風邪は風呂に入って治すもの 2015・10・30
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早く風邪を治そうとして、熱を下げようとしたり、
咳を止めようとしたり、というような中断方法
ばかり講じていると、風邪を治そうとしながら、
体がこわばり、治りずらくなる。
私の友人の子供は、しょっちゅう風邪を引いていたが、
引くたびに、親として、友人が即効薬を飲ませるのが常で、
症状が止まっても、すぐ、また引き直すことが続いていた。
本当のところ、風邪が治っているのではなく、症状を
止めただけにすぎないから、風邪の本来の役割、体を整えて
正常な成長発育に適した体をつくる、という生体の自然現象を
十分果たせていないからだろうと思った。
整体の権威者 野口晴哉先生は
“天然の体をできるだけ、天然に保たなくてはならない。
そうなると、いろいろな治療行為よりは、
却って、風邪を上手にひき、上手に経過すると
いうことのほうが、意義がある。”
と述べ、最近の風邪に対する考え方に警鐘を鳴らしている。
“最近の病気に対する考え方は、病気の怖い事だけを
考えて、病気でさえあれば、なんでも治してしまわなくては
ならない。
しかも、早く直してしまわなければならないと考えられ、
人間が生きて行くうえでの体全体の動き、
あるいは体の自然というものを無視している。
仕事のために早く直す、何々をするために急いで
下痢を止めるというようなことばかりやっているので
体の自然のバランスというものが、だんだん失われ、
風邪をスムーズに経過しにくい人が多くなってきました。”
と言う。
風邪をひくということは、生体にとって”大掃除”的な 大切な
役目がある。
自然生命体である本来の私たちの生命力を考えたとき、
風邪を上手にひくことによって、“更に体の柔軟性をまし、
健康体として整える”ことができるからだ。
目的があることがわかると、風邪にかかったといって、むやみに
恐れたり、厄介がったりする必要もないだろう。
だから、野口氏も、
“早く治すというのが、よいのではない。
遅く治るというのが、善いのでもない。
その体にとって、自然の経過を通ることが望ましい。
できれば、早く経過できるような敏感な体の状態を
つことが望ましいのであって、体の弾力性から
人間の体を考えて行くと、風邪は弾力性を
回復させる機会になっている。”
と述べる。
弾力性が無い体は、いわゆる、体の局所に、“凝った”状態
を引き起こし、血の巡りやリンパの状況が悪くなるだけで
なく、体全体の気の流れにアンバランスを生じる。
”あんなに元気な人が”とか、”毎年がん検診を受けていたのに”
という言葉が聞かれるうらに、昨日までピンピンしていたのに、
急に脳溢血や動脈瘤でバタンと倒れた例が身の回りに
少なくないはずだ。
或いは、不意に重大な病気が発見されたりして 本人も、
回りの人も、ショックを隠し切れないこともある。
それは 偶然ではない。
すべて偶然のように見えているが、実際は目に見えない体
の生体機能の衰え、しかも、風邪のような自然現象を押さえつけて
体の自然的調節を妨げてきたからだともいえるだろう。
地球が大地の中の不必要なエネルギーを、地震や火山噴火で
押し出すように、体も大自然の智慧が具わっている。
それを私たちは自然治癒力と呼んでいるが、その力の
発動に協力しながら、余病を発病しないよう注意を施しながら、
上手な経過を計ることが必要だと思う。
前書きが長くなって恐縮だが、今日の話題は“風邪と風呂の
上手な入り方”で、野口氏は“風邪は風呂に入って治すものと
私自身そう思って、何十年間それをやっています。”
と述べている。(*1)
風邪は、風呂の入り方次第で上手に風邪を治すことが
できるからというのが野口氏の持論だ。
そもそも、お風呂に入るということは体の洗浄だけではない。
体を42度程度の湯温により、刺激することで、体の機能の働きを
高揚させ、毒素も排泄させることができるわけだ。
入浴するか否かは“自分で考えて、入りたければ入り、
いやだったら入らなければよい”というのが、適当な答えとも思うが、
昨今は、そうした自分の生命体である、自然体が話しかける
注意を即している感覚すらわからなくなっている人も
増えているのは事実のようだ。
天気予報で明日はこうこうの温度だから、上着が必要だとか、
必要でないとか注意を促しているのも、そのことの裏返しの
気がする。
そんなことは自分の体に聞けば、他人が暑いと思っても
その時の、体調如何で、寒く感じるときもあるし、丁度よいと感じる
時もある。
私みたいにインドで長くいると、いまどきの20度前後は爽快で
夏用の長そで用シャツ一枚で十分だ。人それぞれ、体感が違うので
マニュアル化して、何を着たらよいかと公共放送で流すのも、違和感
を感じる昨今だ。
風邪時に、入浴するか否か? それを、入浴を”自分の感覚で”と
言っても 決めかねない人達も多いのかもしれない。
野口氏は
“入浴の効果は、湯の温度で皮膚を刺激して体の働きを高め、
体の内部の運動を多くする。温まると汗がでるということ
である。
そういう面から言えば、風邪をひいたときに、大いに風呂に
入らねばならない。”と意見する。
それでは具体的にどの位の温度でどのようにして入ったら
効果的なのだろう?
“使い方によっては、悪くなるものだけに、風呂の使い方には
十分注意しなければならない”としたうえで、
風呂に入ったらすぐ暖かい布団に入って休めるように
寝る前に入る風呂は避けるべきだとしている。
その理由は、体というのは、“温まっただけ冷える”ので、
起きていれば、その冷えた分に対応し、調整することが
できるのだが、寝てしまっていれば調整がつかないからだという。
一方、寝際(ねぎわ)に入るのが効果的な場合は、
“きわめて疲労した体を弛ませ、休める”ための場合に限られる。
風邪の場合は 自分の適温に沸かした風呂より、5分から
一度ぐらい熱い湯に入ること。
そして、長くつからず、ぱっと出てくる。野口氏はこう綴る。
“ぱっと熱い風呂から上がって、赤くならない片足だけ、
もう一回突っ込む。
もっと、温度が自由にできるのなら、一旦風呂から出て、
一度上げた湯に、もう一回入るというのが良い方法です。
さらに良いのは、一旦、風呂釜から出ないで、風呂の中
にたって、体を良く拭いていれば、腰から下は足湯を
していることになる。
その場合は赤くならない方を確かめて、赤くならない方
だけ、入れて立っていれば、もっと良いのですが、
まあ、両足をいれて置いても構いません。
たったままよく拭いて、それから又、入る。そして出てくる。
直ぐに出るという入り方は、風邪を治すのには都合が良い。
出てきて、水を飲んでおけば申し分なし。“と述べている。
‘体が赤くなる’というのは、熱い湯に入ったとき、体の
皮膚温度が上昇して血流のため、赤くなることを指しているが、
まだ、深い意味がある。次回に話題を譲りたい。
*1) 前回と同様出版書 p・87
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