今年も近くの大学の春の講座「影像にみるヨーロッパ文化」で、ドイツ語学科とフランス語学科の映画が始まりました。毎回二人で参加しています。

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映画の時代背景、原作、監督、キャストの解説があり、上映後に感想を述べ合います。ちょっとアカデミックな香りが人気で、夜間にもかかわらず出席者が多いのです。それに広大なキャンパスを若者と一緒に闊歩する痛快さも加わります。
夕食はいつも学食です。
先月の独語学科の『ブルーム・オブ・イェスタディ』。現代のドイツを扱いながらもやっぱりナチスが絡みます。
収容所で犠牲者となったユダヤ人の孫娘とナチスの指導者を祖父に持つ男性、つまりナチス時代の孫たちの心の葛藤と苦悩を描いたものです。
ドイツには世代を越えて罪と罰の意識が受け継がれ、それがしっかり根付いているのをいつも感じます。
以前のテレビ番組で、ドイツの高校生や韓国の若者たちが、日本の社会科教育、特に歴史をきちんと学んでいないと手厳しく批判していました。そうなんですよね。
今回の映画はドイツ製作でなく、ホロコーストを扱いながらも米英合作の『否定と肯定』です。これは実話の映画化です。
ユダヤ人歴史学者リップシュタットが「ホロコーストは存在しなかった」と主張する歴史家アーヴィングを批判したことで、名誉毀損で提訴され、英国の法廷で半年かけて闘うことになりました。
イギリスの司法制度は提訴された側に立証責任があるというもので、名誉毀損を覆すには強力な根拠が必要でした。
ガス室の廃墟はあっても、実際にガス室に入れられた人達の写真はなく証拠は提出できません。
アーヴィングは著作は資料に基づいていると主張しますが、弁護団は膨大な資料を逐一読み解いて、資料に忠実に書かれていない部分を追求していきます。アーヴィングは自分の考えに沿うように少しずつ語句を変えていたのです。
弁護団は解釈の違いではすまされないことを突き詰めていき、最後は勝利を獲得します。
リップシュタットの会話の中に、裁判費用が300万ポンドつまり4億円かかり寄付を募って集めたと言っていました。びっくりです。
夫の感想はバックに金持ちのユダヤ人がいるから莫大な寄付が集まった、勝訴まで持っていけた・・・と。
いまだにかつらをかぶり赤い服を身につけた中世風の弁護士、イギリスの裁判制度の珍しさ、活発な弁論もなかなか考えさせられる映画でした。文字で人の心を扇動する・・・、今晩のテレビで池上さんがフェイクニュースについて詳しく説明していました。
次回の『三文オペラ』は1931年制作のもので白黒映画。白黒映画のシャープさが好きで楽しみです。
庭に小さなコスモスが咲きました。まだ梅雨入り宣言さえも聞かないのですが。

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