘息発作はアレルギー素質を持っているからだけではなく、
ストレスの結果で引き起こされるということだ。
池見博士は面白い実例を(少々古い話になるが)を挙げているので
ご紹介する。
“19世紀のフランスの医師トルソーは‘喘息’もちで 馬小屋に出かける
と、よく発作を起こしていました。
彼はかねてから、自分が雇っている御者が馬の絵さを横流ししている
のではないかと疑っていたのですが、ある日、馬小屋に出かけたとき、
それが本当であったことを目撃して激しい怒りに襲われました。
しかし、その怒りを御者にぶつけないで抑えてしまったのです。
しばらくすると、その怒りは収まったのですが、いつになく激しい咳と
呼吸困難の発作がおこってきました。
そこで彼はどうしてそんな激しい発作が起こったかを考えて、次の事
にハタと思い当たりました。
すなわちいつもと違う点は、御者に対して激しい怒りを覚えながら、
それを押さえこんでしまったと言うことです。“(引用終)
つまり、アレルギー反応によっておこる発作でも心理的ストレスの
影響を受けてよりひどい症状を起こすようになりうることを示唆する
ものといえる、~と池見博士は述べている。
しかし、形而上的な病の原因からみたら、アレルギー反応というのは、
おおむね、二つの理由からもたらされると考えられている。
一つ目は、この例のように、激しい嫌悪や怒りの感情を抑え込むこと、
二つ目は、完全主義から自分自身を許せないという自分への反感の高まり
や 何かに対して激しい排斥の念を持ち、それを否定する自分がいる
場合、などだ。
共通して言えることは、おおむね、自分の強いマイナス感情を“悪いもの”
と認め、それを押さえこもうとする反射的反応が、アレルギー反応といえる。
加えて池見博士の所見によれば、喘息は“一人っ子や末っ子で母親への依存心
の強い人に起こりやすい”と述べている。
《実際の患者の例》
池見博士が受け持った実際の患者で、このような心理面の改善から喘息発作の
軽減につながった例がいくつかあげられている。
第一例)
34歳男性、5歳に肺炎を患い喘息発作が出始める。
大人になるに従い発作は収まっていたが、32歳に風邪をひいたのが
きっかけで再び発作が起こり始め、なかなかおさまらなかった。
肺機能は正常。気管支炎との合併症はなし。アレルゲンの皮内テストでは、
家のほこり、ブタクサの花粉に陽性反応。
血液中のグロプリンEの濃度は低い。
(心理的要因因子)
*一人っ子 父親は生まれる前に病死、母親の手で育てられた
*幼稚園に行き始めてから発病
*中学に入学後、新聞配達しながら運動部にはいり、体を鍛えるように
なってから発作がみられなくなった
*同時にそのころから母親に対する気持ちに変化がみられた。
*高校時代は発作はなかったが対人恐怖症に悩んでいた
(治療法)
腹式呼吸で自律訓練法/
人間関係の感情のもつれや社会適応上で問題点が何があり、その解決法
を探るため心理療法を併用
(効果)
しまいこんでいた本人の気持ちが医師にオープンにされ、自律訓練法
も上達したため、くつろぎが得られるようになり、発作は軽くなった。
さらに、自分の発作がどんな状況で、どんな気持ちになっている
ときに起こりやすいか、そのときはどう対処したらいいかということを
客観的に見ることができ、それを実行にうつしたところ、全く、発作が
おこらならない状態になった。
(焦点)
ここで池見博士が分析した、この患者の喘息発作の背景の心因は以下
のようなことであった。
* 発作がよく起こっていた幼稚園時代から小学校時代にかけては、
彼の気持ちをよく聞いてくれず、自分の考えだけで押さえつけようとする
母親に対して、不満や怒りを覚えながら、一方では優しい母親像を求め、
愛情を追い求め続けるという矛盾した精神状況下で、彼自身の中に
葛藤が生まれた。
*しかし、中学生になり、女手一つで自分を育ててくれている母親に
優しい愛情を求める方が無理だと気がつくと、不満が薄れ、同時に発作が
起こらなくなった。
*発作が再び起こり始めた32歳の時は、会社の中でかつて、彼が母親に
いだいていたような期待劇が起きていた。
つまり、転勤が決まったものの、その勤務先は仕事への意欲を失っている
社員が多く、その雰囲気を改善してほしいと上司に期待する一方、何も
対応しようとしない上司に苛立ちを覚える、という日々の連続だった。
この感情がかつて自分が中学生になるまで、母親に抱いていた葛藤と
同質なものであることに気がつくことで、彼は自分なりに新しい職場に
順応していこうという前向きな考え方に変った。
第二例は次回に続く・・・・・・・・・・・・・・・・・
*引用箇所: ”ストレス健康法”
池見酉次郎著 昭和50年発行 潮文社