夫宛ての「世界の帆船模型展」案内のハガキをポストに見つけた私が、まず心を躍らせました。塩野七生氏の本で必ず取り上げられた帆船です。ヴェネチアのガレー船に対してジェノバの大型帆船は挿絵ではよく見ましたが、この模型がまじかに見られるとなると胸が躍ります。さっそく出かけました。 福岡市美術館、4月4日まで。
大砲、砲門、ガラス窓のついた舷窓、ロープ、ボートのオール、鋲・・・など細かいキットが本物のように備えてあります。○○分の1という、小さくても本物そっくりというところに見る者の夢が膨らみます。組み立てるときは、外板を水に漬けて曲げ、乾かし、一日に一枚ぐらいの速度で張り合わせてゆくという根気と、手仕事の細かさに心から敬意を表しました。
「艫の飾りの豪華さはさながら動く宮殿のようですね。」といったら、製作者の方が説明されたことには、「船底の曲がり具合にちょうどぴったり合った木を探し、かき集めて、相当な時間とお金をかけてつくったそうです。まさに宮殿です。」船を作るための木を切りまくったので、イギリスは一事は山が裸同然になったとも。
面白いのは、左舷に突き出たかわいい樽に「???」。説明を聞くと、それはトイレ。実物は直径約80センチの樽で、一人がしゃがむのにちょうどいいサイズ。底に長方形の穴があり、そこから海に・・・という具合でまさに「海洗トイレ?」です。
左上は17世紀、ブランデンブルグ「ベルリン」。 右はオランダ、17世紀「フリースランド」。 下段左は骨組みの造船段階の模型。その右の赤い十字の帆船は、コロンブスが初めて大西洋横断航海をした「サンタマリア」です。眺めている少年の顔がいいです。きっと夢がいっぱいだったことでしょう。
左は新日本丸です。現在も商船大学などの練習船として活躍中。旧日本丸は横浜の港に保存されており、中に入って見ると、冒険でもするかのようにわくわくして見たのを覚えています。
2月にアメリカで最先端技術のロケットを見てきたばかりだから、この人の温もりが感じられる帆船がとても新鮮に見えました。宇宙へ飛び出すことが人類の進歩のように思われますが、この布を張った船が世界を駆け巡る能力をもっていた時代があったからこそ、今のロケットにまで行き着いたのです。人類の歩みは面白いし、興味が尽きません。説明もついて、とても楽しい展覧会でした。