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iPS細胞の研究で知られる京都大学の山中先生がまたもやノーベル賞を逸した。
これは何かの陰謀か?
そう、きっと陰謀だ、と私は思ってる。

そもそもノーベル賞ほど政治性が強くキリスト教主義、白人主義主導の賞はない。
受賞者の国籍や人種を見れば明らかだ。

山中先生がノーベル賞を獲得するには、iPS細胞を使って画期的技術を開発した「欧米の科学者」の登場を待たなければならないのかも知れない。
それとも山中先生その人が日本国籍を捨てて米国籍か英国籍なんかを取得すれば授与されることになるだろう、と私は思う。

iPS細胞技術は画期的な科学技術。
しかも金になる木のバイオ技術だから、こんなきらめく最先端の名誉をアジアのイエロー日本人だけにくれてやることは、彼らのプライドが許さないのかもわからない。

ところで、iPS細胞技術が完成されると何がいいかというと、医療にいい。
その中でも最も大きなメリットは自分の細胞を使って臓器を製造して、そのまま自分に移植したりできるようになる、ということだ。
つまり心臓移植も、生体肝移植も、網膜移植も自分から派生した人体部品で手術を行うことができるようになる。
実はこれが画期的なことなのだ。
倫理に抵触せずに、自然な移植手術が可能になるからだ。

バイオ技術、医療技術が発達した今日、昔はお伽話かSF映画の話だったことが現実になっている。
例えば1977年作のSF映画「ドクター・モローの島」では、動物のDNAを改ざんし、人間化させたマッドサイエンティストとその博士の島に流れ着いた若い男の闘いが描かれている。
この現実離れした物語が違った形ではあるものの、すでに実用化されているということを、あまり世間の人は知ることがない。
どういう技術かというとネズミやその他動物に人間の胎児の細胞から採取したDNAを植えつけて、人間の生命パーツを動物の上で創り上げるという技術だ。

これは怖い。
正直、科学といってもやっていことと悪いことがあると思う。
胎児の細胞を利用したり、あるいは動物を虐待するような遺伝子操作は、明らかに従来の倫理に反している。
ところが「科学」の名のもとに、何をやっても構わないと思っている人たちがいるのもこれまた事実。
金儲けに奔走する姿はドクター・モローどころの話ではない。

人体臓器の非倫理的製造に始まり、臓器売買、代理出産、試験管ベイビー、クローン、などなど。

このように、この世の中はいったいどうなってしまんだ、と背筋が寒くなってくることがルポされているのがアンドリュー・キンブレル著福岡伸一訳「すばらしい人間部品産業」(講談社)だ。

この書籍には臓器売買から始まって代理出産その他数多くの実例が取り上げられている。
また、代理出産で生まれた子供の親権をめぐる子宮を提供した生みの親と精子を提供した親の側で演じられた法廷争議や人工的手段で生まれてきた子供の心の葛藤、手術で取り出された患者の臓器から高額の医薬品を生み出すと言うような医療産業に対する政府の判断などが取り上げられ、尋常ではないバイオ技術の世界が描かれている。
著者はこのような技術の今日的利用に反対の意見を有していて、それはそれである種のイデオロギーを感じさせるものがあるが、社会的、宗教的、歴史的、そして経済的な問題として、生命に対して何でもできるようになりつつあるテクノロジーに強い警鈴を鳴らしていることには、いたく賛同できる内容なのであった。

「人間部品産業」
書名だけを読んでいると、何かのファンタジーのような印象があるのだが、そういう産業が実際に存在してしまっていることに脅威を感じずにはいられない衝撃のノンフィクションだった。

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