ゆっくり時間がとれるようになったら、目的地を決めないで鈍行列車や路線バスに乗り、気が向いたところで降りる・・・そんな旅が夢ですが、なかなか現実は難しいものです。
「ゆったり路線バスの旅」と書けばNHKの番組みたいですが、ちょっとそれに似ていたのが今回の南阿蘇の旅でした。
熊本バスセンターから限られた本数しか運行していない高森行に乗り込むと、進むにつれだんだん乗客数が減って最後は3名に。ここは車が必需品なのです。
阿蘇の外輪山の南に位置する南阿蘇はのんびりととても豊かな感じがする土地柄で、そこに阿蘇高原クラブがあるのです。会社の施設ですが、OBでも宿泊がOKなのです。
まず、玄関へのアプローチのレンギョウの生垣に、はっと目を見張りました。これでいっぺんにここが気に入りました。
バブルの終わりの頃にできたというだけあって、シャンデリアも家具も輸入品。すぐに非日常の世界に入っていきました。1200mボーリングして71℃の温泉を確保しているそうです。
遮るものがない食堂からの眺めも、南阿蘇を独り占めにしたようなリッチな気分に浸れます。
熊本・大分の旅では馬刺しが出るのがふつうですが、ここでは出てこなくてホッとしました。
夕食の後は、静まり返ったロビーで新聞を読んで過ごしました。ちょうど福島原発の冷却設備の電源が故障ということで、とても気になっていました。
ローシーズンということもあって、コーヒーのサービスはストップしていました。ここが普通の商業施設と違うところです。
翌朝、大きなガラス窓の外は小雨模様。遠くに見える阿蘇五岳もうっすらと霞んでしまいました。
有名な「一心行の桜」を見ようとタクシーに乗りましたが、ドライバーさんが言うにはまだつぼみが硬いということです。桜の枝だけ見ても意味がない・・・ということで取りやめました。
小雨では早い決断が必要です。タクシーの中で予定変更、南阿蘇鉄道の無人の「長陽駅」へ。ここからまず立野駅に向かいます。
プラットホームでは、自転車に乗ってきた親子が備え付けの積み木などで遊んでいるのが何とも微笑ましい光景です。駅のプラットホームは「乗る」だけのところでなく、遊び場でもあるのです。南阿蘇はおおらかです。
豊肥線の立野駅と大津駅で2回乗り継ぎます。スムーズな乗り継ぎで、意外に早く1時間ほどで熊本に着きました。
列車の本数は少ないけど、乗客率が「高い」のにびっくり。車内の雰囲気がとても和やかなのが好印象でした。
1車両だけですが、なぜか愉しい気分にさせてくれるディーゼルカーです。単線と線路わきの桜。日本の原風景がそこにありました。
熊本に着くと、周遊バス「しろめぐりん」に乗り、もう一度熊本城に向かいました。
城内にある「熊本県立美術館」に行くと、ルノワール「胸に花を飾る少女」、ブラマンク「湖畔」のキャプションに、「ラインハルトコレクションからの購入」と書いてあり、昨秋に訪れたスイスのラインハルトの美術館を懐かしく思い出しました。