新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

遠藤周作『男の一生』上・下巻

2020年04月19日 | 本・新聞小説
コロナ禍に会わなかったら、多分書棚から取り出すことはなかったであろう本です。30ページほど読み進むとぐいぐい引き込まれました。

上巻。時代は信長の桶狭間のころ。木曽川を拠り所に成長する地侍・前野将右衛門、土豪・蜂須賀小六が木下藤吉郎と出会い、その能力と人柄に惹かれて秀吉の部下になり、一族の住む地方を守ります。
秀吉も同じ目線で農民を見て、農民の生活を知る武将でした。同じ心意気で同じ方向を見ていた3人で、心暖まる展開です。

この本の資料のひとつになったが、伊勢湾台風で壊れた土蔵から出てきた古文書です。子孫の吉田氏が全5巻の『武功夜話』にまとめられたそうです。
遠藤氏は、歴史のトップに立つ人物にではなく、彼らを支えた武将の心と目を通してその時代を見つめており、人物相関図と歴史の流れがとてもつかみやすいのです。

下巻では、お市から茶々に至る女性の戦国の世の生きざまや利休の死に至る過程が分かりやすく書かれていました。利休の死にも納得できました。
何よりも秀吉の心変わりの過程で、信長同様の残虐な処罰を命じるところなど権力を持った者の危うさに身が縮みます。
将右衛門は利休やキリシタン大名やパードレとの交流の中で自分の心を見つめ、生き方を深く考えます。
しかし歴史の歯車は思わぬ方向に回り始め、律儀な将右衛門はそれを甘んじて受けます。そして関白・秀次の処罰に伴い、親子共に切腹に至りました。

下巻で心に残ったのは秀吉と利休の心が徐々に離れていく場面です。遠藤氏らしく、利休の心の襞が細かく描き出されています。

「麒麟が来る」にダブった場面を期待しましたが、光秀は出てきませんでした。それでも先週から佐々木蔵之介の秀吉が登場して、どんな秀吉像が描かれるのか楽しみです。

本のクリップタイプの栞に、シールがセットできる便利グッズが役に立ちます。



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